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ナムジャイブログ

2011年03月21日

フクシマから寒さが出ている

 バンコクにいる。
 タイ人に会うたびに地震の話を投げかけられる。皆、心配してくれている。
 ありがたいことだと思う。
 そして話は原発に移る。彼らは日本全域が危険だと思っている。放射能に汚染され、生きていくこともできない国になったような感覚で眺めている。
 タイのテレビを見る。レポーターが東京の山手線のホームに立ち、ガイガーカウンターのスイッチを入れ、放射能の数値を示す。
 レポーターは決死の覚悟で東京取材を進めているという緊迫感を伝えようとする。
 タイ政府は救援物資を運んだ飛行機で、日本にいるタイ人を本国に戻そうとした。危険な日本からタイ人を非難させようとしているのだ。
 タイには原発がない。
 無理もないことなのかもしれない。
 しかし彼らは、放射線や放射能に汚染された物質についての知識はほとんどない。原発という単語を知らない人も多い。すべてがフクシマになっている。
 それなりの知識があるタイ人に訊き、原発というタイ語を教えてもらった。単語は長いが、「ランシー」でだいたいの人がわかるのではないかといわれた。
 会うタイ人にこの単語を伝えてみた。しかしほとんどがわからなかった。そういうレベルの話なのだ。
 人のことはいえない。僕自身、原発については詳しくない。シーベルトという測定単位も今回、はじめて耳にした。放射線と放射能の違いもあやふやだ。原理に疎いから、どうしたら防ぐことができるのかという方法も受け売りにすぎない。しかしタイ人に比べたら若干の知識はある気がするが。
 今日、タクシーに乗った。運転手は僕が日本人とわかると、さっそく、地震、そしてフクシマに話になった。
「日本はすごく危険だ。ずっとバンコクにいたほうがいい」
「来週は帰るよ」
「嘘だろ。死に行くようなもんだろ」
「そんなことはないよ」
「あれだけ寒いんだから」
「………?」
「フクシマからどんどん寒さが出て、雪も降って、皆、死んじゃうんだろ」
「フクシマから寒さが出る?」
「そうさ」
 運転手は日本が寒いのは、福島の原発が原因だと思っているようだった。放射能は寒さのことだと思い込んでいる節がある。
「寒さとフクシマは関係ないよ」
「そんなことはない。テレビでそういっていたからな」
 いくら話しても無駄だと思った。
 タイ人は寒さを怖がる。一両日、バンコクは涼しい日が続いた。その原因もフクシマから発せられる寒さが原因だとまくしたてるのだった。
 笑い話ですますことができない状況がやはり切ない。


Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(3)
この記事へのコメント
なるほど、「寒さ」の捉え方が違うのですね。カンボジアでは、氷をタッコー(タック・コールド)と言うように、概念自体が、もともと無い。タイも同様なのでしょう。面白い問答でした。
Posted by じゅんちゃん at 2011年03月21日 13:56
フクシマから寒さが出ている???……だからタイ人って大好き!
Posted by としこちゃん at 2011年03月22日 15:04
政府の原子力安全委員会は、今回の福島の原発の事故に関し、「原発設計の想定が悪かった。想定について世界的に見直しがなされなければならない」とした。福島や茨城、栃木、群馬の4県産のホウレンソウなどが出荷制限された。他にも放射能を浴びた食品があるかもしれない。我々は原発のことを何一つ理解していなかった。テレビでは、死者の数を発表しているが、10年、20年先の事は、誰もわからない。日本国民は相当な覚悟が必要だ。
Posted by akya at 2011年03月23日 00:52
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