2010年08月23日
動組車の駅弁は電子レンジで温める
ハルピンから北京まで動車組という中国の新幹線に乗った。これまで中国では、硬座とか硬臥にばかりお世話になっていた。たまには最先端の列車に乗ってみるか……と思ったのだ。
綏芬河を出た列車がハルピンに着いたのが朝だった。その足で切符売り場に向かった。動車組のラインには長い列ができていた。
「明天。至北京。D28」
紙に書いて渡す。動車組の列車番号は、すべてDが頭に着いている。
「明日の席はすべて満席です」
「はッ?」
ハルピン発北京行きは1日2便あった。それがすべて満席だというのだ。動車組は速いだけに運賃も高い。ひとり300元以上もする。この列に並ぶ前、僕らは駅前食堂でそばを食べた。打歯面と書かれた1杯5元のそばだった。その物価感覚からすると、とんでもなく高いのだ。しかしもう席がない。2日後を見てもらう。
「1等しか席がありません」
「はッ」
しかたなかった。僕らは351元、日本円で4500円ほどの1等の切符を買うしかなかった。
速かった。車内に速度が出る。平気で時速200キロを超え、240キロまで達する。ロシアのソヴィエツカヤ・カバニから、時速100キロにもならない列車に揺られてきた体が、このスピードに着いていかない。夏を迎えた黒龍江省の麦畑が、どんどんと通り過ぎていく。長春、四平、瀋陽北……と動車組は停まっていくが、停車時間は2分だけだ。クッションの効いた椅子は快適だが、しだいにすることがなくなってくる。車内を歩いても、皆、席に座っているだけだからつまらないのだ。
女性の車掌がメニューを手にやってきた。昼食の駅弁の注文をとっているようだった。メニューは写真付き。弁当は紅焼牛肉套餐。そこにヨーグルトか牛乳+ザーサイがつく。これで35元。日本円にすると450円。ハルピンの物価が馴染んできた身にはやはり高い。
そして届いた弁当は、冷凍を電子レンジで解凍したものだった。
これが最先端の中国らしい。通常の列車に乗ると、食堂車でつくった弁当を5元ほどで売りにくる。このほうがうまいのだ。それは中国人も同じだろう。人件費を考えても、まだ手づくりのほうが安い国なのだが、動車組ではそういうわけにいかないのだろう。新しいスタイルにしていくことは、この国の宿命である。これもひとつのゆがみなのだろうか。
夕方、北京に着いた。
北京の街は、珍しい豪雨に洗われていた。
雨に濡れながら、林立するビル群を呆然と見上げていた。
(北京。2010/7/9)
実はその後、日本にいったん帰国した。仕事の都合もあったが、北京から先の国々のビザをとる必要もあったのだ。昨日、最後の国のビザを受け取り、明日、北京に向かう。あとは一気にポルトガルまでの列車旅だ。
今後、このブログも不定期になることを思う。西へ、西へと進むことになるが、メールどころか「渡航の延期をお勧めします」エリアを通っていかなくてはならないからだ。電波が拾えたら、ブログをアップしていくことになる。
(東京。2010/8/19)
綏芬河を出た列車がハルピンに着いたのが朝だった。その足で切符売り場に向かった。動車組のラインには長い列ができていた。
「明天。至北京。D28」
紙に書いて渡す。動車組の列車番号は、すべてDが頭に着いている。
「明日の席はすべて満席です」
「はッ?」
ハルピン発北京行きは1日2便あった。それがすべて満席だというのだ。動車組は速いだけに運賃も高い。ひとり300元以上もする。この列に並ぶ前、僕らは駅前食堂でそばを食べた。打歯面と書かれた1杯5元のそばだった。その物価感覚からすると、とんでもなく高いのだ。しかしもう席がない。2日後を見てもらう。
「1等しか席がありません」
「はッ」
しかたなかった。僕らは351元、日本円で4500円ほどの1等の切符を買うしかなかった。
速かった。車内に速度が出る。平気で時速200キロを超え、240キロまで達する。ロシアのソヴィエツカヤ・カバニから、時速100キロにもならない列車に揺られてきた体が、このスピードに着いていかない。夏を迎えた黒龍江省の麦畑が、どんどんと通り過ぎていく。長春、四平、瀋陽北……と動車組は停まっていくが、停車時間は2分だけだ。クッションの効いた椅子は快適だが、しだいにすることがなくなってくる。車内を歩いても、皆、席に座っているだけだからつまらないのだ。
女性の車掌がメニューを手にやってきた。昼食の駅弁の注文をとっているようだった。メニューは写真付き。弁当は紅焼牛肉套餐。そこにヨーグルトか牛乳+ザーサイがつく。これで35元。日本円にすると450円。ハルピンの物価が馴染んできた身にはやはり高い。
そして届いた弁当は、冷凍を電子レンジで解凍したものだった。
これが最先端の中国らしい。通常の列車に乗ると、食堂車でつくった弁当を5元ほどで売りにくる。このほうがうまいのだ。それは中国人も同じだろう。人件費を考えても、まだ手づくりのほうが安い国なのだが、動車組ではそういうわけにいかないのだろう。新しいスタイルにしていくことは、この国の宿命である。これもひとつのゆがみなのだろうか。
夕方、北京に着いた。
北京の街は、珍しい豪雨に洗われていた。
雨に濡れながら、林立するビル群を呆然と見上げていた。
(北京。2010/7/9)
実はその後、日本にいったん帰国した。仕事の都合もあったが、北京から先の国々のビザをとる必要もあったのだ。昨日、最後の国のビザを受け取り、明日、北京に向かう。あとは一気にポルトガルまでの列車旅だ。
今後、このブログも不定期になることを思う。西へ、西へと進むことになるが、メールどころか「渡航の延期をお勧めします」エリアを通っていかなくてはならないからだ。電波が拾えたら、ブログをアップしていくことになる。
(東京。2010/8/19)
Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(1)
この記事へのコメント
「特快の車両は硬座も綺麗である。
瀋陽まで546キロ。5時間23分。それでも76元はお安い。」「「特快=T列車」だ。これまでは、D列車が出てくるまでは、最速の列車だった。」(新中国旅行記より)
中国での動車組の列車は、急速に広がっている。動車組には民工(季節労働者)は乗っていない。しかし、乗ってるのは庶民だ。ただ、行儀も悪い。一方客室乗務員のユニホームもこれまでとは違う。何か雰囲気が違うのだ。哈爾濱~北京までD列車一等座351元。高いか安いか?
それも今の中国だと思う。
北京に向かわれた後のようです。
次はノンストップでポルトガルまで。長い時間が必要ですね。
瀋陽まで546キロ。5時間23分。それでも76元はお安い。」「「特快=T列車」だ。これまでは、D列車が出てくるまでは、最速の列車だった。」(新中国旅行記より)
中国での動車組の列車は、急速に広がっている。動車組には民工(季節労働者)は乗っていない。しかし、乗ってるのは庶民だ。ただ、行儀も悪い。一方客室乗務員のユニホームもこれまでとは違う。何か雰囲気が違うのだ。哈爾濱~北京までD列車一等座351元。高いか安いか?
それも今の中国だと思う。
北京に向かわれた後のようです。
次はノンストップでポルトガルまで。長い時間が必要ですね。
Posted by みなみやま at 2010年08月24日 09:05
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