2020年07月20日
無関心を装うウイズ・コロナ
日本での新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。東京の新しい感染者は連日、200人を超えている。今日は200人を割ったが。
僕はいま、東京にいるので、風当たりは強い。
信州の松本でひとり暮らしの母親から連絡があった。介護を担当するケアマネージャーから、老人用の施設への見学を誘われたようだ。ケアマネージャーと会って、話をしてくれないかという。会う日どりを決めるために母親が連絡をとったところ、ケアマネージャーから、
「申し訳ないけど僕と会うことはできないんです。日々、老人と会う仕事なので、感染するわけにはいかないんです。上からそういわれていて」
という返事がきたという。僕が東京に住んでいるからだ。
日本はいま、多くの人が、毎日、発表される東京の感染者数を気にしている。そこには感染拡大の元凶は東京という意識があるからだ。新型コロナウイルスは、東京と地方の分断を招きつつある。
しかしその先の心理を考えるとまた悩む。昨日会った知人がこんな話をしていた。
「午後1時頃になると、つい、ニュースの速報が気になっちゃうんです。感染者数がどのくらいかって。だいたい、こんなに多いのかって落ち込むことが多い。気分が暗くなる。もう、感染者数を気にするのをやめようと思うんです。マスクをかけて、三密を避けるようにしています。それしか対策はない。感染者が増えても、とくに新しい対策があるわけじゃない。気にするだけでしょ。こういうことに右往左往したくないっていう気持ちが強くなってきて」
そうはいっても、やはり気になるのだろうが、彼の心境はよくわかる。
彼のなかでは、感染が増えることへの反応を鈍くしようとしている心理が生まれている気がする。心の平穏を保つための自己防御といってもいいかもしれない。イソップ童話の「酸っぱいブドウ」に通じるところがある。高いところにあって食べることができないブドウの実。それをキツネは、「あのブドウは酸っぱくて食べることができない」と思い込む話だ。
非常事態宣言やロックダウンを発令しても新型コロナウイルスは根絶しない。これ以上経済活動は止められない、と規制を緩めると感染者増加という炎がまた燃えはじめる。欧米や日本の現実である。封じ込めに成功した国も、今後、国境を開くと感染は必ず再燃する。これ以上の大規模規制は難しいから、このまま進むしかない。
ウイズ・コロナと識者は、これからの生活スタイルを提案する。しかしその一方で、感染者の数を気にせず、普通に生きていくことを憧れるウイズ・コロナもあるような気がしてならない。無関心を装って自分を守ろうとするわけだ。
日本ではすでにその傾向が出はじめているようにも思うのだ。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで?http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
僕はいま、東京にいるので、風当たりは強い。
信州の松本でひとり暮らしの母親から連絡があった。介護を担当するケアマネージャーから、老人用の施設への見学を誘われたようだ。ケアマネージャーと会って、話をしてくれないかという。会う日どりを決めるために母親が連絡をとったところ、ケアマネージャーから、
「申し訳ないけど僕と会うことはできないんです。日々、老人と会う仕事なので、感染するわけにはいかないんです。上からそういわれていて」
という返事がきたという。僕が東京に住んでいるからだ。
日本はいま、多くの人が、毎日、発表される東京の感染者数を気にしている。そこには感染拡大の元凶は東京という意識があるからだ。新型コロナウイルスは、東京と地方の分断を招きつつある。
しかしその先の心理を考えるとまた悩む。昨日会った知人がこんな話をしていた。
「午後1時頃になると、つい、ニュースの速報が気になっちゃうんです。感染者数がどのくらいかって。だいたい、こんなに多いのかって落ち込むことが多い。気分が暗くなる。もう、感染者数を気にするのをやめようと思うんです。マスクをかけて、三密を避けるようにしています。それしか対策はない。感染者が増えても、とくに新しい対策があるわけじゃない。気にするだけでしょ。こういうことに右往左往したくないっていう気持ちが強くなってきて」
そうはいっても、やはり気になるのだろうが、彼の心境はよくわかる。
彼のなかでは、感染が増えることへの反応を鈍くしようとしている心理が生まれている気がする。心の平穏を保つための自己防御といってもいいかもしれない。イソップ童話の「酸っぱいブドウ」に通じるところがある。高いところにあって食べることができないブドウの実。それをキツネは、「あのブドウは酸っぱくて食べることができない」と思い込む話だ。
非常事態宣言やロックダウンを発令しても新型コロナウイルスは根絶しない。これ以上経済活動は止められない、と規制を緩めると感染者増加という炎がまた燃えはじめる。欧米や日本の現実である。封じ込めに成功した国も、今後、国境を開くと感染は必ず再燃する。これ以上の大規模規制は難しいから、このまま進むしかない。
ウイズ・コロナと識者は、これからの生活スタイルを提案する。しかしその一方で、感染者の数を気にせず、普通に生きていくことを憧れるウイズ・コロナもあるような気がしてならない。無関心を装って自分を守ろうとするわけだ。
日本ではすでにその傾向が出はじめているようにも思うのだ。
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○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
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Posted by 下川裕治 at 19:39│Comments(0)
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