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ナムジャイブログ

2010年11月01日

2ヵ月前に列車は運休になっていた

 悩んでいた。グルジアのトビリシから先の鉄道ルートだった。
 アルメニア方面は閉ざされていた。トルコ方面への鉄道はあるが、国境まで。その先はトルコの鉄道駅まで陸路を進むしかなかった。ロシア方面は絶望的だった。線路は延びているのだが、グルジアからの独立を主張するアブハチア共和国を通らなければならず、列車は運行されていなかった。グルジアとロシアは緊張関係が続いている。国境に近づくこともできなかった。
 僕らは仕事の都合もあり、いったん日本に戻った。ルートの確認も必要だった。
 トビリシから国境のヴァレへの鉄道に乗ることにした。そこから陸路でトルコのカルスに出、トルコの鉄道に乗るルートである。ヴァレとカルス間の鉄道建設がはじまっているとも聞いた。
 2週間後、僕らは再びトビリシ駅の切符売り場の前に立った。
「ヴァレまで今日の切符を?」
「ありません」
「はッ? 満席?」
「いえ、列車がないんです」
「はッ?」
 2週間前、この切符売り場でアルメニアのギュムリ行きの切符を買った。そのとき、窓に時刻表が貼ってあり、そこにはヴァレという行き先と時刻まで出ていた。その時刻表はまだ貼ってある。
「それは古いものなんです」
「……」
「乗客が少ないんで、2ヵ月前に運行が中止されました」
 ポプラの木々がみごとに色づいていた。そのなかを、ミニバスは線路と絡むように進んでいく。ヴァレまでの線路は、貨物の運行はあるようで、駅には長い車列があった。だが客車はない。
 線路をぼんやり眺めるしかなかった。
 2ヵ月前ならこの線路を走っていた……。
 しかしグルジアの風景は息を呑むほどの秋一色である。紅葉の谷をミニバスは登っていく。終点のアハルツィヘからタクシーに乗り換えた。
 日が落ちた。ヴァレの村を過ぎ、タクシーは真っ暗な道を進んでいく。対向車は1台もない。道の舗装もなくなった。周りに人家はなく、灯りひとつ見えない。
 この先にグルジアとトルコの国境があるはずだ。しかしこの暗闇のなかに、イミグレーションは開いているのだろうか……。
        (トビリシ。2010/9/18)


Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(0)
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