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ナムジャイブログ

2011年07月18日

長くて辛い夏

 毎日、暑い。
 先週は台北にいた。台湾も高温で多湿だが、先週に限れば、台北のほうがはるかにすごしやすかった。
 今年の日本の暑さは異質でもある。辛さを伴っている。節電である。東京は節電モードに入っているところが多く、暑さからの逃げ場がない。去年は店に入って、ほっと汗を拭うことがあったが、今年は店内の設定温度を上げていて、「涼しいッ」という第一声がない。
 節電は日本のあらゆるところで実施されている。役所は始業時間を早め、工場は休日をずらすなどの工夫をしている。甲子園の高校野球も試合時間をずらすのだという。なでしこジャパンがワールドカップで優勝したが、その決勝戦は日本時間の午前3時からだった。もし昼間の時間帯にあたったら、悩む人もいたかもしれない。日本人は本当にまじめである。政府や東京電力が設定した節電を、暑さを我慢しながら律儀に守る。
 しかしここにきて、「本当に節電が必要なのか」という議論が湧き起こっている。
 節電の話は、最初から胡散臭かった。たしかに震災直後、電力の供給量は減ったのかもしれない。しかしその後、水力や火力の発電量を増やしたり、ほかの地域から電力をまわしてもらうなどの融通のなかで、供給量は増えた。それだけでは不安だという論理で節電になったのだが、そこには、日本の電力会社の文脈が横たわっている気がする。原発がなければこれだけ大変なのだ、という演出の臭いさえする。
 原発を除いた日本の総発電量は、昨年のピーク時をまかなえる量だという。日本は西と東で周波数が違うから簡単にはいかないが、総量としては足りている。工場などが自家発電などで発電し、余った電力があるが、それを東京電力が買おうとしているわけでもない。長期には無理だが、水力発電量をさらに増やすことも可能だという。
 東京電力と政府が描いたシナリオは、原発を除いた発電量を増やしてまかなうのではなく、節電で夏を乗り切ろうという発想だった。
 そこには反原発派への牽制もあったといわれる。反原発派は環境保護派と重なり合う。節電には馴染みやすい。しかし節電の背後には、「原発がなければこれだけ大変」という論理が組み込まれている。つまりどちらにも進めないという隘路を用意したというのだ。こういうシナリオづくりは、官僚の得意技でもある。そう、日本の電力会社から臭ってくるのは、民間企業のそれではなく、官僚の臭いなのだ。
 しかしそこにひとつの誤算が生まれる。日本人や日本の企業が、あまりに真面目に節電を実行してしてしまったのだ。
 工場のなかには、節電を守る一方で、海外移転を視野に入れはじめているという。安い安定した電力を海外に求めようとしているのだ。
 今年の夏の暑さを辛くさせているのは、見え隠れする策動である。



Posted by 下川裕治 at 14:19│Comments(0)
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