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ナムジャイブログ

2023年06月05日

影が薄い存在をめざしているのだが

『僕はこんなふうに旅をしてきた』(朝日文庫)ができあがった。
https://x.gd/mhwnB
 すでに並んでいる書店も多いのではないかと思う。
 これまでの100冊を超える著作のなかからトラブルやハプニングを集めたアンソロジーだ。「死ぬかと思った編」、「びっくりハプニング編」、「ほっこり編」……。僕と編集者の共同で著作のなかから抜きだした。
 僕は人から、「もってますね」といわれることがたまにある。僕の本を読んでいる知人だから、僕が遭遇したトラブルやハプニングのことを指している。その種のできごとに遭いやすいという意味になる。僕は旅を書いているわけだから、書くネタに遭遇する運のようなものを「もってますね」という意味になる。
 しかし僕自身はそんな意識はない。それ以上に、トラブルに遭ったときは大変なのだ。どうしたら乗り切れるか……これまでの経験をフル回転させ、焦りまくっている。
 それを原稿にまとめることができるのは、ことが過ぎ去り、日本になんとか帰国してからのことだ。
 僕はできるだけトラブルに遭わないような旅を心がけてきた。旅行者なら当然のことだと思う。そこで辿り着いたのは、いかに存在感を薄くするかということだった。目立たなければトラブルにも遭いにくい。
 しかし存在感を薄くする技術があるわけではない。努力はするが、どこか天性のようなものもあると思う。僕にはその資質があったから、旅をつづけられた気もする。事件報道などで、記者が学校時代のことを友人に訊くことがあるが、「影が薄い存在でした」といわれるタイプは旅人に向いていると思う。
 たまにテレビ局に行くと、有名なキャスターや芸能人を目にすることがある。たしかに彼らはある種のオーラを放っている。芸能人オーラである。常に人に見られる職業についていると、いつの間にかオーラを発するようになるのかもしれないが、やはり天性というものはあると思う。
 僕はこれまでも何回かエッセイなどで書いているが、飛行機に乗り、機内食をもらえないことがときどきある。忘れられてしまうのだ。その話をすると、知人から憐みの視線を向けられるが、僕はまんざらではない。そこまで存在感を消せるようになったか……。といった心境である。旅の日々のなかで、僕の影の薄さは定着してきたのではないか、と。
 だから僕自身、「もっている」とは思っていない。むしろ逆で、「トラブルに遭いにくい体質。つまり目立たない存在」だと自認している。
 しかし『僕はこんなふうに旅をしてきた』という本ができあがってしまった。これをどう考えたらいいのか。そんな話を知人にすると、こういわれてしまった。
「自己認識が甘いんじゃない」
 そういうことか?

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Posted by 下川裕治 at 11:16│Comments(0)
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