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ナムジャイブログ

2023年06月12日

紫陽花に「これから長い」と語りかけ

 今日、新型コロナウイルスのワクチンを接種してきた。6回目である。マスクもほとんどつけない生活になりつつある。あれだけ日々の生活を翻弄させたウイルスも、喉元をすぎてしまったわけで、いまさらワクチン……という思いもあった。
 自分から申し込んだわけではない。僕は東京の杉並区に住んでいるが、事前に接種日時を設定した通知がきた。接種したくない人や都合の悪い人は、その予約をキャンセルするという連絡を入れるシステムだった。5回目と同じである。日曜日で、都合が悪いわけではなかった。どうしようか……。迷っているうちに当日になってしまった。
「まあ、無料だしなぁ」
 梅雨の弱い雨が降りつづくなか、レインコートを羽織って出かけた。
 接種会場はウイルスという憑き物がとれてしまったような空気が流れていた。接種を受ける人も、案内係の人も顔つきは穏やかだった。皆、6回目である。職員や医師の質問にも慣れた感じで答えている。はじめて接種したのは、大手町に設置された大規模な会場だった。あのときの緊張感に比べれば、隔世の感がある。
 接種は高齢者が優先されていると思う。杉並区の会場にやってきたのは、皆、60歳以上とおぼしき人たちだった。こういう世界に入ると、自分も高齢者なのだと呟いてしまう。
 3日前、69歳になった。特別な感情はないが、あと1年で古希……といわれると頷くしかない。しかし最初に脳裡に浮かんだのは、
「あと1年でシルバーパスがもらえる」
 ということだった。これを読んでいる人は縁がないかもしれないが、東京都では70歳をすぎると、都バスや都内を走るバスに自由に乗ることができるパスをもらえる。それがシルバーパス。乗り放題になるのだ。年間で2万円ほどは必要だったが、ひと乗り210円だから、毎日のように乗れば、すぐに元はとれる。
 コロナ禍で行動が規制されているとき、よく都バスに乗った。事務所が都バスのバス停に近いこともあったのだが。バスに乗っていると、このシルバーパスを定期券のように見せて乗り込んでくる人をよく見かける。皆、70歳以上の老人だが、かなり若く見える人もいる。あのパスが手に入る……。そんなことを考えた誕生日だった。
「とりあえず、都バスで東京湾の埋立地まで行ってみる?」
 69歳になっても、旅の因子のようなものが頭をもたげてくる。
 僕はある句会に加わっている。5月にも句会があり、そこで僕がつくった句のひとつはこんなものだった。

紫陽花に「これから長い」と語りかけ

 どう考えても駄句だが、紫陽花という花に、自分の人生を重ねてみた。紫陽花は梅雨の花だ。季語にもなっている。雨のなかでさまざまな色をつける姿は、いまだけもてはやされている。しかし紫陽花は長く咲きつづける。猛暑の季節になっても枯れることはない。色は褪せ、醜い姿を晒しながらも咲いている。これからが長いのだ。
 なぜ長いかといえば、紫陽花の花びらに見える部分は、花ではなくガク。だから長く咲くように見えるが、実は花びらではない。
 自分の人生に重ねてみる。
 69歳である。

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Posted by 下川裕治 at 15:20│Comments(0)
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