2020年04月06日
封じ込めに傾いた世界のその先
ようやく専門家も口にするようになってきた。新型コロナウイルスの集団免疫の話だ。おそらく都市封鎖やロックダウン、日本での自粛など、封じ込め方策が招く経済の停滞、重く暗い空気がその背景にあるように映る。
集団免疫というのは、そのエリアの60~70%の人がウイルスに感染し、免疫をつくると感染が止まっていくというものだ。ひとりの感染者の周りに何人かの人がいる。そのなかの60~70%の人が免疫をもっていることになる。そうなると、感染は広まらない。ウイルスに寄り添う防止策だ。このブログでもお話ししてきた。
一長一短がある。封じ込め策は、免疫をもたせようとしないわけだから、第二波、第三波の感染拡大が起きやすい。経済の停滞という犠牲を払わなくてはならない。集団免疫は高齢者などの免疫弱者の犠牲が増える可能性がある。新型コロナウイルスは感染力が強いため、集団免疫には向かないという専門家もいる。
中国は封じ込めに走った。混乱していたのかもしれないが、中国の社会構造から考えれば、当然の帰結だった気がする。しかしイギリスやドイツ、オランダなどの国々は集団免疫の方策をとろうとした。しかし、新型コロナウイルスの感染力は強く、一気に感染が広まってしまう。医療体制がひっ迫する危惧のなかで、封じ込めに転じざるをえなかった。
集団免疫作戦は、医療施設とのバランスが難しい。感染者はゆっくり増えていくことが望ましい。そしてワクチンを待つ。ワクチンもまた集団免疫をつくる手段ともとれる。
世界の大勢は封じ込めである。その結果、国境は閉じ、人の行き来は制限されている。グローバル化に進んだ世界は、ウイルスによって梯子をはずされた感がある。人々の表情は暗い。耐えなくてはならない。ウイルスを避けるストレス。仕事がなくなる不安……。
日本は強いロックダウンをとっていない。自粛なのだが、そこには、周囲の動きに敏感な日本人特有の感性がある。週末は繁華街ではシャッターが目立ち、通りを歩く人も少ない。これが日本という国でもある。
世界は封じ込めに傾いてしまったから、もう後の祭りなのだが、集団免疫に本格的にとり組んでいれば、世界はもう少し明るかった気がする。行動制限はそれほど厳しくはないだろう。時間はかかるかもしれないが、収束までの道筋が見通せる。免疫をもった人が60~70%という目標値が設定できる。その前にワクチンが開発されるかもしれないが。感染者が増えていくことに、それほど不安を抱かずにすむ。感染者への差別も薄れていく気がする。社会はもう少し明るくなるように思うのだ。
それは国家の体制にもかかわる。封じ込めは、強い権力体制でなければ成功しないというコンセンサスが定着していくと、これまで欧米や日本が標榜してきた政治体制の足許が危うくなってきてしまう。
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリの論調が話題だという。世界の人々はいま、頼れる明るさを探しはじめている。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
集団免疫というのは、そのエリアの60~70%の人がウイルスに感染し、免疫をつくると感染が止まっていくというものだ。ひとりの感染者の周りに何人かの人がいる。そのなかの60~70%の人が免疫をもっていることになる。そうなると、感染は広まらない。ウイルスに寄り添う防止策だ。このブログでもお話ししてきた。
一長一短がある。封じ込め策は、免疫をもたせようとしないわけだから、第二波、第三波の感染拡大が起きやすい。経済の停滞という犠牲を払わなくてはならない。集団免疫は高齢者などの免疫弱者の犠牲が増える可能性がある。新型コロナウイルスは感染力が強いため、集団免疫には向かないという専門家もいる。
中国は封じ込めに走った。混乱していたのかもしれないが、中国の社会構造から考えれば、当然の帰結だった気がする。しかしイギリスやドイツ、オランダなどの国々は集団免疫の方策をとろうとした。しかし、新型コロナウイルスの感染力は強く、一気に感染が広まってしまう。医療体制がひっ迫する危惧のなかで、封じ込めに転じざるをえなかった。
集団免疫作戦は、医療施設とのバランスが難しい。感染者はゆっくり増えていくことが望ましい。そしてワクチンを待つ。ワクチンもまた集団免疫をつくる手段ともとれる。
世界の大勢は封じ込めである。その結果、国境は閉じ、人の行き来は制限されている。グローバル化に進んだ世界は、ウイルスによって梯子をはずされた感がある。人々の表情は暗い。耐えなくてはならない。ウイルスを避けるストレス。仕事がなくなる不安……。
日本は強いロックダウンをとっていない。自粛なのだが、そこには、周囲の動きに敏感な日本人特有の感性がある。週末は繁華街ではシャッターが目立ち、通りを歩く人も少ない。これが日本という国でもある。
世界は封じ込めに傾いてしまったから、もう後の祭りなのだが、集団免疫に本格的にとり組んでいれば、世界はもう少し明るかった気がする。行動制限はそれほど厳しくはないだろう。時間はかかるかもしれないが、収束までの道筋が見通せる。免疫をもった人が60~70%という目標値が設定できる。その前にワクチンが開発されるかもしれないが。感染者が増えていくことに、それほど不安を抱かずにすむ。感染者への差別も薄れていく気がする。社会はもう少し明るくなるように思うのだ。
それは国家の体制にもかかわる。封じ込めは、強い権力体制でなければ成功しないというコンセンサスが定着していくと、これまで欧米や日本が標榜してきた政治体制の足許が危うくなってきてしまう。
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリの論調が話題だという。世界の人々はいま、頼れる明るさを探しはじめている。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
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Posted by 下川裕治 at 13:31│Comments(0)
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