2010年10月11日
紛争地帯の狭い回廊を列車は進む
アゼルバイジャンのバクー駅から、グルジアのトビリシ行きの列車に乗った。
バクー駅には始発駅の趣があった。線路は北のロシア方面、南のイラン方面、西のグルジア方面に延びている。しかし東側はカスピ海になってしまう。ヨーロッパから中央アジアをめざそうとすると、ここが終着駅である。
しかし線路はあっても、列車の運行は少なかった。北側のロシア方面はチェチェンやダゲスタンというテロ頻発地域になる。僕らもそのテロのとばっちりを受けていた。南に向かう線路はイラン手前でこと切れている。
西側エリアも政情不安を抱えていた。トビリシに向かう線路の南側は、地雷原が広がっていた。アルメニアがアゼルバイジャンに侵攻した一帯である。その向こうにはアゼルバイシャンの飛び地もある。北側は南オセチアなど、コーカサスの紛争地帯である。
バクーからグルジアに抜ける線路は、紛争地帯に挟まれた、狭い回廊に敷かれている。
しかし車内の空気は平穏だった。微妙なバランスが支配していることを忘れそうだった。イミグレーションや税関職員の顔つきや態度から威圧感も薄れていた。
国境を通過する時刻も午前中に設定されていた。乾燥地帯を抜け、ブドウ畑やオリーブ畑が車窓に広がっている。
「これが普通なんだよな」
緩やかな丘陵地帯を眺めながら呟いていた。
中央アジア、そしてカスピ海沿岸……。そこを覆う自然は過酷だった。国境を通過するときは無言の圧力があった。そういったストレスが車内から消えていた。
列車は予定通りにトビリシ駅に着いた。その足で切符売り場に並んだ。ここから南下し、アルメニアに入る。無駄だとわかっていたが、アルメニアとトルコの国境にいってみたかった。そこにはかつて、トルコからアルメニアに抜けていた鉄道の線路が残っているはずだった。いや、その線路は修復が進んでいるのだろうか。
ユーラシア大陸の東端から西の端までの列車旅──。それを思いついたのが、この国境だったのだ。
昨年、トルコとアルメニアの国交が樹立した。そしてこの国境を、国際列車が走ることになっていたのだ。
(トビリシ。2010/9/16)
バクー駅には始発駅の趣があった。線路は北のロシア方面、南のイラン方面、西のグルジア方面に延びている。しかし東側はカスピ海になってしまう。ヨーロッパから中央アジアをめざそうとすると、ここが終着駅である。
しかし線路はあっても、列車の運行は少なかった。北側のロシア方面はチェチェンやダゲスタンというテロ頻発地域になる。僕らもそのテロのとばっちりを受けていた。南に向かう線路はイラン手前でこと切れている。
西側エリアも政情不安を抱えていた。トビリシに向かう線路の南側は、地雷原が広がっていた。アルメニアがアゼルバイジャンに侵攻した一帯である。その向こうにはアゼルバイシャンの飛び地もある。北側は南オセチアなど、コーカサスの紛争地帯である。
バクーからグルジアに抜ける線路は、紛争地帯に挟まれた、狭い回廊に敷かれている。
しかし車内の空気は平穏だった。微妙なバランスが支配していることを忘れそうだった。イミグレーションや税関職員の顔つきや態度から威圧感も薄れていた。
国境を通過する時刻も午前中に設定されていた。乾燥地帯を抜け、ブドウ畑やオリーブ畑が車窓に広がっている。
「これが普通なんだよな」
緩やかな丘陵地帯を眺めながら呟いていた。
中央アジア、そしてカスピ海沿岸……。そこを覆う自然は過酷だった。国境を通過するときは無言の圧力があった。そういったストレスが車内から消えていた。
列車は予定通りにトビリシ駅に着いた。その足で切符売り場に並んだ。ここから南下し、アルメニアに入る。無駄だとわかっていたが、アルメニアとトルコの国境にいってみたかった。そこにはかつて、トルコからアルメニアに抜けていた鉄道の線路が残っているはずだった。いや、その線路は修復が進んでいるのだろうか。
ユーラシア大陸の東端から西の端までの列車旅──。それを思いついたのが、この国境だったのだ。
昨年、トルコとアルメニアの国交が樹立した。そしてこの国境を、国際列車が走ることになっていたのだ。
(トビリシ。2010/9/16)
Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(2)
この記事へのコメント
カスピ海から黒海をさえぎるカフカス山脈。東西に連なる山並み。
その南側にアゼルバイジャンとグルジアがあるんですね。
しかしよく地図を見ると、グルジアの黒海方面に出てもトルコへの鉄道は途切れている。
一度南下をして内陸国アルメニアへ向かうことになる。
果たして、鉄路でトルコに抜けられるのだろうか?
期待と不安が募ります。
現在はどのあたりに到着しているのだろうか?
ユーラシア大陸の東西横断鉄道の旅は無事にまだ続くのでしょうか?
その南側にアゼルバイジャンとグルジアがあるんですね。
しかしよく地図を見ると、グルジアの黒海方面に出てもトルコへの鉄道は途切れている。
一度南下をして内陸国アルメニアへ向かうことになる。
果たして、鉄路でトルコに抜けられるのだろうか?
期待と不安が募ります。
現在はどのあたりに到着しているのだろうか?
ユーラシア大陸の東西横断鉄道の旅は無事にまだ続くのでしょうか?
Posted by みなみやま at 2010年10月16日 09:14
日刊ゲンダイを、拝見させてもらい
ました。週末にのる電車のなかで、
記事をみて、とてもビックリしまし
た。列車の中で下川さんと、遭遇し
た感じでした。
ました。週末にのる電車のなかで、
記事をみて、とてもビックリしまし
た。列車の中で下川さんと、遭遇し
た感じでした。
Posted by 高島 浩 at 2010年10月28日 23:17
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