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ナムジャイブログ

2012年01月16日

台湾の総統選挙の夜

 総統選挙が終わった。昨夜はずっとテレビの開票速報を見続けていた。午後4時に投票が締め切られ、刻々と得票数が増えていく。国民党の馬英九と民進党の蔡英文の総統選である。
 はじめは僅差の様相だったが、票が開くうちに馬英九が少しずつリードしていった。10万票が開き、差は30万票になり……。
 各テレビ局は当確宣言に慎重だったが、馬英九の勝利は確実に思えた。
 もし民進党の蔡英文が勝ちそうだったら、板橋にある民進党本部前に行こうかとも思っていた。しかしそんな状況にはなりそうもなかった。
 最終的には、80万票ほどの差がついた。
 馬英九が689万1139票、蔡英文が609万3578票。接戦でもなかった。国民党の完全な勝利だった。
 台湾の選挙は、どこかアメリカの大統領選を思わせる。総統を直接選ぶスタイル。日本の選挙と違い、盛りあがりが違う。
 投票日前日の夜、板橋駅に近い競技場にいた。民進党の最後の集会が開かれていた。2~3万人の支持者が競技場を埋めた。台湾初の女性総統候補。最後には李登輝も登場し、会場は盛りあがった。
 競技場のスタンドに座り、その光景をぼんやり見ていた。僕は中国語がわからない。ステージに立つ人々の演説の意味はほとんどわからない。しかし歓声が響き、旗やペンライトが揺れる会場を包む熱気のなかに身を置くと不思議な高揚感があった。会場ではしきりと、「我愛台湾」が連呼されていた。
 生活を優先させるか、台湾人の意識を選ぶか……。そういう選挙だった気がする。
 国民党政権になり、中国との親密度が深まっていった。中国人は台湾に観光で訪れることが可能になった。その数は年間、160万人にも達している。中国との貿易も自由度を増してゆく。中国人の資金力に支えられ、台湾の景気は悪くない。この状況を維持するなら、国民党という選択になる。
 しかし台湾人としての誇りもある。有名な観光地は中国人で埋まる。その光景に台湾人は顔をしかめる。マナーがひどい、と吐き捨てるようにいう。
 その先に心を痛める台湾人もいる。いまはこのレベルで終わっているが、やがて、不動産への中国人の投資が許され、台湾は一気に中国化していく……と。
 生活を考えれば国民党になる。台湾人の意識を考えれば民進党に傾く。
 最終的には、台湾人は生活を選んだ。
 中国と距離を置こうとするのは、アジアでは、ひとつの流れである。ときに中国の手法は強引さが浮き立ってしまうからだ。
 しかし台湾はその流れに乗らなかった。いや、同じ民族として、中国とうまくやっていく自信が台湾人にはあるのだろうか。



Posted by 下川裕治 at 13:44│Comments(1)
この記事へのコメント
こんにちは、下川さん。アサヒの「週末アジア旅」も拝読しました。2年前に行ったマレーの暑さや匂いがよみがえりました! マレーでは戦前の日本人と金子の足跡をたどってきました。白黒、アナログで撮った写真、よかったら見てください。
http://www.miyukiokuyama.com/pages/Z1.html
次号をとても楽しみにしています。
Posted by 奥山美由紀 at 2012年01月21日 18:55
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