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ナムジャイブログ

2011年11月21日

娘の保険で病院に泊まる

 バングラデシュのコックスバザールの滞在最終日、20歳の娘が体調を壊してしまった。吐き気と下痢。熱も少しある。騙し騙しといった感じでバンコクに戻り、スワンナプーム空港の診療室に出向いた。点滴を受け、病室で休んだ。
「病状が治ってきたら帰国しても……」
 という医師の話だったが、2時間後、娘の体調は戻らなかった。血圧の低い。
「入院ですね」
 医師は即決した。診療所はサミティベート病院が運営していた。診療所のスタッフが、その夜に予約が入っていた飛行機をキャンセル。男性スタッフが現れ、看護婦と一緒に停まっていた救急車に乗り込んだ。タイとは思えないほどスピーディーにことは運んだ。
 サミティベート病院と聞いて、スクムヴィット通りかと思ったが、空港からやけに近い。窓から眺める風景も違う。案内を見ると、サミティベート・シーナカリン病院だとわかった。
 いくつかの検査が終わり、娘は14階の病室に移った。広い個室だった。
 2時間おきに体温や血圧を測りにやってくる看護婦さんに、「今晩、僕は……」と訊くと、ソファーベッドを指差された。
「メーバーンにセッティングしてくれるように頼みますから」
「メーバーン?」
 この病院には、病人やその家族の世話をしてくれるお手伝いさんまでいた。
 病院の周りにはなにもなかった。敷地の外に出ても、食堂はなかった。1階のコンビニでカップヌードルを買い、病室にある湯沸かし器のスイッチを入れた。部屋にはなんでもあった。冷蔵庫、電子レンジ、ホテルにあるコーヒーや紅茶のセット……。広いトイレとシャワー室。アメニティも高級品が並んでいる。ネットもつながる。ここがバンコクの一画という実感はなく、まるでリゾートにいるようだった。この種の病院に見舞いに出向くことはあったが、泊まってみると、この高級感に唸ってしまう。
 幸い、娘は翌日には快方に向かった。検査の結果も陰性だった。医師の説明では、環境や食べ物の違いのストレスや過労が原因のようだった。その日から病室が急に賑やかになった。娘がさっぱりとした日本食を希望し、知人のタイ人に頼んだところ、話が一気に広まってしまった。次々に知人が現れた。家が水に浸かっているというのに、見舞いに来てくれたタイ人もいた。
 多くがこの種の高級病院に戸惑っていた。部屋の設備にひとつ、ひとつ声をあげる。看護婦に入院代を聞く知人もいた。
 やっとバンコクにいる気分になった。
「明日、退院だと思うんだけど、今晩、どうしようかと思って」
「ここに泊まりなよ。エアコンは使い放題。シャワーにお湯も出る。部屋の掃除も1日2回もしてくれる」
「そうだよな」
 バンコクで泊まるホテルより快適だった。
 費用はすべて旅行保険のキャッシュレス。退院時に一応、請求書が渡されたが、その金額は2泊3日で3万4000バーツほどだった。日本円にすると9万円弱。救急車は1500バーツだった。
 保険加入者は娘である。言葉や病気への不安はあっただろうが、父親がそこにちゃっかり泊まっていいのだろうか。ちょっと後ろめたい2泊3日だった。


Posted by 下川裕治 at 14:40│Comments(3)
この記事へのコメント
経験あるある.思い出しました.業務引継ぎで来タイしたとき,しつっこい下痢で悩まされ,どうも半焼けの魚が原因だろうと医師が言う.サミティベート病院に入院.2時間置きの排尿・排ウンチの量のチェック.冷蔵庫の中味も一杯あるある.唯一の苦情で「ビールがはいっていない」といったら笑い飛ばされた.
Posted by maijuneaug at 2011年11月22日 11:56
1998年に下川さんが家族でタイに語学留学する本を読みました。

今年、12年ぶりに下川さんのアジアのバス旅行や鉄道旅行の本を読み、下川さんの近況が気になったのでこのブログを拝見しました。

あの娘さんももう二十歳になったと知り、なつかしく思いました。
Posted by りゅうげん at 2011年12月12日 10:27
僕もたった今、「バンコク子連れ留学」を読み終わりました。
多分、3回くらいこの本を読んでいます。
それで、下川裕治の娘で検索してこのブログに来ました。
「ヤシノ木幼稚園」はまだあるのでしょうか?
Posted by なお at 2012年01月05日 21:21
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