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ナムジャイブログ

2020年08月10日

コロナ禍で旅本も変わる?

『世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸2万キロ』(朝日文庫)が発売になった。この本は2011年に新潮社から発売された本が元本になっている。10年近くたつと、旅の事情もずいぶん変わる。とくにロシアのビザが大きく変わった。各国のいまの旅行事情も加筆している。
 コロナ禍で、海外旅行本が売れているという。巣ごもりのなか、ネットにも疲れ、「久しぶりに本でも読むか……」といったところなのだろうか。
 海外旅行の分野でいえば、ガイド系はまったく売れないというか、発行もできない状況が続いている。しかし海外旅行の読み物系は売れているということなのだ。旅の読み物でいえば、国内旅行より海外旅行のほうに食指が動く人が多いということだろうか。
 コロナ禍のなか、海外旅行の足は封印されている。旅の世界のストーリーは、たしかにユーチューバーの世界より空が高い。
 これは以前からいわれていたことだが、僕の本を読む人の多くが、描かれた旅をしてみたいとは思っていないという。
「下川さんの旅はけっこう過酷でしょ。誰も行こうなんて思いませんよ。つらい旅をする下川さんの文章を読んでるんです」
 ある編集者から、はっきりといわれたときは鼻白むものがあった。しかし情況を俯瞰してみれば、たしかにそうかもしれない。
 この本もその流れのなかにある。ロシアから中国に入国した駅では、公安に連行されそうになっている。そして北京ではダフ屋から列車の切符を買い、中国を脱出した。
 中央アジアを列車で進み、再びロシア。そこからアゼルバイジャンに抜けようとしたのだが、前を走っていた貨物列車がテロに遭って爆破され、その先ではロシアの出国拒否の憂き目に遭遇してしまう。そしてロシアのビザが切れ、違法宿に息を潜める日々……。
 こんな旅を誰も追体験しようとは思わないはずだ。
 コロナ禍は10年といった時間感覚で眺めれば一過性の疫病なのだが、感染が1年、2年と続くと、経済や人々の考え方に多少なりとも影響を与える。世界はそれほどの速度で動いていたのか……と改めて思う。
 海外旅行の本の世界でいえば、ガイドの存在感が薄れ、旅の物語が読まれるようになった。自由に海外を歩くことができたときは、旅の物語とガイドが、1冊の本のなかで混在していた。それが整理されつつある。すっきりしていい気もする。正常に戻れば、また混沌とした分野に戻る気はするが。
 旅の本を書き、ガイドの編集にもかかわっている。僕自身がそのへんの潔さを身に着ける期間ということかもしれない。

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○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
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○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
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Posted by 下川裕治 at 22:34│Comments(1)
この記事へのコメント
下川さんの行動を追ってみる派です。香港ではチョンキンマンションに泊まったり、バンコクからノンカーイまで寝台に乗り、陸路で国境超えや、バス移動をする度に、なるほどこんな感じかと楽しんでいます。トンレサップ湖、シェムリアップからプノンペンへの船旅も「ここはバスでなく船だな」と決めたのも、知らず知らずのうちに下川さんの影響があったかもしれません。はやくコロナ禍が終わって自由に旅ができる日が来ますように。
Posted by すぎ吉アラサー at 2020年08月11日 04:26
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