2023年04月10日
台湾が輝いて見える
台湾をテーマにした原稿を書くことがしばしばある。原稿を書き進めながら、ふっと手が止まることが多い。台湾は一見、国のような顔をしているが、世界の多くの国が台湾を国とは認めていない。大陸、つまり中華人民共和国を国家として承認し、中華人民共和国は「ひとつの中国」という原則を崩していないからだ。この話になると、かなりややこしいことになるが、単純に表記として国は使いにくい。台湾とか島といったいい方でごまかすことになる。
このなかで、知人の広橋賢蔵さんが台湾への帰化を果たした。その経緯をまとめているが、それが興味深い。
https://www.fsight.jp/articles/-/48728
手つづきは、日本から「国籍喪失届不受理証明書」を受けとるところからはじまる。つまり「日本国籍を喪失する届を受けとりましたが、それは受理できません」という証明書だ。これを台湾はこう解釈する。
「日本政府は国籍返上に感知しないということだから、台湾への帰化手つづきを進められる」
難解な論理である。台湾とはそういう島なのだ。ここでも国が使えない。
しかし国とはいいがたい台湾がときに輝いて映る。
2016年8月、台湾総統である蔡英文氏が、台湾の先住民に対して公式に謝罪した。これに対して、世界はこう反応した。
「ウイグル人をはじめととする中国共産党の少数民族への対応に対する強烈な批判だ」
2019年の5月、台湾は同性婚を正式に認めた。アジア初のことだった。これも同性婚には批判的な中国共産党への「さやあて」という評価が多かった。
さまざまな政策を深読みされてしまうのが台湾である。いや、台湾はそこまで読んでいるのか。
中国共産党が一党支配する中国は、世界で最も強い権威主義国家のひとつである。そして国家というものを強く前面に出している。だから台湾に対して、「ひとつの中国」を押しつけてくる。中国がその論理を貫くと、最後にはどうなるかという展開を、多くの世界の人たちが香港で学んだ。
しかし中国が権威主義を押しつけることに対して、台湾は人権で反応する。先住民という少数民族への謝罪、同性婚の認容といった方向は、中国が高圧的な姿勢を示せば示すほど強くなる。
台湾人はわかっているのかもしれない。中国が武力で蹂躙しようすれば、台湾はひとたまりもないということを。
しかしその圧力のなかで、台湾は世界でもトップレベルの人権が守られたエリアに育っていく。
それは歴史の皮肉かもしれないが、そのなかで台湾は輝きを増していく。
しかし台湾を国家とはいいにくい。
国家とはなんなのか。台湾と中国の問題はその部分を浮き立たせる。
来年の総統選に向けて、中国は次々に台湾に圧力をかけてくるのだろう。最近の動きをみると、そのあたりがよくわかる。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
このなかで、知人の広橋賢蔵さんが台湾への帰化を果たした。その経緯をまとめているが、それが興味深い。
https://www.fsight.jp/articles/-/48728
手つづきは、日本から「国籍喪失届不受理証明書」を受けとるところからはじまる。つまり「日本国籍を喪失する届を受けとりましたが、それは受理できません」という証明書だ。これを台湾はこう解釈する。
「日本政府は国籍返上に感知しないということだから、台湾への帰化手つづきを進められる」
難解な論理である。台湾とはそういう島なのだ。ここでも国が使えない。
しかし国とはいいがたい台湾がときに輝いて映る。
2016年8月、台湾総統である蔡英文氏が、台湾の先住民に対して公式に謝罪した。これに対して、世界はこう反応した。
「ウイグル人をはじめととする中国共産党の少数民族への対応に対する強烈な批判だ」
2019年の5月、台湾は同性婚を正式に認めた。アジア初のことだった。これも同性婚には批判的な中国共産党への「さやあて」という評価が多かった。
さまざまな政策を深読みされてしまうのが台湾である。いや、台湾はそこまで読んでいるのか。
中国共産党が一党支配する中国は、世界で最も強い権威主義国家のひとつである。そして国家というものを強く前面に出している。だから台湾に対して、「ひとつの中国」を押しつけてくる。中国がその論理を貫くと、最後にはどうなるかという展開を、多くの世界の人たちが香港で学んだ。
しかし中国が権威主義を押しつけることに対して、台湾は人権で反応する。先住民という少数民族への謝罪、同性婚の認容といった方向は、中国が高圧的な姿勢を示せば示すほど強くなる。
台湾人はわかっているのかもしれない。中国が武力で蹂躙しようすれば、台湾はひとたまりもないということを。
しかしその圧力のなかで、台湾は世界でもトップレベルの人権が守られたエリアに育っていく。
それは歴史の皮肉かもしれないが、そのなかで台湾は輝きを増していく。
しかし台湾を国家とはいいにくい。
国家とはなんなのか。台湾と中国の問題はその部分を浮き立たせる。
来年の総統選に向けて、中国は次々に台湾に圧力をかけてくるのだろう。最近の動きをみると、そのあたりがよくわかる。
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Posted by 下川裕治 at 11:28│Comments(0)
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