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ナムジャイブログ

2020年05月11日

都市封鎖で髪がすごくのびた

「封鎖生活のなかでなにを得ましたか?」
 ディレクターの問いかけに、郭晶さんはこう答えた。
「髪がすごくのびました。美容室はあいたけど、愛おしくてなかなか切りにいけない」
 いいエンディングだった。どこから借りてきたような、そう、日本でいえば、「元気をもらいました」的な言葉にはないリアリティがあった。
 自粛生活のなか、NHKのドキュメンタリーを観た。『封鎖都市武漢』。封鎖期間中、日記を発信し続けた郭晶さんという若い女性と、武漢の声を放送し続けた故事FMというラジオ局を軸にした番組だった。郭晶さんが綴った日記は、『武漢封城日記』として台湾で緊急出版された。たぶん日本語訳も出版されると思う。
 だから詳しい内容がわかるわけではない。番組でとりあげた部分しかわからない。その内容は、72日に及んだ武漢封鎖のなかで暮らした女性の日常である。マンションの管理人から、外出制限が出たことを告げられる。そのなかでのスーパーでの買い出し。日記のなかには、封鎖生活の心情が綴られる。人とのつながりがほしくて、わけもなく長江まで自転車を走らせた話も出てくる。
 日記を発信し続けることは大変だった。中国は検閲のある国だ。削除されそうな部分はアルファベットを加えてまぬがれたり、文字列が波打つように表示されて検閲を免れたり……。故事FMも慎重に放送内容を選んだ。政府は、ネットメディアに対して、放送方針を示していた。
──医療従事者の感動的な物語を宣伝し、プラス面を描くこと。
 その方針を巧みにかわさなくてはならなかった。
 良質な中国……。そんな世界が描かれていたことがうれしかった。
 中国は政府と人々の意識の乖離が激しい国だ。取材活動も制限されているから、日本で得られる中国からの情報は、どうしても政府寄りに傾いていってしまう。それを見聞きすると、心がすさんでくる。こういう環境のなかにいると、嫌中になびいていってしまう感覚はわかる。
 そんなとき、中国に行き、庶民が入る食堂に入るとほっとする。中国人たちは、僕らと同じように悲しみ、同じように笑っている。そして、中国共産党とのつきあい方を知っている。彼らはいい意味で普通なのだ。
 もっと多くの人が、中国に行かなくてはいけないと思っている。そうしなければ、中国人ではなく、中国政府が孤立していってしまう。新型コロナウイルスはいい機会だったのだが……。中国の政権構造は硬直化がかなり進んでいるのかもしれない。

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Posted by 下川裕治 at 13:19│Comments(2)
この記事へのコメント
アジア諸国で、中国は、いったことがありません。なんていうか、唯一行きたくありません。

下川さんの書物の中でも、中国は、なぜか楽しめません。それでなのか。

近所の香港は、楽しく読ましてもらい、いってきましたよ。
Posted by たかしま at 2020年05月12日 20:55
私の母は日本人ですが、台湾生まれの北京育ち。戦前に帰国しましたが、中国は第二の故郷です。30年前の混沌とした中国から行ってますが、欧米より安全です。ヨーロッパでは日本人というだけで、スリに狙われ、多少の人種差別もありますし。
9月の反日記念日前後にたまたま西安に行きましたが、問題なし。反日記念の劇は日本で放映されませんが、国家挙げての超一流俳優を揃えた劇のパフォーマンスの素晴らしさに感動しました。
知人は中国からの飲食物のお土産は捨ててしまいます。以前、高校の修学旅行が上海というだけで、父兄が大反対。
中国への偏見はなくしてほしいと願ってます。
Posted by ゆうちゃん at 2020年06月08日 07:18
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