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ナムジャイブログ

2022年02月21日

20年前に戻ってしまった?

 昨日の晩、突然、電話が鳴った。ひとりのミャンマー人が死亡したという知らせだった。ミャンマー人といっても、西部に暮らすラカイン人である。技能研修生として日本の工場で働いていた。
 僕は知らないラカイン人だった。電話の目的は、工場の社長と連絡をとり、今後のことを決めていくためだった。そこには労災問題もあった。
 今日、朝から、社長との電話がつづいた。社長は警察署にいた。事故死である証明などの話だった。
 死亡した青年には日本で暮らす弟がいた。彼が駆けつけ、僕の知り合いはミャンマーにいる両親に連絡をとり……と慌ただしく時間がすぎていった。
 遺骨をどうやってミャンマーに運ぶか……などの問題がいくつかあった。
 20年以上前になる。僕は毎月、こういったトラブルとつきあっていた。相手はタイ人だったが。突然の電話からはじまるパターンがよく似ている。
 死亡していったタイ人は皆、不法就労だった。日本にいないことになっている立場だった。工場で働いているときに死亡しても労災とは縁がなかった。そもそもいない人たちなのだから、日本のルールをあてはめることができない。頼りは支援団体や確信犯的な病院、そして役所の拡大解釈だった。
 いつも費用で悩んだ。遺骨にしようとしても、火葬代がかかる。しかし行旅病人及行旅死亡人取扱法、」つまり行き倒れと判断されると、行政の費用で火葬代が出る。
 タイへの輸送は大使館に頼むことが多かった。定期的に物資を運ぶ大使館の荷物に入れてもらうのだった。
 しかし死亡したラカイン人は技能研修生だった。不法就労のタイ人が抱えるような問題はなかった。
 しかし別の問題があった。コロナと軍のクーデターだった。ふたつが重なったミャンマーは、ほぼ鎖国状態がつづいている。ミャンマーへの便は不定期で通常の観光客は乗ることができなかった。そして軍を嫌う彼らは、大使館を頼ろうとしない。
 さてどうするんか。
『あなたのルーツを教えて下さい』(安田菜津紀著。左右社)を読んだ。日本にいるさまざまな国籍の人を差別という構図のなか紹介している。剛速球で問題に迫るような本だ。自らの出自もかかわり、在日コリアンの項は秀逸だ。
 日本で生まれ育った外国人のなかに、子供時代にいじめで悩んだ人が少なくない。紹介されている「ちゃんへん.」という在日コリアンは、小学校時代にいじめに遇う。校長に抗議に出向いた母親はこういう。
「いじめよりおもろいもんがないからや。お前、学校のトップやったら、いじめよりおもろいもん教えたれ!」
 そんな本を読んだ後で届いたミャンマー人の死。なんだか20年前に戻ってしまったような気がしている。

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Posted by 下川裕治 at 10:38│Comments(0)
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