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ナムジャイブログ

2010年06月21日

都市と地方の格差という火種

 前回のこのコーナーで、ベトナムの物価に触れた。ホーチミンやハノイと、外国人観光客がほとんど来ないエリアの物価格差が5分の1にもなるという話である。僕はそこから、旧社会主義国の外国人観光客への受け入れシステムの臭いがする……。そんな話を書いた。
 それに対してベトナム在住の読者から、「僕のベトナムに対する認識不足ではないか」という指摘をいただいた。ベトナムの外国人が来る都市と地方の格差はかなりのものだというのだ。反省しきり……といったところだが、その格差に再び考え込んでしまった。
 実はアエラの5月31日号に、タイのバンコクと地方の格差の話を書いたばかりだったのだ。
 テーマはバンコクの騒乱だった。通称赤シャツ派の市街地占拠は約50日にも及んだ。そして5月19日、幹部が投降。不満分子がバンコク市内のあちこちに火を放った。
 僕はバンコク市内を走りまわっていた。批判的なバンコク人、赤シャツ派を支持するタクシー運転手……。さまざまな人から話を聞いた。そのなかから、赤シャツ派を支える人たちのなかに、バンコクという都会に対する反発が浮かび上がってきた。彼らは地方からバンコクに出稼ぎに出ていた。彼らが抱くバンコク人への反発は根深いものがあった。オックスフォード大卒のエリートであるアビシット首相を生理的に嫌っていた。彼を担ぎ出したのがバンコク人だった。
 その意識の底にあるものは、都会と地方の格差だった。しかしタイの格差は、2~3割である。それでも都心に火を放つような騒乱を引き起こしてしまう……。
 大都市への人口集中はアジアの社会現象である。中進国から途上国の傾向といっていい。賃金の高い都会に地方の人々が吸い寄せられていってしまうのだ。当然、都市の物価は高い。そのなかで地方出身者は、汗を流し、田舎に仕送りを続けている。
 ベトナムはタイよりも激しい格差が生まれていた。都市型の暴動の火種をベトナムも抱えているようだった。
 中国はその傾向に危機感を募らせている。沿海部に産業が集中し、地方都市からの出稼ぎが中国の発展を支えていた。しかしその流れが太くなるほど、地方が疲弊していく。
 中国は地方に工場を移転させつつある。日系企業の工場も、その流れに晒されている。駐在する日本人にしたら大変なことで、さまざまな問題も生まれていると聞く。
 今年、フィリピンの大統領選が行われた。アキノ氏が選ばれたが、エストラダ前大統領も25%の票を集めた。エストラダ人気のひとつは、彼の下手な英語だとフィリピン人はいう。都会のエリートに反発するフィリピン人は、そんな彼に親近感を覚えるらしい。
 都市と地方……。アジアの争点であり、火種でもある。
(2010/6/20)


Posted by 下川裕治 at 17:40│Comments(1)
この記事へのコメント
初めまして。

いつも応援していますよ~。
お仕事頑張ってくださいね!

また遊びにきますね。
Posted by しいな at 2010年06月21日 18:04
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