インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2010年09月13日

出入国に3時間半。越境の3大苦

 タシケントに着いた9月1日は、ウズベキスタンの独立記念日だった。
 独立から19年──。
 独立……といえば聞こえがいいが、それは旧ソ連の切捨てに近い政策だった。ロシアルーブルの貯金が消え、仕事もなくなった。すべてがゼロからスタートした19年だった。
 鉄道の整備もそのひとつだった。ソ連時代に鉄道が敷かれ、その後に独立という経緯を辿っているため、その路線が複雑なことになっている。
 タシケントからサマルカンドを通り、カザフスタンのベイネウを結ぶ線路は、途中、隣国のトルクメニスタンを通っている。この路線に乗るには、ウズベキスタンとカザフスタン以外に、トルクメニスタンのビザをとらなければいけなかった。
 そこでウズベキスタン領内だけを走る新しい線路を砂漠のなかに敷いた。僕らが乗った列車は、その路線を走った。
 徹底した乾燥地帯が広がっていた。ミスキン、トルツクルといった駅に停まっていったが、新しくできた路線だけに、町も小さい。ホームの物売りも少なかった。やがてヌクスに出、昔からある線路を北東に向かって粘り強く進んでいく。
 ウズベキスタン出国は午前2時だった。辛い時間帯である。中央アジアの出入国の審査は列車のなかで行われる。キャビンで待っていると、イミグレーションの職員が現れ、パスポートを回収していく。その後、荷物や車内検査が待っている。
 この時間がいちばん辛い。空港でもイミグレーションの前に立ち、スタンプを捺してもらう時間はいやなものだ。それがどこか別のところで行われ、30分以上も待つことになる。別に悪いことはしていないのだが、なにか難癖をつけられるのでは……と不安が広がる。
 加えて眠い。午前2時である。あたりは暗闇である。そのなかでじっと待たなくてはならないのだ。
 おしっこも我慢しなくてはいけない。中央アジアの列車のトイレは、昔風の垂れ流しスタイルだから、駅に停車中は、車掌がトイレの鍵を閉めてしまう。人間というものは、眠りから覚めたとき、おしっこがしたくなる。しかしトイレが使えないのだ。それがチェックの終わるまで、1時間半、2時間と続くのだ。
 パスポートチェックの緊張、眠気、おしっこ……これは鉄道での越境の3大苦と名づけることにした。
 僕もおしっこを我慢しながら、パスポートが返ってくるのをじっと待つ。やがて税関職員がやってくる。持参する現金と申告書との額をチェックする。一銭も使っていないようなことを書くと、鞄のなかまで綿密に調べはじめる。ときには、小金ほしさに難癖をつけてくる。なんとかそこをかわしていかなくてはならない。
 ウズベキスタン出国で1時間半。カザフスタン入国で2時間。終わったときには、太陽が昇りはじめていた。
 今回は幸い、ウズベキスタン出国とカザフスタン入国の間に、砂漠を2時間ほど列車は移動した。その間におしっこはすませることはできたのだが。
 その日、アトゥラウで列車を乗り換え、再び、越境の3大苦を味わって翌朝、ロシアのアストラハンに入った。タシケントから3泊4日。これから今年に入り、2回も列車爆破のテロが起きているダゲスタン共和国に入っていく。
       (アストラハン。2010/9/6)


Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。