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ナムジャイブログ

2025年01月13日

大雪警報の列車旅

 冬の日本のわかりやすい天候のなかを旅してきた。ルールが変わった「青春18きっぷ」を使ってみるという目的もあったが。
 わかりやすい天気といっても、旅がスムーズに進むというわけではない。わかりやすさにはトラブルも含まれている。
 東京を早朝に発ち、会津若松から只見線に入った。会津坂下駅に列車が停まると、車内放送が流れた。
「この列車は小出行きですが、会津川口から先が豪雪のため、会津川口から引き返す可能性があるという連絡が入りました」
 列車は2両連結のワンマン列車だった。しばらくすると、運転手が現れ、ひとり、ひとりに行き先を訊きはじめた。僕は会津川口の手前にある会津宮下で列車を降りるつもりでいた。そこまでは運行するので問題はなかったが、話はそう簡単ではなかった。
 会津川口から先が運休になった場合、列車は会津若松行きになって戻ってくる。しかしその時刻が読めない。時刻表はないも同然になってしまう。ということは、会津宮下で降りても、駅から離れることができなくなる。会津宮下は無人駅だから訊く人もいない。降りる意味がなくなってしまうのだ。
 反対側には会津若松に戻る列車が停まっていた。その運転手も乗り込んできて、乗客との相談がはじまった。只見線というローカル線だからできる豪雪対応だったが、乗客は判断に迷った。ひょっとしたら小出まで行くかもしれない。しかしそれを決めるのは降る雪の量だった。
 僕も悩んだ。結局、反対側で待っていた会津若松行きに乗り換えた。
 新潟県側に出るつもりでいた。会津若松駅で確認すると、朝は大雪で運休になっていた磐越西線が動いていた。ラッキーだった。長岡まで出ることができた。
 翌朝、日本海岸の直江津に出た。青空が広がっていた。路上や家々の屋根に雪もない。テレビでは新潟県には大雪警報が出ていた。
 冬の新潟ではこういうことがよく起きた。新潟県に接する福島県や長野県の県境付近には猛烈な雪が降っているというのに、海岸線は晴れているということが珍しくない。それが冬の新潟の気候でもあった。
 日本海に沿った街をいくつかめぐった。天候は不安定だった。晴れ間がのぞく穏やかな時間帯もあったが、ときに横殴りの霙が降ったりする。冬型の気圧配置のなかを低気圧が東に進んでいるときの気候だった。
 そこから長野県に抜けるつもりだった。しかし新潟県と長野県をつなぐ鉄道は軒並み運休になっていた。
 JRの運行状況は、ネットで調べる情報と違うことがときどきある。糸魚川まで行ってみたが、松本に抜ける大糸線は運休になっていた。直江津に戻って確認する。信越本線も停まっていた。雪ではなく強風がその原因だった。
 さて、どうしようか。雪が落ち着くまで新潟県側で待機するしかないのだろうか。
 しかしひとつの路線の列車が走っていた。「えちごトキめき鉄道」だった。第三セクターの鉄道会社で、直江津から妙高高原を結ぶ「妙高はねうまライン」という路線がある。
 新潟県と長野県の県境付近が豪雪地帯になる。かなり雪は積もっているだろうが、しかいその鉄道会社は、なに食わぬ顔で列車を走らせていた。
 この列車に乗るしかなかった。列車の車窓風景は、発車して20分ほどで雪景色に変わった。スイッチバックで高度があがっていくとどんどん雪が深くなっていく。50分ほど走ると、積雪は1メートルを超え、終点の妙高高原に着いた。そこからはやはり第三セクターの「しなの鉄道」に接続する。そして10分後には、南の空に青空が広がった。
 雪に翻弄される世界を抜けた。大雪警報の列車旅は、予定調和の旅でもあった。

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Posted by 下川裕治 at 10:14│Comments(0)
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