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ナムジャイブログ

2022年01月31日

ミャンマー人たちの軍との闘い全記録

 昨日(1月30日)、1冊の電子書籍を発売した。noteからの販売だ。noteのなかでは、マガジンというくくりになっているが、僕のなかでは1冊の本である。
『クーデターから1年。ミャンマー人たちの軍との闘い全記録』
https://note.com/shimokawa_note/m/m9dcecdc89604
 ネットではいくつものタイトルをつけることができる。サブタイトルのような扱いで、
「国民を敵にまわした軍との”闘い”」
 ともつけた。
 2021年2月1日、ミャンマーで軍によるクーデターが起きた。軍は自らを守るために、国民を敵にまわし、弾圧を開始した。それから1年。いまもミャンマーの人々は闘い続けている。自らの尊厳を守るために。犠牲者は1500人に迫っている。
 この状況で、僕になにができるのか、と悩んだ。ミャンマーへの渡航は難しかった。しかし僕にはミャンマーに暮らす何人もの知人がいた。選んだのはユーチューブだった。多くの人に見てもらうならユーチューブといわれていた。現地の様子を動画に撮ってもらい、そこに字幕を入れていく。週1回、「下川裕治のアジアチャンネル」のなかで「ミャンマー速報」として配信がはじまった。
 しかしこの配信はすぐに頓挫する。軍がネットを遮断してしまったのだ。電話すらつながらなくなった。
 この遮断は3日ほどでつながるようになった。するとデモの隊列に銃口を向ける軍の情報が次々に入ってきた。
 しかし僕らは別の不安に駆られていた。軍のチェックはメールに及ぶ。もし、日本に送った動画や原稿が発覚すれば、現地で情報を送ってくれる知人が危険に晒されてしまう。
「ミャンマー速報」をいったん中断した。安全な方法を探した。そしてメールなどのやりとりはやめ、僕が現地の情報を訊いて、原稿にまとめる方法をとることにした。それでいこうとしたとき、動画がないことに気づいてしまった。動画がないユーチューブ? それは写真のない写真集のようなものだった。
 そこで僕がパソコンで原稿にまとめる画面を動画にとることにした。見る人は、ただ文字が打たれていく画面を見るだけだ。ときどき間違えるから、途中で戻ったりする。ミャンマーの映像はない。苦肉の策だった。
 こうして「ミャンマー速報」を続けていった。途中から少しずつ動画も手に入るようになってきた。ミャンマー人たちは、チェックをかいくぐって世界に発信していた。毎週、通信事情を気にしながらの綱渡りの配信だった。
 それを1冊にまとめた。改めて読むと、軍への憤りに心がひりひりする。「軍ではなくて、完全なやくざです」。情報を送ってくれた知人の言葉を思い出す。
 僕にできることは、ミャンマー人の痛みを共有できる材料を提供することだと思っている。1冊の本にまとめたのはそのためだ。
 notoで1000円で販売する。高いという意見もあったが、自らが危険な状況に追い込まれるかもしれないなかで、ほぼ無給で現地の情報を集めてくれたミャンマー在住の日本人、ミャンマー人、そして日本在住のミャンマー人へ、わずかながらでも……と思っている。クーデターによって帰国できなくなったミャンマー人支援にも、1冊あたり100円を使わせてもらう。
「ミャンマー速報」はこれからも続ける。

■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
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Posted by 下川裕治 at 13:20Comments(0)

2022年01月24日

コロナもそろそろ潮どきか

 1月21日に3回目のワクチンを打った。僕は67歳なので高齢者に組み込まれる。区から接種券が届き、予約サイトに入ると、簡単に予約が入ってしまった。
 2回目と同じように、接種から半日ほどでちょっと熱が出て、解熱剤を飲み、簡単に副反応は消えてしまった。すべてが淡々とすぎていく。
 もう3回目なのだ。
 日本はオミクロン株の感染拡大が止まらない。東京は22日から、「まん延防止等重点措置」になった。俗に「まん防」と呼ばれるものだ。これももう何回目だろうか。これまでと同様、営業時間や酒類の販売などの要請に応じた店には協力金が出る。
 今回の東京は、9時まで営業で8時までは酒を出すパターンと。酒は提供せずに8時に閉店するという2パターン。協力金は前者が1日2万5000円から20万円、後者が3万円から20万円である。
 支給額は規模によって違うが、テーブルが10個ほどの知人の店は、最も安いクラスである。要請を無視するか、酒類は提供をどうするか……悩ましいところだ。
 しかしカウンターだけのような小さな店は酒を提供せずに8時に閉めたほうが儲かることが多い。こういう店は要請に従うか、店を閉店してしまうか。閉めていても1日3万円が入るからだ。
 東京都のほうも読んでいるのだろう。規模の小さな店は常連客が多いから、ルールを守るという面では甘くなる。なかには、感染対策をしっかり行っていないところもある気がする。小さな店では密にもなりがちだ。
 規模が大きい店は常連客だけでまわらないから、さまざまな対策で信用してもらうという発想に近づいていく。
 穿った見方をすれば、感染を拡大させそうな店を休業に傾かせるための方法論のようにも見えてくる。「社会を止めない」という大義名分にも触れない方法で。
 どうしてこんなことになってしまったのだろうと思う。最初の緊急事態宣言がでたときは、「お客さんが離れていってしまうのではないか」というった良質な心配があった。しかし何回か給付金を受けとっているうちに、給付金がいくらという話のウエイトが重くなり、客が楽しみ、満足してもらうといった本筋が霧散していきつつある。
 給付金というのは、そう何回もやるものではないのかもしれない。人の心を荒廃させていってしまう。かといって、新型コロナウイルスの感染は拡大しているのだが。
 人々はウイルスに慣れ、やがて、社会を形づくっていた大切なものへの評価が低くなっていく。そろそろ潮どきなのかもしれないといく気がする。

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Posted by 下川裕治 at 12:14Comments(0)

2022年01月17日

新宿区社会福祉協議会がみつからない

 来週あたりからnoteで連載をはじめようかと思っている。コロナ禍で旅に出ることができない旅行作家の旅……。
 面白くなるかどうかはわからないが。
 感染拡大で行動が制限されるなか、高尾山にはよく登った。いやこれからも登ることになるかもしれない。しかし日々の生活のなかで、旅心のようなものを満たしているのはバスである。
 都バスによく乗るようになった。
 新型コロナウイルスの感染がはじまる少し前、事務所の引っ越しがあった。入居していたビルの建て替えが決まり、600メートルほど移動した。しかし東京ではこれだけ移動しただけで最寄り駅が変わってしまう。地下鉄の乗り換えが必要になり、バスを考えた。
 都バスはほとんどの路線で210円の均一運賃である。と、ここで旅の虫が頭をもたげてきてしまう。同じ運賃を払うなら、できるだけ長く乗っていたい……。通勤と考えれば、早く着こうとするのが筋なのだが、バスの車窓を眺めていると、そういう乗車目的が霧散していってしまう。こういう人間だから、旅を続けられるのかもしれないが。
 都バスの路線図や時刻表を眺めながら、事務所のそばのバス停に停まるバスを探していく。そこで3本のバス路線に絞られてきた。バスに乗るのは、新宿西口、小滝橋車庫、練馬車庫前のどれか……。どこも始発バス停である。
 毎日のようにバスに乗っていると、バス停を覚えてしまう。そしていま、都バスの車内での広告アナウンスに悩みはじめている。バスに乗っていると、バス停案内が流れ、それに続いて広告アナウンスが聞こえてくる。短い広告放送があり、その先に場所の説明が続く。
「○○へはこちらが便利です」
「○○前でございます」
「○○入口はこちらです」
そのとき、つい車窓に○○を探してしまうのだが、これがなかなかみつからない。○○前といっても、反対車線の可能性もあるから、そう簡単ではないのだ。クリニックの広告が多く、医院によっては表示が地味なところもある。
 きっかけは小滝橋車庫から発車する路線だった。高田馬場駅の次のバス停が、「新宿区社会福祉協議会前」なのだが、いくら目を凝らしても、「新宿区社会福祉協議会」みつからないのだ。なんだか気もちが悪い。すっきりしない。「○○はこちらが便利です」ではなく、「○○前」といっている以上、バス停の前のはず。しかし何回、車内から眺めてもみつからない。
 ネットで調べれば場所がわかると思うが、なんの用事もない場所だから、わざわざそこまで……という思いがある。しかしバスに乗ると気になる。
「ここで降りて、新宿区社会福祉協議会を探すというのも……」
 バスの旅はなかなか大変なのだ。

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Posted by 下川裕治 at 13:00Comments(0)

2022年01月10日

ウイルスの時間感覚に寄り添う

 このブログは日曜日に書くことが多い。2022年の最初の日曜日は1月2日。1回、休載させてもらった。今回が「明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」である。
 1月2日は、信州の実家から東京に戻るバスのなかにいた。天気はよく、富士山がよく見えた。車内は満席だった。
 その頃から、新型コロナウイルスの新規感染者がじりじりと増えはじめていた。そしてその週に一気に感染者が増えた。オミクロン株になってきたようで、感染力は強く、感染者の増加は10倍以上になった。
 大きな流れのなかでみれば、新型コロナウイルスは、公式通りに弱毒化の道を歩んでいる。オミクロン株が終焉株なるとは思えないが、自然は嘘をつかない。
 しかしウイルスのサイクルと、人が生きる速さはかなり違う。もちろん人の意識のほうが速い。10倍? 100倍? 多くの人が狭いところに暮らしていることが感染を速めた。ウイルスは粛々と自分の道を歩んでいるが、その間に人は感染し、経済が止まり、生活苦にあえぐ人が出てくる。
 誰も大きな声ではいえないが、自然の摂理に従って、多くの人が感染していったほうが終焉が速いのではという思いがある。結局は失敗してしまったが、スウェーデン式の集団免疫理論を本気でとり入れていくのは、ウイルスが弱毒化してきたいまなのでは、という思いもある。しかしその過程で犠牲者が出てしまうため、人はなんとか感染を抑え込まなくてはいけないというルールのなかで生きるしかない。
 ベトナムは感染を防ぐために、厳しい行動制限を続けた。感染者が出た建物やエリアを隔離した。ゼロ・コロナをめざしたわけだ。しかし昨年の10月、ウイズ・コロナに舵を切らざるをえなくなった。厳しい規制を敷いても、感染者の増加を止めることができなかったのだ。
 すべての国のコロナ対策を綿密に分析したわけではないが、いま、ゼロ・コロナを全面に出しているのは中国だけではないかという気がする。多くの国がゼロ・コロナをめざしたが、途中で方向転換を迫られた。
 中国がゼロ・コロナを標榜できるのは、可能にする資金力、国家体制を支配する権威主義、オリンピックなどの要因があるが、もうひとつ、科学というものへのとらえ方がある気がする。社会主義という構造は、ときに科学と表現される。自然の流れに合わせていくのではなく、よりよい生活を科学的に設計していくわけだ。資本主義や民主主義にもその要素はあるが、社会主義のほうがより鮮明に打ち出される。その論理でいけば、人は新型コロナウイルスに勝たなくてはならない。
 ロックダウン下の西安の人々の叫びは、勝たなければいけない試合と決めてしまったことが生んだ痛々しさがある。
 かといって日本を含めた世界の国々がうまくいっているわけではない。
 ウイズコロナとは、ウイルスに対して白旗を揚げることではない。しかしウイルスがもつ時間感覚に、人はもっと寄り添っていかなくてはいけない気がする。

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Posted by 下川裕治 at 11:23Comments(0)