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ナムジャイブログ

2012年10月01日

サイレンで宣伝?

 バンコクの宿にこもっている。原稿を書き続けている。
 これはバンコクのホテルに限ったことではないが、室内の照明が暗い。数年前から、本の原稿のように長いものは、手書き原稿に戻ってしまった。パソコンのように、モニターが明るくないわけで、照明が暗いと、原稿を書くことが辛い。最近の僕は、電気スタンドを持ち歩いている。
 締め切りは9月末である。しかしまだ160枚ほどしか仕上がっていない。本1冊は、400字詰めの原稿用紙で300枚ほどが必要になってくる。半分をようやく超えたところだ。どう編集者に謝ろうか……。そんなことを考えながら部屋にこもっている。
 なかなか進まない原稿用紙を前にしていると、外から届く音がやたら気になる。最近のバンコクは、救急車のサイレンがやけに耳につくような気がする。
 昔、新聞記者をやっていたから、このサイレン音には体が反応してしまう。支局にいたときは、夜、知人と酒を飲んでいても、この音を耳にすると、現場に飛んでいかなくてはならなかった。
 サイレン音で思い出す街がある。
 ロサンゼルスだ。もう20年近く前、ロサンゼルスのダウンタウンにある安宿に泊まっていたことがあった。近くに警察署があったのかはわからないが、日が落ちると、パトカーのサイレン音がひっきりなしに響いた。
 あの頃のロサンゼルスの治安はよくなかった。深夜になっても、サイレンのうなり声が部屋に響く。こうしてアメリカの治安を教えられた記憶がある。
 バンコクもサイレンの音が頻繁に響く街になってしまったのだろうか。
 しかし街で見るのは救急車ばかりである。パトカーがサイレンを鳴らして走っているところは見た記憶がほとんどない。そんな話を知人としていた。
「そうだよな。タイの警察って、だいたいバイクでやってくる。パトカーは検問の場所か要人が移動するときに見かける程度だよな」
「現場にパトカーでいくことって、あまりないんじゃない。現場に先に着くのは、例の慈善団体の車だしね」
「でも、最近、サイレンを鳴らして走る救急車が多くない?」
「そう、あれだいたい、治療費の高い私立病院の車なんだよな」
「あの救急車、けっこう料金が高いって話ですよ。タイ人はそれを知ってるから、急病人もタクシーで運ぶもんな」
「じゃあ、皆、豊かになって、高い救急車で運ぶようになったってこと?」
「さあ……。でもね、あれ、私立病院の宣伝の手段だっていう話も聞いたことがある。サイレンを鳴らすと、皆、見るじゃない」
 なんだか治安とは無縁の、タイらしい話に流れていく。タイはやはり、そんな国のような気もする。



Posted by 下川裕治 at 15:01│Comments(0)
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