2012年05月14日
僕とアジアを結ぶ重慶マンション
人にはそれぞれ、旅のスタイルというものがある。多くの人は、若いときの旅でそれが決められていく。
たとえば宿。僕は事前に宿を決めることが苦手だ。というか、好きではない。宿は現地で決めればいいと思っている。
「宿を探すのが大変じゃないですか」
と発想する人は、自分にとっての宿というイメージがある人だろう。自分の感性に合った宿を、値段を考慮しながら探すのはたしかに大変だ。
しかし僕には、宿についてのイメージがない。昔から貧しい旅ばかりしてきたから、受け入れる宿の許容範囲が海のように広くなってしまった。
こういうタイプは、宿を事前に決めることは面倒なことだ。その宿に行かなくてはならないからだ。
いま香港にいる。重慶マンションに泊まっている。なじみのゲストハウスである
昨夜、ひとりの日本人と会った。「どちらに泊まっているのか」と聞かれ、重慶マンションと答えながら、ここ20数年、香港で泊まった宿のほとんどは、重慶マンションであることに気がついた。
重慶マンションは実に都合がいい宿だった。予約というものが必要なかった。なじみのゲストハウスがいっぱいでも、別のゲストハウスを探し出してくれた。泊まることができないということがなかったのだ。
しかし最近の重慶マンションは混みあっている。アフリカ人やインド人の長期滞在者が多いという理由もある。しかし宿のオーナーはこんなことをいった。
「うちもやっているけど、インターネット予約が盛んになって、本来なら重慶マンションのゲストハウスを避けるような人も泊まるようになったんだ。インターネットはすごいけど、昔からのなじみのお客さんが泊まることができなくなっちゃってね」
香港のホテルは高い。安いところを検索していくと、重慶マンションに行き着いてしまうらしい。たしかにスカート姿でスーツケースを引いた女性たちを最近の重慶マンションでは見かける。狭く、けっしてきれいとはいえない部屋のドアを開けたとき、どんな顔をするのだろう、と心配になってしまう女性たちだ。
インターネットには、こんな書き込みも多いという。
「予約した宿とは違う宿に連れていかれた」
それが重慶マンションのよさだった。必ず部屋を確保してくれたゲストハウスのオーナー。彼らのホスピタリティは、インターネット予約の時代では、よくないことらしい。
宿を決めない僕のような旅行者は少数派であることはわかる。いまの予約システムを否定もしない。
しかし、Tシャツに汗をにじませながら、部屋を探してくれた香港人の背中から、
「旅とはいろんな人に助けられてやっと実現するもの」
ということを学んだ。そのなかで生まれてきた人間関係が、僕とアジアを結んでいる。それもまた事実である。
たとえば宿。僕は事前に宿を決めることが苦手だ。というか、好きではない。宿は現地で決めればいいと思っている。
「宿を探すのが大変じゃないですか」
と発想する人は、自分にとっての宿というイメージがある人だろう。自分の感性に合った宿を、値段を考慮しながら探すのはたしかに大変だ。
しかし僕には、宿についてのイメージがない。昔から貧しい旅ばかりしてきたから、受け入れる宿の許容範囲が海のように広くなってしまった。
こういうタイプは、宿を事前に決めることは面倒なことだ。その宿に行かなくてはならないからだ。
いま香港にいる。重慶マンションに泊まっている。なじみのゲストハウスである
昨夜、ひとりの日本人と会った。「どちらに泊まっているのか」と聞かれ、重慶マンションと答えながら、ここ20数年、香港で泊まった宿のほとんどは、重慶マンションであることに気がついた。
重慶マンションは実に都合がいい宿だった。予約というものが必要なかった。なじみのゲストハウスがいっぱいでも、別のゲストハウスを探し出してくれた。泊まることができないということがなかったのだ。
しかし最近の重慶マンションは混みあっている。アフリカ人やインド人の長期滞在者が多いという理由もある。しかし宿のオーナーはこんなことをいった。
「うちもやっているけど、インターネット予約が盛んになって、本来なら重慶マンションのゲストハウスを避けるような人も泊まるようになったんだ。インターネットはすごいけど、昔からのなじみのお客さんが泊まることができなくなっちゃってね」
香港のホテルは高い。安いところを検索していくと、重慶マンションに行き着いてしまうらしい。たしかにスカート姿でスーツケースを引いた女性たちを最近の重慶マンションでは見かける。狭く、けっしてきれいとはいえない部屋のドアを開けたとき、どんな顔をするのだろう、と心配になってしまう女性たちだ。
インターネットには、こんな書き込みも多いという。
「予約した宿とは違う宿に連れていかれた」
それが重慶マンションのよさだった。必ず部屋を確保してくれたゲストハウスのオーナー。彼らのホスピタリティは、インターネット予約の時代では、よくないことらしい。
宿を決めない僕のような旅行者は少数派であることはわかる。いまの予約システムを否定もしない。
しかし、Tシャツに汗をにじませながら、部屋を探してくれた香港人の背中から、
「旅とはいろんな人に助けられてやっと実現するもの」
ということを学んだ。そのなかで生まれてきた人間関係が、僕とアジアを結んでいる。それもまた事実である。
Posted by 下川裕治 at 17:45│Comments(2)
この記事へのコメント
下川さま
仲村さんの新書、まさに綱渡りで校了しました。
どうも沖縄の「言論界」はなかなか風通しがよくないようですね。
どうぞ、応援してください。
本書について、ぼそぼそつぶやいてください。
仲村さんの新書、まさに綱渡りで校了しました。
どうも沖縄の「言論界」はなかなか風通しがよくないようですね。
どうぞ、応援してください。
本書について、ぼそぼそつぶやいてください。
Posted by 谷子 at 2012年05月16日 04:04
最近はネット予約で安易な旅をしてしまうようになったが、初めての海外、しかも予約無しのインドは鮮明に思い出す・・
リキシャの客引きに連れられ紹介された宿は意外に清潔な部屋。エアコンも無く、窓はガラスも無くて壊れていたけれど室温35度の中で寝ていた時は旅をしているな~と感じました
リキシャの客引きに連れられ紹介された宿は意外に清潔な部屋。エアコンも無く、窓はガラスも無くて壊れていたけれど室温35度の中で寝ていた時は旅をしているな~と感じました
Posted by 僕もそう思う at 2012年05月16日 09:20
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