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ナムジャイブログ

2013年02月18日

成田空港のトイレに入るとき

 書店に入るとトイレに行きたくなる……という、ちょっと知られた話がある。オシッコではない。大きいほうの話である。本が発する匂いが、肛門の筋肉を刺激してしまうのだろうか。
 ただ僕は書店で催したことはない。本の匂いに反応しない鈍感な男ということかもしれない。
 僕が催す場所──。
 飛行機が到着した成田空港である。
 飛行機を降りたときは、トイレに行く人が多い。飛行機を降りて最初にあるトイレには長い列ができる。人間というものは、やはり乗り物のなかではゆっくりと用を足すことができないらしい。
 その伝でいえば、僕が成田空港で催すというのは、あたり前のように聞こえるかもしれない。しかしその感覚はちょっと違う。
 たとえば上海の空港に到着する。あるいはバンコク。僕はトイレに行くことはない。いってもオシッコぐらいだろうか。これだけ、飛行機や列車に乗る旅を続けていると、乗り物のなかでもゆっくり……という体質になってしまった気もする。
 たしかに海外のトイレは違う。とくに大国といわれる国のトイレはどこか殺伐としているものだ。アメリカ、中国、ロシア……。小国のトイレのような気遣いがない。しかし用を足すという目的を満たすという上で、とりたて問題があるわけではない。
 成田空港でのトイレは、そういうこととは別のことのように思うのだ。
 成田空港のトイレには、なんともいえない安心感がある。それは便器の微妙な高さなのだろうか。あるいは尻の当たる部分の湾曲と感触のような気もする。いろいろ考えてはみるが、適当な答えはみつかっていない。ときに、便意はないというのに座るときもある。なぜか心地いいのだ。
 日本に帰ったという安堵?
 それがないといったら、嘘になるだろう。しかし日本という国は厳しい。イミグレーションでスタンプをもらい、荷物を受けとって外にでると、いろんなことが一気に蘇ってくる。いまの時間だから、電車は混んでいるだろうか。バスは渋滞は何時発だろう。いや、日本円が財布のなかにあるだろうか……。日本人として、普通に振る舞わなくてはいけないプレッシャーに押し潰されそうになる。
 成田空港に吹く風も、ときに生きる自信がなくなるほど冷たい。
 だから成田空港のトイレなのかもしれなかった。日本社会に入る前の休息……。
 そんな気がしないでもない。
 


Posted by 下川裕治 at 12:26│Comments(2)
この記事へのコメント
ホテル山市は、落ち着きますなぁ。
この年になって下川本にはまって、貧乏旅行に目覚めました。
サンキョービジネスホテルは朝食サービスを止めてしまったのですね。
ちんぬくのマスターに、下川さんの本を見せたらハブ酒をご馳走してくれました。次は、タイのマイハウスホテルに挑戦してみたいとおも思います。
Posted by 中年読者 at 2013年02月21日 16:07
何となくわかります。
僕の場合は出国前の関西国際空港です。
家でちゃんと用を足して出たはずなのに、不思議なものです。
Posted by Koji at 2013年02月25日 01:38
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