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ナムジャイブログ

2010年12月20日

旅の代償とはいわないが

 長い旅が終わり、日本に戻ると、山のような仕事が待っていた。わかっていたことでもあるのだが、来年の3月までに6冊の本を書かなくてはならない。そのうち1冊は共著だから荷は軽いが、それ以外は……。
 無理である。
 本というものは、原稿を書いただけでは終わらない。初稿、再校とゲラのチェックが続き、写真や装丁の打ち合わせもある。原稿を書き終えてから2ヵ月は、そんな作業に追われることになる。
 やわらかな冬の陽射しをぼんやりと眺めながら、「あの締め切りは延びるだろうか」などと勝手な皮算用を繰り返す。
 ほとんど葉が落ちた木を見ているうちに、旅の精算が終わっていないことに気づいた。7月から11月にかけ、いったい何カ国を土地を踏んだのだろう。アゼルバイジャン、グルジア、アルメニア、トルコ、セルビア、クロアチア、スロベニア……。それぞれの国で使った金は多くないが、それぞれに通貨があるから、両替レートを計算し、領収書の金額をエクセルに打ち込んでいかなくてはならない。それは気が遠くなるような作業である。
 そんなとき、妻と次女がロンドンに行ってしまった。いま、長女がロンドンにいる。彼女に会いながら、クリスマスはパリという日程をたて、僕が長い旅で貯めたマイレージを使ってでかけてしまったのだ。
 掃除、洗濯、猫の世話……。
 新潮社の缶詰部屋に入っていた。締め切りが迫った物書きが入る部屋である。外界とは遮断され、ひたすら原稿用紙に向かう。ときおり、編集者が、「進んでますか」などと顔を見せるだけである。
 そこから帰還すると、玄関に猫が座って待っていた。
 はじめからわかっていたことだから、旅の代償などというのはおこがましい。原稿を書いて飯を食っているのだから、素直に受け止めなくてはいけないこともわかっている。
 ぐずぐずいわずに、原稿用紙を埋めていくしかない。
 自宅の近くに教会がある。今日は日曜日だから、礼拝があり、賛美歌が流れてくる。クリスマス前だから、その練習にも熱が入っている。
「主は来ませり」
 猫は日溜まりで眠り惚けている。
(2010/12/20)


Posted by 下川裕治 at 15:44│Comments(1)
この記事へのコメント
下川さん、

いつも楽しく拝見しております。
それにしましても、三月までに六冊とは殺人的な量ですね。
私は先ほど、目の前の原稿から逃げ、深夜の住宅街を散歩してまいりました。目的もなく深夜徘徊するのは不審者同然というよりは不審者そのもののようです。危うく職務質問されそうになりました。
当然ですが、帰宅しても原稿は一文字も進んでいません。何ということでしょう。
頑張ります。

駆けだしライター
Posted by 竜二 at 2010年12月21日 00:35
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