2024年09月23日
16時間で失効した渡航書
パスポートを紛失してしまった。気づいたのは、日本に帰るために、バンコクのスワンナプーム空港に向かう電車のなかだった。パスポートを出しておこう……とパスポートケースを出したが、その中身がない。慌ててバッグやザックのなかを探した。
ない……。
バンコクは1週間ほどの滞在だった。パスポートを出したシーンを思い起こす。1回だけだった。宿の近くのロータスという量販店にあるAISという携帯電話店に行ったときだった。そこでシムカードを入れた。パスポートが必要だったので、ケースからパスポートだけをはずして持参した。
あのときか……。
とすれば部屋にあるかもしれない。急いで戻った。
いやこんなに冷静に振り返っていたわけではない。これまで海外でパスポートを紛失したことは1回もなかった。気が動転というほどではないが、やはり心は乱れる。
部屋に戻ったが、やはりなかった。再度、バッグやザックのなかを入念に探す。
やはりない……。
飛行機に乗ることはできない。知人に連絡をとった。まず警察で紛失証明をつくり、そして日本大使館へ。そこで帰国用の仮パスポートをつくってもらうという流れだった。
翌朝、大使館に電話を入れた。申請書、紛失証明書、戸籍謄本、帰りの航空券、写真の5点が必要だった。申請書は大使館のフォームに入力して出力。戸籍謄本はとりあえず、日本からPDFやJPEGなどで送ってもらったもののプリントでいいという。
朝、AISのオフィスに出向いた。やはりなかった。その場で妻に電話をかけ、戸籍謄本を写真に撮り、メールで送ってもらうように頼んだ。その足でトンロー警察に向かった。
朝の警察はすいていた。これまでも何回かタイの警察で証明書をつくってきた。いつも盗難届だった。紛失届はそれよりも簡単だった。ものの10分ほどでつくってくれた。それから知人の旅行会社向かい、申請書、日本から届いた戸籍謄本などをプリントし、航空券の予約確認書を受けとって日本大使館に向かった。
着いたのは11時頃だった。面談室に通された。パスポートを紛失した場合はここで面接を受けるらしい。書類はOKだった。
「通常は翌日なんですけど、飛行機が今晩。今日中にできるか訊いてきます」
職員は面談室を出て行った。それから5分ほどがすぎ、「今日の午後1時半から受けとれます」という返事が耳に届いた。
午後2時。ベージュ色の「帰国のための渡航書」と旧パスポート番号が記された書類を受けとった。費用は630バーツだった。パスポートの顔写真ページは同じつくりだった。出入国スタンプを捺す査証欄4ページある。こんなに早く受けとった話は聞いたことがない、と知人からいわれた。
その日の夜のスワンナプーム空港。チェックイン、出国審査は時間がかかった。なにしろ本来のパスポートがないのだ。出国審査はブースの裏のテーブルで受けた。「帰国のための渡航書」、旧パスポート番号が記された書類、航空券、そして紛失証明書。とくに紛失証明書は重要なようだった。
そして日本の空港。最近は自動化ゲートを通過するが、そこは使えない。外国人用ブースのひとつが、こういう日本人向けの審査も受けもっていた。そこで入国スタンプが捺された。
バンコクのなかをバイクタクシーで走りまわり、手にした「帰国のための渡航書」は、16時間がたったこの時点で失効した。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
ない……。
バンコクは1週間ほどの滞在だった。パスポートを出したシーンを思い起こす。1回だけだった。宿の近くのロータスという量販店にあるAISという携帯電話店に行ったときだった。そこでシムカードを入れた。パスポートが必要だったので、ケースからパスポートだけをはずして持参した。
あのときか……。
とすれば部屋にあるかもしれない。急いで戻った。
いやこんなに冷静に振り返っていたわけではない。これまで海外でパスポートを紛失したことは1回もなかった。気が動転というほどではないが、やはり心は乱れる。
部屋に戻ったが、やはりなかった。再度、バッグやザックのなかを入念に探す。
やはりない……。
飛行機に乗ることはできない。知人に連絡をとった。まず警察で紛失証明をつくり、そして日本大使館へ。そこで帰国用の仮パスポートをつくってもらうという流れだった。
翌朝、大使館に電話を入れた。申請書、紛失証明書、戸籍謄本、帰りの航空券、写真の5点が必要だった。申請書は大使館のフォームに入力して出力。戸籍謄本はとりあえず、日本からPDFやJPEGなどで送ってもらったもののプリントでいいという。
朝、AISのオフィスに出向いた。やはりなかった。その場で妻に電話をかけ、戸籍謄本を写真に撮り、メールで送ってもらうように頼んだ。その足でトンロー警察に向かった。
朝の警察はすいていた。これまでも何回かタイの警察で証明書をつくってきた。いつも盗難届だった。紛失届はそれよりも簡単だった。ものの10分ほどでつくってくれた。それから知人の旅行会社向かい、申請書、日本から届いた戸籍謄本などをプリントし、航空券の予約確認書を受けとって日本大使館に向かった。
着いたのは11時頃だった。面談室に通された。パスポートを紛失した場合はここで面接を受けるらしい。書類はOKだった。
「通常は翌日なんですけど、飛行機が今晩。今日中にできるか訊いてきます」
職員は面談室を出て行った。それから5分ほどがすぎ、「今日の午後1時半から受けとれます」という返事が耳に届いた。
午後2時。ベージュ色の「帰国のための渡航書」と旧パスポート番号が記された書類を受けとった。費用は630バーツだった。パスポートの顔写真ページは同じつくりだった。出入国スタンプを捺す査証欄4ページある。こんなに早く受けとった話は聞いたことがない、と知人からいわれた。
その日の夜のスワンナプーム空港。チェックイン、出国審査は時間がかかった。なにしろ本来のパスポートがないのだ。出国審査はブースの裏のテーブルで受けた。「帰国のための渡航書」、旧パスポート番号が記された書類、航空券、そして紛失証明書。とくに紛失証明書は重要なようだった。
そして日本の空港。最近は自動化ゲートを通過するが、そこは使えない。外国人用ブースのひとつが、こういう日本人向けの審査も受けもっていた。そこで入国スタンプが捺された。
バンコクのなかをバイクタクシーで走りまわり、手にした「帰国のための渡航書」は、16時間がたったこの時点で失効した。
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Posted by 下川裕治 at 11:15│Comments(0)
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