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ナムジャイブログ

2022年05月23日

沖縄復帰50年で島豆腐が消える?

「こういうことか……」
 夕方の那覇のスーパーで呟いてしまった。沖縄のスーパーの豆腐売り場には、2種類の豆腐が並んでいる。ひとつは本土のようにパックに入った豆腐。そしてもうひとつはビニール袋に入った島豆腐。こちらは温かい。沖縄の人たちは、沖縄方言でいう「アチーコーコー」という温かい島豆腐を好む。
 しかし島豆腐が置かれているはずのコーナーにはなにもなかった。
 前夜、島豆腐が買いにくくなったと耳にした。豆腐を売るルールが変わったらしいという話だった。
 ぴんときた。
 沖縄が日本に復帰したとき、この豆腐をめぐって不協和音が響いた。復帰と同時に、本土での豆腐の売り方が適応される。本土の食品衛生法では、豆腐は冷たい水に晒して売らなくてはならない。温かい豆腐は販売できないのだ。
 温かい島豆腐は、沖縄の食文化だった。沖縄の豆腐業界は当時の厚生省に陳情を繰り返し、沖縄の特例として温かい島豆腐を売ることができるようになった。有名な話だ。
 今年は復帰50年である。あるニュースサイトの原稿を抱えていた。ぴたりとはまる。復帰50年の記事になる。
 沖縄の豆腐関係者に話を聞いてみた。昨年6月、日本は食品衛生管理手法であるHACCP(ハサップ)を導入した。それによると、豆腐の温度が55度以下の場合、3時間で以内に販売か、冷蔵保存が必要になった。島豆腐は3時間以上、店頭に置くことが難しくなったのだ。那覇のスーパーの豆腐売り場に、島豆腐がなかったのは、売り切ったか、処分したかのどちらかだった。
 しかし問題はそれだけではなかった。
「そもそも島豆腐の売りあげは落ちてきていたんです。パックの豆腐に比べると料理の前に手間がかかるので、沖縄の人も敬遠してきてました。島豆腐を知らない若い人もいるようです。そこにHACCPでしょ。売れ残ったら廃棄ですから、業者も腰が引けて」
 業界の関係者は説明してくれた。
「だったら55度以上で売れば……」
「肉まんみたいにでしょ。そうすると島豆腐は硬くなってまずくなるんです」
 拍車をかけたのは働き方改革だった。沖縄の豆腐屋は年中無休が常識だった。しかしきちんと休むように指導が入る。島豆腐は売れ残ると回収しないといけないから、仕事量は増える。結局、撤退した島豆腐業者もあるという。
 復帰50年とはそういう年月だったのか。
 島豆腐ファンとしては溜め息がでた。
「でも、この話、昨日のNHKでもやってましたよ。HACCPの話として」
 復帰50年にぴたりとはまる話。それはほかの報道関係者も気づく。早い者勝ち?
 僕は記事を書くのをやめた。
 復帰50年。再び溜め息が出た。

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Posted by 下川裕治 at 13:48│Comments(0)
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