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ナムジャイブログ

2012年03月19日

「宮迫です」で笑えない

 どういう旅人に映っているのだろうか。改めて考え込んでしまった。
 いまカンボジアのシュムリアップにいる。3日前、タイのバンコクから列車とバスでやってきた。僕にとっては、はじめてのルートではない。勝手知ったる……というほどでもないが、ある程度はわかる。
 しかしタイのアランヤプラテートからポイペトに抜ける国境は、そのシステムが変わっていた。カンボジアに入国すると、無料バスが待っていて、バスターミナルまで送るスタイルになっていた。
 シュムリアップに着いて、この無料バスに乗らなくてもいいことがわかった。が、通過する旅行者は皆、無料バスに乗っていく。こういうスタイルになったのか、と僕もバスの席についた。無料だから気も楽だった。
 立派なバスターミナルができていた。相乗りタクシーもあったが、客が集まらず、若い旅行者たちと一緒に、そこからシュムリアップに向かうバスに乗った。9ドルだった。
 乗客のなかに5人ほどの日本人の大学生がいた。ゲストハウスはどこにしようか……とガイドブックを読みながら話していた。
 途中、30分ほどの休憩があった。そこに何人かの子供たちがいて、旅行者に話しかけてくる。ひとりの女の子が、日本人の学生たちの前でこういった。
「宮迫です」
 大ウケだった。学生たちは、「宮迫です」の女の子に向けて何回もシャッターを押す。
 しかし僕は笑えなかった。いったいどれほどの国の子供たちの口から、このギャグを聞いてきただろうか。いまさら笑えというのだろうか。
 休憩が終わり、皆、バスに乗り込んだ。学生のひとりが、話しかけてきた。僕の隣にいたイギリス人と席を替わったらしい。しかし言葉は英語だった。
 そこで日本語で返せばよかったのかもしれない。しかし「宮迫です」に笑いもせずに立っていた僕である。僕は英語で返事をした。
 彼らは再び、「宮迫です」で盛り上がり、ゲストハウスをどこにするか話している。
 ここで口を開いたら、訳知り顔で、シュムリアップの話をすることになるのだろう、と思った。そういう自分が嫌だった。
 アジアを旅することが多い。旅の知識は多くなっていく。しかしそれ話すことが、最近は鬱陶しい。57歳という歳がいけないのかもしれない。
 どんどん気難しそうな旅行者になってきている気がする。なぜ、軽い旅話ができないのだろう。
 バスのなかで黙っている僕を学生たちはどう思ったのだろうか。



Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(4)
この記事へのコメント
はじめまして。僕は旅先で日本の話題、アジアの国々の現状を語っている若者を見るとイラつきます。  場所が日本ならそうは思わないのでしょうが。 
Posted by かわぎし at 2012年03月20日 14:34
ずっとアジアだというのが原因のようにも思えます。
スーダン、エチオピア以来アフリカへは行くつもりがないの
でしょうか?
キューバ以外ラテンアメリカには
興味がないのでしょうか?
結局このまま南米大陸の土を踏ま
ないのでしょうか?
この辺まで来ると日本人大学生には
今の時代だとあまり会いません。
Posted by GAHK at 2012年03月21日 00:45
いつも本を読ませてもらっています。

話しかけてきた学生がなんと言ったのか分からないですが、
学生グループって会話を切らせないために、
ひとつのネタで延々と話してるものじゃないでしょうか。

それにしても下川さんはアジアを長年旅しながら、本当に日本人らしいお方ですね。
そういう状況では上から偉そうに、若いやつに
知識を与えてやろうという態度で
話しだす人もいると思います。
Posted by coslmoil at 2012年04月07日 05:37
気にし過ぎでは?

僕もまだカンボジアにポルポト派がいた頃、国境が開いて凸凹の水溜りだらけの道を旅したことのある同年代56歳です。

若者と仲良くしたければ、一緒に笑えばいいし、仲良くするのが面倒なら知らん顔すればいい。それだけでしょ?

すべて自分が決めてやっていること。誰か別の人や日本の常識で判断する必要無いですよね。その時の気分でお好きにどうぞ!
Posted by 池田 眞英 at 2015年01月26日 18:35
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