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ナムジャイブログ

2011年06月20日

重苦しさを感じるのは僕だけなのか

 この重苦しさはなんだろうか。
 バンコクからの飛行機が着いたとき、東京の空は重い梅雨雲に覆われていた。ときどき小雨がぱらついている。湿度も高い。その気候のせいだろうか。
 いや違う。これまでも、アジアから飛行機で東京に着いたとき、どこか精気のない日本人の表情に暗い気持ちになったことはよくあった。電車のなかでは、ただ携帯電話をいじる姿に不安さえ覚えた。
 しかし今回は、それとは違う重苦しさが街を包んでいた。行く先々、どこもエアコンが切られていた。梅雨どきの重い空気が漂っている。去年の今頃、人々は無意識のうちにエアコンのスイッチを入れていた。除湿が目的の人もいたかもしれない。
 今年は節電なのである。ある週刊誌によると、いまエアコンのスイッチを入れることは非国民らしい。翌日、事務所に出ると、新しく、いくつもの扇風機が置いてあった。
 暑くなり、電力消費量が供給量を上まわると、停電してしまうという説明である。
 しかしふと、思う。停電はそんなに大変なことなのだろうか。
 日本に戻る前日、バンコクで講座があった。僕は毎月、バンコクで日本語の書き方を教える講座をもっている。夕方の講座がはじまったとたん、停電になってしまった。しばらく待っても電気はつかない。学校が駐車場に停めてあった車のライトをつけ、教室内は少し明るくなった。そして懐中電灯。これで講座はなんとかできてしまった。受講生はバンコクに住んでいるから、停電といっても慌てることもない。
 バンコクと比べると、東京はもっと高度な街なのかもしれない。停電の被害はもっと大きいのだろう。しかし……。
 停電を警戒するあまり、なにか人々の間や社会に、重苦しいものが流れるほうが、僕は辛い。皆、なんの意識もせずに電気を使い、停電になって、「困った。困った」というほうが、なんだか気持ちがいい。計画性のないアジアにどっぷり浸かってきたからだ、といわれれば返す言葉もないが。
 節電で電力会社の売り上げは減る。それに対して電気料金が上がるとなれば、皆、納得はできないだろう。原発が絡んだ話だから、よけいに反発がでる。で、税金が投入されれば、結局は自分たちの負担に返ってくる。
 この問題の落としどころはどこなのだろう。
 いや、それよりも、この重苦しい空気が気にかかる。日本人はどうして、先のことばかり考えて、自分たちを苦しい立場に置いてしまうのだろうか……。いや、重苦しさを感じているのは僕だけなのか。
 原発処理の場当たり的な対応と、用意周到な節電対策。そのギャップは、僕のなかで埋まりそうもない。

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Posted by 下川裕治 at 14:04│Comments(1)
この記事へのコメント
「生き場」を探す日本人 (平凡社新書)を買ってしまいしました。買うつもりではなかったのに。
読み始めたところです。
惹かれる内容があります。
しかし、まだ感想はありません。
旅先であった東南アジアに長期滞在のヨーロッパ人を何人か思い出しました。夜、ゲストハウスで片言の英語で酒を飲みながら話をした記憶です。
ずいぶん違う気もします。それでも、海外長期滞在の日本人がいても不思議ではないのですね。
Posted by みなみやま at 2011年06月24日 21:28
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