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ナムジャイブログ

2020年05月18日

ストレスの海に戻っていく

「新型コロナ禍の先の社会。それは地方の活性化を促すのではないか」
 ある経営者がこんな予測をしていた。
 新型コロナの感染が広まるなかで、企業のテレワーク化が強制的に加速した。そこでわかってきたことは、テレワークでも仕事の効率や質は落ちないことだった。すると、どういうことが起きるか。地方で暮らす社員が増えていく。地方には、膨大な数の空き家がある。そこは大都市よりはるかに安く借りることができる。空気もいい。その結果、地方が活性化していく。三段論法である。
 新型コロナウイルスの感染の広まりは、膨張する都市が重要な条件だった。都市は人々が密集して暮らしている。そこにウイルスが入ると、いとも簡単に感染が拡大してしまうのだ。
 日本は東京や大阪に感染者が多い。アメリカはニューヨーク。タイはバンコク……。
 新型コロナウイルスは、都市を住処にして増殖しているかのようだ。もし、世界の人々が、大都市を嫌い、地方に暮らしていたら、こんなことにはならなかった。
 発生は中国の武漢だといわれている。武漢は人口が1000万人を超える大都市である。地方から多くの人が、仕事を求めてこの街に集まり、一気に膨張していった。
 新型コロナウイルスは、都市への人口集中に歯止めをかけたと見る人もいる。都市型のライフスタイルに警鐘を鳴らした、と。
 しかし文化というものを考えてみる。世界の文明は、人が集まるところで生まれていった。司馬遼太郎の言葉を借りれば、「人が集まるところに文化は生まれる」というわけだ。
 しかし人が集まれば、当然、ストレスが生まれる。差別が生まれ、貧困が目につくようになる。経済格差は、ときに戦争をも起こしてしまう。いいことばかりではない。しかしそれをひとまとめにしたものが文化なのだ。
 テレワークがはじまったとき、底知れぬ開放感を味わったはずである。いやな上司の顔を見る必要もない。同僚との競争意識も薄まり、穏やかに時間がすぎていく。
 仕事の能率はあがるかもしれない。しかしそれは、処理していく仕事の分野であって、新しいアイデアで仕事をつくっていく切れのようなものがない。新しい文化を生んでいくものは、人と人の間に生まれるストレスでもあるのだ。いってみれば、ストレスが人類を進化させてきたともいえる面がある。
 ウイルスは、高等動物が地球上に出現した後で生まれた。人間がつくった文化との親和性は高い。ウイルスは人類の進化に貢献してきたが、ときに悪さもする。
 やがて新型コロナ禍は収まっていく。それを前にしり込みする知人が少なくない。
「またあの会社のデスクに戻っていくと考えると、気分が落ち込むんです」
 新型コロナウイルスと共生していく日々が待っている。それはストレスがいっぱい詰まった人の海に戻っていくことだ。それは人の宿命にも映る。

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Posted by 下川裕治 at 15:25│Comments(0)
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