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ナムジャイブログ

2012年07月09日

「おいしさ」が飽きを生む?

 忙しい。毎日、午前中に事務所に向かい、帰宅は翌朝になってしまう。その間、ずっと事務所の机にへばりついている。いったい1日、どれだけの文字を打っているのだろう。
 食事をとる時間がないわけではない。しかしその余裕がない。いつもコンビニで買うパンかおにぎりになってしまう。そんな日々がもう数日続いている。
 事務所の周りには、ファミリーマート、セブンイレブン、ローソンという3軒のコンビニがある。昼となく、夜となく、その3軒をうろついている。
 そういう日々が3日ぐらい続くと、さすがに、コンビニに並んでいるものに飽きてきてしまう。腹が減り、1軒のコンビニに入る。しかしその商品棚を目にしたとたん、食欲が霧散していく。店内をぐるりとまわっても、食べたいものが思いつかない。ホッキョクグマのように、店内をぐるぐる動くだけで、買う物が決まらないのだ。
 どうしてコンビニに並んでいる食べ物は、こんなに早く飽きるのだろ。
 店の隅にバナナが置いてあった。1本98円もした。しかしサンドイッチにも飽き、菓子パンにも飽きた胃には妙に新鮮だった。
 1本のバナナを買った。
 おいしかった。
 それから毎日、バナナばかり食べている。ぼんやりバナナの皮を剥きながら、不思議に思う。
「なぜ、バナナは飽きないんだろう」
 人が知恵を絞り、つくりあげた食べ物はすぐに飽きてしまうというのに。
 それは「媚び」の問題かもしれない。コンビニに並ぶ食品は、おそらく何回も試食を繰り返している。人が口にし、「おいしい」と思う味を追い求める。それが売れ行きを左右する。しかしバナナは、人に食べられるために実ったのではない。新しいバナナを育てるために実をつけたのだ。
 人に媚びた味はすぐに飽きる。しかし、人に媚びない味には飽きない。そんな気もするのだが。
 僕はタイにしばしば出かける。あるとき、日本からやってきた知人と歩いていた。果物を売る屋台が見えた。
「パイナップルでも食べましょうか」
 知人の表情が少し曇った。
「果物はほとんど食べないんだ」
 それからしばらく、出会う日本人の男性に訊き続けた。果物は食べますか? 5~6人にひとりぐらい、「まず食べない」という答が返ってきた。
 彼らの舌は、果物に反応しない?
 そんなことはないだろう。飽きたわけでもない。しかし彼らの食指は動かない。
 この謎はまだ解けていない。


Posted by 下川裕治 at 09:16│Comments(0)
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