2010年08月09日
裏列車が我が家だった
綏芬河は坂の街だった。駅から急な坂道を登っていくと中心街に出た。その広場の光景に息を呑んだ。広場の周りに建ち並ぶビル。それぞれ10階はあるだろうか。それぞれ3階ぐらいまで商店が入り、そこには洋服や食べ物が溢れている。商売気のないロシアの街からやってくると、その消費文化に目がくらみそうになる。中国の辺境の街でこの勢いなのである。
やはり中国だった。
坂の途中にある食堂で夕食をとった。夜の8時。街は暗くなり、行くところがない。僕のねぐらはあの国際列車しかない。小雨も降ってきた。ホームで待つことにしようか。
駅舎近くで、ウラジオストクから同じ車両にいるオランダ人の老人と会った。僕らはホームに向かった。
しかし改札を通ることはできなかった。そういわれていた。しかし腑に落ちない。僕らは違法切符をもっているわけではない。いや、ロシアや中国で買うローカルチケットより高い運賃を払っているはずだ。それなのに、どうしてこそっとホームに戻らなくてはいけないのだ。ロシアからそっと進入する裏列車に乗っているような感覚なのだ。
僕らはホームに入った。果たして中国の鉄道の職員にとり囲まれた。英語は通じない。しかたなく切符を見せる。だがそれはロシア語だから誰も読めなかった。
「早くホームから出ろ」
中国の公務員独特の居丈高な態度である。しかし僕らはここにいないと列車に乗ることができないのだ。
情況がわかってきた。綏芬河の駅では、発車15分前に、乗客をホームに入れるルールらしい。それより前にホームに立たれては困るのだ。しかし僕らはどうしたらいいのだろうか。
結局、駅の待合室に連れ込まれた。そこで再び切符を見せる。職員はそれを持ってどこかに消えた。
それから30分。ようやく彼らも情況をつかめたようだった。無理もなかった。僕らの車両には、この駅で切符を買った人は乗ることができない。駅職員にしたら関係のない車両なのだ。ハルピン行きの列車の後に、夜陰に乗じてそっと連結されるだけの外国の車両なのだ。
しかしどうしてこういうことになってしまうのだろう。ロシアがビザのために、専用国際車両を用意するからいけないのだ。
出発15分前、僕らだけ隔離され、駅員に先導されてホームに出ると、そこに僕らの車両があった。なんだか懐かしさがこみあげてくる。ドアの下に立つと、ロシア人の職員の笑顔が返ってきた。我が家に帰ったような感覚だった。
中国の時刻表を見ると、僕らの車両がくっついたのは、K7024というハルピン行きだった。一般車両には中国人やロシア人が乗り込んだが、僕らの車両は相変わらず3人だけだった。車内は海の底のように静かだった。
今朝、ハルピンに着いた。
僕はようやく国際列車の呪縛から解放された。
(ハルピン。2010/7/7)
やはり中国だった。
坂の途中にある食堂で夕食をとった。夜の8時。街は暗くなり、行くところがない。僕のねぐらはあの国際列車しかない。小雨も降ってきた。ホームで待つことにしようか。
駅舎近くで、ウラジオストクから同じ車両にいるオランダ人の老人と会った。僕らはホームに向かった。
しかし改札を通ることはできなかった。そういわれていた。しかし腑に落ちない。僕らは違法切符をもっているわけではない。いや、ロシアや中国で買うローカルチケットより高い運賃を払っているはずだ。それなのに、どうしてこそっとホームに戻らなくてはいけないのだ。ロシアからそっと進入する裏列車に乗っているような感覚なのだ。
僕らはホームに入った。果たして中国の鉄道の職員にとり囲まれた。英語は通じない。しかたなく切符を見せる。だがそれはロシア語だから誰も読めなかった。
「早くホームから出ろ」
中国の公務員独特の居丈高な態度である。しかし僕らはここにいないと列車に乗ることができないのだ。
情況がわかってきた。綏芬河の駅では、発車15分前に、乗客をホームに入れるルールらしい。それより前にホームに立たれては困るのだ。しかし僕らはどうしたらいいのだろうか。
結局、駅の待合室に連れ込まれた。そこで再び切符を見せる。職員はそれを持ってどこかに消えた。
それから30分。ようやく彼らも情況をつかめたようだった。無理もなかった。僕らの車両には、この駅で切符を買った人は乗ることができない。駅職員にしたら関係のない車両なのだ。ハルピン行きの列車の後に、夜陰に乗じてそっと連結されるだけの外国の車両なのだ。
しかしどうしてこういうことになってしまうのだろう。ロシアがビザのために、専用国際車両を用意するからいけないのだ。
出発15分前、僕らだけ隔離され、駅員に先導されてホームに出ると、そこに僕らの車両があった。なんだか懐かしさがこみあげてくる。ドアの下に立つと、ロシア人の職員の笑顔が返ってきた。我が家に帰ったような感覚だった。
中国の時刻表を見ると、僕らの車両がくっついたのは、K7024というハルピン行きだった。一般車両には中国人やロシア人が乗り込んだが、僕らの車両は相変わらず3人だけだった。車内は海の底のように静かだった。
今朝、ハルピンに着いた。
僕はようやく国際列車の呪縛から解放された。
(ハルピン。2010/7/7)
Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(4)
この記事へのコメント
無料で読めるとはいい時代になりましたねぇ
Posted by 旅行者 at 2010年08月10日 14:40
5万4千でアジア横断買いました。
格安航空会社で世界一周も買おうかと
思いましたが、合計1000円以上に
なるので今度買います。
アジア意外の旅にあまり興味が
わかなかったので買うのをやめたんですが…
格安航空会社で世界一周も買おうかと
思いましたが、合計1000円以上に
なるので今度買います。
アジア意外の旅にあまり興味が
わかなかったので買うのをやめたんですが…
Posted by 旅行者 at 2010年08月10日 14:53
ども、椎野です。
二合会の返事いただきました。
相変わらず急がしそうですね。
このブログずっと知りませんでしたが、ひょんなことで出くわしました。
なかなか面白いですね。
度々、おじゃまします。
ヒマがあったら、私のブログも見てくださいな。
二合会の返事いただきました。
相変わらず急がしそうですね。
このブログずっと知りませんでしたが、ひょんなことで出くわしました。
なかなか面白いですね。
度々、おじゃまします。
ヒマがあったら、私のブログも見てくださいな。
Posted by 椎野修平 at 2010年08月16日 11:37
K7024を「中国鉄路服務中心」http://www.12306.cn/mormhweb/kyfw/lcskbcx/で検索して見た。
21:15綏芬河発7:58哈爾濱東着。
硬座(普通座席車)79元である。
1200円ほどである。硬臥(普通寝台車)が140元。約2100円ほど。
軟臥(一等寝台車)が215元約3200円ほど。
21:15綏芬河発7:58哈爾濱東着。
硬座(普通座席車)79元である。
1200円ほどである。硬臥(普通寝台車)が140元。約2100円ほど。
軟臥(一等寝台車)が215元約3200円ほど。
Posted by みなみやま at 2010年08月18日 01:58
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