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ナムジャイブログ

2024年10月15日

金木犀がまだ咲かない

 原稿に追われている。本の原稿は自宅で書くことが多い。なかなか進まず、悶々とした時間がすぎていく。1冊分の原稿という長丁場になると、ひと晩頑張っても、終わりは見えない。ペースをつくり、こつこつと積みあげていかなくてはならない。
 午前3時には寝るようにしている。それ以上、仕事をつづけると、翌日、原稿は進まなくなってしまう。
 午前3時──。寝ようかと外を見る。月明りに金木犀の木が見える。ベランダ越しに眺めながら、
「まだ咲かない」
 とひとりごちる。今日は10月13日。いつもならもう花をつけ、芳香を放っている。
 植物の開花は気温と日照時間がかかわっている。気候が変動すると、この時期がずれてしまう。
 僕は長く句会に参加している。俳句には季語がある。一般的に俳句には、この季語をひとつ加える。季語は旧暦で決められているから、実際の季節とややずれる。たとえば朝顔は夏の季語ではなく、秋の季語だ。トウモロコシも秋……。そこに最近の気候の変化が加わってくる。句会の席で、メンバーの愚痴が聞こえてくる。俳句には写生句という分野がある。そのときの気候や現象を読み込んでいく。
「季語とのずれがますます大きくなって、句がつくりづらいですなぁ」
 気温が35度を超えているのに、秋の季語を使わなくてはならないのだ。
 植物や動物の生態をみていると、日照時間より気温の変化を多く受けているように思えてしかたない。たとえば夏の深夜、突然、セミが鳴きはじめることがある。光ではなく気温に反応しているからだ。桜や金木犀にしても、まず気温の変化を受け、その後で日照時間が開花に影響を与えるという。気温の洗礼を受けないと、いくら日照時間が変わっても開花しないのだという。
 動植物の生存を考えれば当然のことだ。金木犀にしても受精を媒介してくれる昆虫が動いてくれないと開花しても意味がない。自然界を仕切っているのは、日照時間より気温であり、気温に反応していくことは動物的ということになる。
 それに比べると、人間が決めた暦や季語は日照時間に頼る節がある。気温は年によって変わり、それを基準にできない。しかし日照時間は地球の回転軸の傾きで起きることだから変化しない。狭義の日照時間はその日の天気で変わるが、日の出から日没までの時間と考えれば、年によっての変化はないわけだ。
 暦や季語には科学的な要素が強いから、普遍的なものになる。そのあたりは頭で理解することはできる。それがほかの動植物と人間の大きな違いなのだろう。しかし人間は動物としての本能ももっているから、その日の気温に振りまわされる。温暖化はひとつの説得材料だが、その日の気温を説明しているわけではない。
 この落としどころがみつからない。人の意識は、これでけっこう厄介だ。
 金木犀はいったいいつ、花をつけるのだろうか。

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Posted by 下川裕治 at 12:57│Comments(1)
この記事へのコメント
私はB型で体質的に蚊に刺されやすく、子供の頃は夏によく蚊に刺されてかゆくなったもんですが、昨今の夏の猛暑では蚊の活動が逆に弱まるらしくて、少し涼しくなった今頃になって蚊に刺されるようになりました。
もう昔の季節感は狂ってしまいましたね。
Posted by 叔父貴 at 2024年10月16日 22:55
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