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ナムジャイブログ

2024年03月04日

豊かな青春 みじめな老後

 3月7日の19時30分から、東京の西荻窪にある「旅の本屋のまど」でトークイベントがある。
http://www.nomad-books.co.jp/event/event.htm
 発売になった「全面改訂版 バックパッカーズ読本」(双葉社)のイベントだ。この本は知人の室橋裕和氏が中心になってつくった本で、僕は手伝った程度なのだが、イベントに出ることになった。
 正直なところ、やや気が重い。テーマがバックパッカーだからだ。僕のプロフィールには、「バックパッカースタイルで旅をつづける旅行作家」と書かれることが多いのだが、いま、バックパッカー風の旅をめざす若者がどれだけいるかという話になると、甚だ心もとない状況がある。そのなかでなにを話したらいいのだろうか。悩みつづけている。
 4月に「シニアになって、ひとり旅」という本が発売になる。そのなかで1960年代から70年代にかけ、大きなザックを背負って北海道を旅したカニ族が日本人初のバックパッカーだったという話に触れている。
 高度経済成長期の話である。サラリーマンはがむしゃらに働いた時代だ。そんな社会への不安や怖れが、団塊の世代の若者たちを北海道に向かわせた。ザックはキスリングと呼ばれる横長のもので、それを背負って駅の改札を通るとき、体を横向きにしてカニ歩きをしなくてはいけないことからカニ族と呼ばれたという。
 僕は団塊の世代よりひとつ下の世代だが、カニ族に似た感覚を日本社会に抱いていた。バブル景気に湧きたつなかで漠然とした不安に苛まれていた。めざすエリアが北海道から海外になっただけだった。
 そう考えると、バックパッカーを生む社会背景は好景気ということになる。そんな社会に背を向けて旅に出る。それがバックパッカーの原点という気もする。だから日本の経済力が衰退したいま、バックパッカーは生まれてこない。そういうことなのだろうか。
 僕はバックパッカー風の旅を活字に落とし込むことを生業にしてきた。しかしいま、バックパッカー旅の「落とし前」のようなものに翻弄されている。
 この原稿をバンコクで書いているが、バングラデシュからの帰り道である。バングラデシュ南部のコックスバザールという街で小学校の運営にかかわっている。日本で寄付を募り、それを先生たちの給料に当てているのだが、経済成長のなかでぐんぐん物価があがるバングラデシュと元気がない日本経済の狭間で苦しんでいる。そもそも学校運営にかかわったきっかけは、親しいバックパッカーがバングラデシュで死んだことが発端だった。
 この話をはじめると長くなってしまう。イベントではその一端を伝えようと思うが、これがバックパッカー旅の後始末だとすると鼻白むものがある。
 かつてバックパッカーの間では知られた戯れ歌があった。
 金の北米 女の南米 耐えてアフリカ 歴史のアジア ないよりましなヨーロッパ 問題外のオセアニア 豊かな青春 みじめな老後
 この歌を思い出してしまった。

■YouTub「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
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■ツイッターは@Shimokawa_Yuji




Posted by 下川裕治 at 11:00│Comments(2)
この記事へのコメント
先週までバングラデッシュに行っていました。今はバンコクです。
もうあのような時代は来ないでしょうね。
私はさらに下の世代ですが、バックパッカーが元気だった時が懐かしいです。
Posted by ノック at 2024年03月09日 14:53
綺麗事ばっかの沢木耕太郎「深夜特急」とかに飽き、最近、浜なつ子さん、内山安雄さんや下川裕二さんの本を読み始めました。「アジアの誘惑」リトルバンコク荒川沖の逸話とかサイコー!

???
YouTubeやTikTokにはバックパッカーの旅動画が沢山。凄い時代になったと思います。ネット雑誌で連載中70才定年バックパッカーの名前忘れたw某さんも毎月世界へ。

私もまだ世界70カ国しか行ってないので、残り130カ国を制覇するぞ!
Posted by 四流作家 栢野克己カヤノカツミ at 2024年09月30日 23:57
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