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ナムジャイブログ

2023年03月13日

フアラムポーン駅が各駅専用駅になったが……

 バンコクに着いた翌日、フアラムポーン駅に行ってみた。バンコク中央駅という人もいる駅だ。1月19日から、この駅を発着する急行などの速い列車がすべて姿を消したと聞いていたからだ。急行など、鉄道ファンが好んで使う優等列車は、クルンテープ・アピワット中央駅の離発着になった。以前はバンスー中央駅と呼ばれていた駅だ。
 ここ至るまで、いかにもタイ式というか、タイ国鉄らしい経緯を辿った。フアラムポーン駅がなくなるという情報は2021年の末に走った。どこかヨーロッパの終着駅を思わせる駅舎はファンも多く、最後の姿を写真に残そうと多くのタイ人が訪れた。そのなかには日本人もいた。僕らも最後の姿をYouTubeで流した。タイのテレビも特集番組をつくったりした。駅舎は博物館になるという話も、まことしやかに流れていた。
 しかしその日がきても、フアラムポーン駅はなにも変わらなかった。いままで通り列車が離発着している。タイ在住の知人が訊いてみても、駅員は、
「どうなるか私たちにはかわかりません」
 という頼りない笑みが返ってきただけだったという。そして年が明けても、駅の様子はなにも変わらなかった。2021年末のあの盛りあがりはなんだったのか……などと考えているうちに月日は流れ、僕のなかでは、フアラムポーン駅の閉鎖話は消えつつあった。タイ人たちからも、
「バンスーにあんなに立派な駅をつくってどうするんだろう」
 という声も届く。皆がフアラムポーン駅は変わらないと思いはじめていた。
 ところが今年、つまり2023年になって、唐突に発表があった。フアラムポーン駅は閉鎖か……と色めきたったが、よく訊くと、各駅停車の列車はフアラムポーン駅離発着として残るという。なんだかすごく中途半端な結末になって、肩透かし。なにも盛りあがらず、1月19日になった。いかにもタイだった。
 駅は、一見、なにも変わっていないようにも映った。しかしよく見ると、2階の飲食店のなかにはシャッターが閉まっているところもあった。店側にしても、今後、どのくらい客がくるのかわからず、判断が難しかった気がする。
 待合室で目的地や発車時刻を知らせる電光掲示板を見あげた。すべて各駅停車しかない表示を確認しながら、僕は呟いていた。
「これなら大丈夫だ」
 タイの列車は平気で数時間遅れる。それはまさにお家芸でもある。あまり遅れると、途中で引き返し、その先は代行バスといった荒業も涼しい顔だった。だからというわけではないが、僕はタイの鉄道の全線を制覇する旅に出た。その旅は『東南アジア全鉄道制覇の旅 タイ・ミャンマー迷走編 (双葉文庫)にまとまったが、その経験からすると、タイの鉄道の魅力は各駅停車しかないと思っているからだ。
 各駅停車には、沿線に住む人が、車掌に話をつけて列車に乗り込んでくる。抱えているのはさまざまな車内めしだ。小さな汁なしそば、小ぶりのタイカレー、飲みもの、つまみや菓子……。そこには創意工夫が溢れ、レベルが高く、安かった。あの各駅停車は、すべてフアラムポーン駅から発車する。各駅停車好きにはなんの影響もない。これからの僕のタイでの列車旅は、きっとフアラムポーン駅からはじまる。


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Posted by 下川裕治 at 10:48│Comments(0)
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