2021年09月13日
座右の銘は「ない」という上海
このブログでは何回か触れているテーマではある。ウイルスというものに対する欧米とアジアの温度差の問題だ。たしかにワクチンの接種率の違いはあるかもしれないが、次々に国境を開き、正常化に向けて動きはじめている欧米の発想を、ワクチンの接種率だけではとても語ることはできない。
欧米の感染者数の増加とアジアのそれには明らかな時差がある。半年、いや1年……。欧米は早く感染が広まり、ワクチンも接種もスピード感があり、感染者はいるが、インフルエンザ感覚にもっていこういった動きに傾いている。
それに比べるとアジアは神経質だ。怖がり……といってもいい。感染の初期、早々に鎖国に近い状態にもち込み、海外からのウイルスが入り込むことを防いだ。しかしデルタ株の感染力が強すぎたのか、欧米より半年以上遅れて大きな感染が起きてしまう。タイ、インドネシア、カンボジア、ベトナムあたりはその典型だろうか。日本や韓国、台湾もその傾向のなかにある。その時差が、ワクチン接種の割合とシンクロしてしまった。
いまアジアに住んでいる人が送ってくれた写真を見ているのだが、その惨状は目を覆いたくなる。ソウルの明洞の歩道に人がまばらである。バンコクのソイ・ナナはシャッターを閉めた店が続く。カンボジアのシェムリアップのパブストリートの写真を見たときは目を疑った。店が閉まっているだけでなく解体もはじまっていたのだ。再開発だと聞いて、胸をなでおろしたが、アジアの多くの繁華街から人が消えている。
ここに南米とアフリカ、オーストラリアなどを加えていくと、世界を席けんしたコロナ周期のようなものができあがる。その変遷とウイルスというものへの意識の違いを比べるのは、かなり面白い研究にも映る。
しかしこういった世界のコロナ周期とは無縁の道を歩いている国がある。中国である。
新型コロナウイルスはまず、中国の武漢で大規模な感染爆発が起きた。しかしその嵐の後は、小規模な感染こそ起きているが、欧米やアジアのような感染爆発は起きていない。中国政府は、それを中国の優位性としてアピールしているが、逆から見れば、中国という国は、世界のなかでかなり特異な体制をもっていることを世界に伝えていることになる。
この種の話になると、とても短いブログでは語ることができない領域に入ってしまう。しかしコロナ前の日常に戻るという面からだけ見れば、中国がいちばん近い位置にいるように思う。それでは進化がないという人もいるが。
上海に暮らす知人が制作した雑誌、『ケチャップ。』の2号が届き、ページをめくりながら改めてそう思った。今回は「上海の食」が特集なのだが、『OHA Eatery』というレストランの紹介記事にこんな部分がある。
「(ミシュランシェフから)『全部不味い』『調理法間違っていない?』って言われてしまって」と満面の笑みで語るオーナーが登場する。彼女に座右の銘を聞くと、「ない」という答えが返ってくる。
コロナ禍前の世界は、こんなに楽しかったんだと思えてくる。またそこで、世界は不協和音を生むのだろうが。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
面白そうだったらチャンネル登録を。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=東京再発見の旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
欧米の感染者数の増加とアジアのそれには明らかな時差がある。半年、いや1年……。欧米は早く感染が広まり、ワクチンも接種もスピード感があり、感染者はいるが、インフルエンザ感覚にもっていこういった動きに傾いている。
それに比べるとアジアは神経質だ。怖がり……といってもいい。感染の初期、早々に鎖国に近い状態にもち込み、海外からのウイルスが入り込むことを防いだ。しかしデルタ株の感染力が強すぎたのか、欧米より半年以上遅れて大きな感染が起きてしまう。タイ、インドネシア、カンボジア、ベトナムあたりはその典型だろうか。日本や韓国、台湾もその傾向のなかにある。その時差が、ワクチン接種の割合とシンクロしてしまった。
いまアジアに住んでいる人が送ってくれた写真を見ているのだが、その惨状は目を覆いたくなる。ソウルの明洞の歩道に人がまばらである。バンコクのソイ・ナナはシャッターを閉めた店が続く。カンボジアのシェムリアップのパブストリートの写真を見たときは目を疑った。店が閉まっているだけでなく解体もはじまっていたのだ。再開発だと聞いて、胸をなでおろしたが、アジアの多くの繁華街から人が消えている。
ここに南米とアフリカ、オーストラリアなどを加えていくと、世界を席けんしたコロナ周期のようなものができあがる。その変遷とウイルスというものへの意識の違いを比べるのは、かなり面白い研究にも映る。
しかしこういった世界のコロナ周期とは無縁の道を歩いている国がある。中国である。
新型コロナウイルスはまず、中国の武漢で大規模な感染爆発が起きた。しかしその嵐の後は、小規模な感染こそ起きているが、欧米やアジアのような感染爆発は起きていない。中国政府は、それを中国の優位性としてアピールしているが、逆から見れば、中国という国は、世界のなかでかなり特異な体制をもっていることを世界に伝えていることになる。
この種の話になると、とても短いブログでは語ることができない領域に入ってしまう。しかしコロナ前の日常に戻るという面からだけ見れば、中国がいちばん近い位置にいるように思う。それでは進化がないという人もいるが。
上海に暮らす知人が制作した雑誌、『ケチャップ。』の2号が届き、ページをめくりながら改めてそう思った。今回は「上海の食」が特集なのだが、『OHA Eatery』というレストランの紹介記事にこんな部分がある。
「(ミシュランシェフから)『全部不味い』『調理法間違っていない?』って言われてしまって」と満面の笑みで語るオーナーが登場する。彼女に座右の銘を聞くと、「ない」という答えが返ってくる。
コロナ禍前の世界は、こんなに楽しかったんだと思えてくる。またそこで、世界は不協和音を生むのだろうが。
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Posted by 下川裕治 at 12:29│Comments(0)
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