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ナムジャイブログ

2012年08月13日

山はなにも変わらない

 久しぶりに山に登った。本当に久しぶりである。指折り数えてみると、5年も登山靴を履いていなかった。それだけ仕事に追われていたのだろうか。その記憶すらおぼろげなのだが。
 北アルプスの爺ヶ岳への山道を登りはじめた。うまくいけば鹿島槍まで……という思いもあった。天気はよかった。
 高校時代、山岳部で山に登っていた。当時の感覚では、爺ヶ岳は初級の山で、鼻歌気分で登る山だった。しかし、しばらく山から遠ざかっている。山登りの辛さや怖さは、ある程度わかっているつもりだ。
 いや、そういう冷静な判断で爺ヶ岳を選んだわけではない。ちょっと怖かったのだ。果たして、前のように登ることができるだろうか。自信がなかった。
 とっつきは順調だった。爺ヶ岳への道は、大町から車で小1時間の扇沢からはじまっている。最初から尾根道になる。急な登り坂が続く。大量の汗が出た。驚くほどの量の汗が額や首筋を伝った。首に巻いたタオルを絞ると、水滴が滴るほどだった。シャツは汗でぐっしょりと濡れていた。
「こんなに汗が出ただろうか」
 これまでの山を思い出してみる。記憶にない汗だった。
 2時間ほど登った頃だったろうか。昨夜、稜線の種池山荘に泊まった登山客が次々に降りてきた。人のことはいえないが、最近の山は中高年一色である。彼らは10人から20人程度の集団登山。山道は基本的に登る人優先というルールがあるから、彼らが待ってくれるのだが、その距離が長い。こちらも悪いと思うから、つい急いで登ってしまう。
 そんなことを繰り返しているうちに、急に寒気がしてきた。なにか体から血が引いていくような感覚である。立っているのも辛くなってきた。山道の途中にうずくまるように腰をおろした。
「バテたってことだろうか」
 下る登山客から、「大丈夫ですか」と声をかけられたから、顔色もよくなかったのかもしれない。水を飲み、チーズを食べ、梅干しを口に含む。体力が落ちたっていうことだろうか。いや体重? 僕はここ10年の間に5キロほど太った。汗だろうか。大量の汗をかいたことで、体内の電解質のバランスが一気に崩れてしまった? さまざまな思いが脳裡を駆けめぐった。
 下山も考えた。
 30分ぐらいそこで休んでいただろうか。気分もよくなってきた。もう少し登り、体調がまた悪くなったら下るつもりでザックを背負った。休み休み登った。なんとか種池山荘まで登った。3時間30分とコースタイムが登山口に書かれていた。僕は5時間もかかってしまった。山荘の前のテラスで、後立山の稜線を眺める。正面に針ノ木岳の雪渓。山はなにも変わっていない。しかし登る人々が中高年に染まり、僕は途中でバテそうになってしまった。もう少し痩せろってことか。夕日に染まる稜線を見ながら呟いていた。


Posted by 下川裕治 at 17:45│Comments(0)
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