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ナムジャイブログ

2012年08月20日

こんな旅しかできない

 自分が特別、ストイックな人間だとは思っていない。苦しいことより、楽しいことを選ぶし、だらだらとすごす時間も多い。オリンピックに出場する選手のように、日々、体を鍛え、トレーニングを積み、4年に1回の大会に備えるような日々は辛いだろうなぁ……とひとりごちる。
 しかし人からこういわれることが多い。
「下川さんの旅ってストイックですよね」
 最近、発売になった『週末アジアでちょっと幸せ』(朝日文庫)を読んだ読者の口からも、よくいわれる。
 この本は週末にアジアに出向く紀行なのだが、短い日数のなかで、いかに充実した旅をすごすかといった内容ではない。買い物や名物料理や、マッサージといったものもほとんど登場しない。週末にマレーシアのバトゥパハに向かい、金子光晴の世界に浸る。その地名が気に入って、中国の星星峡をめざす。バンコクでは、運河ボートに揺られる……。
「はじめに」でもこう書いている。
──食べ物の話もあまりしない。食べる場所は、いつもその場で決めているし、だいたい味覚というものは個人差がありすぎる。腹が減っていればなんでもおいしい。買い物にも興味はない。マッサージも嫌いだ。人に触られるぐらいなら、自分でストレッチ体操をする。
 こういう文章からストイックな旅人と思われてしまうのだろうか。たしかに筆致も弾けるほど明るくはない。
 しかし僕はしっかりと楽しんでいる。その内容が、旅行パンフレットやガイドブックと違うだけだ。
 人にはそれぞれ、旅の楽しみ方がある。どんな旅をしようが自由である。しかし旅の情報というものは、えてして観光の定番をつくりあげていく。そこにはつくりあげられた定番と口コミ式に広まった定番がある。世界遺産などは、国際機関は旅の定番を認定しているようなものだ。
「シュムリアップへ行ってアンコールワットは見ないんですか?」
「台北に行って、鼎泰豊の小籠包を食べないんですか?」
 定番をはずしてしまう旅行者は変人扱いされてしまう。どこかストイックな旅人にも映ってしまうのだ。
 定番観光を目の敵にしているわけではない。実際、僕はアンコールワットも鼎泰豊の小籠包も知っている。家族で旅をすると、やはりはずせない場所になるからだ。
 しかしひとりの旅は違う。僕には別の旅がある。そういう旅ばかりを繰り返してきた。いいとか、悪いというレベルの話ではない。僕はそういう旅しかできないし、それでなければ、「ちょっと幸せ」にはなれないのだ。
 胸を張って伝えられるような旅ではない。
 しかし僕はこんな旅しかできない。


Posted by 下川裕治 at 15:41│Comments(1)
この記事へのコメント
下川さんにストイックと言った方は、実はマゾと言いたかったのでは?
私もそんな快楽が好きです。。
Posted by tonny at 2014年05月18日 21:08
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