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ナムジャイブログ

2024年06月17日

ミャンマー人は命を諦めはじめたのか

 僕が運営にかかわるYouTubeで、最近、ミャンマーから届く映像を紹介している。日本にいるミャンマー人のもとには、ミャンマーからさまざまな映像が届く。
「なんとかミャンマーで起きていることを日本人に伝えたい」
 彼らの思いに微力ながら……。そこでスタートしたコーナーである。先週はラカイン州のブティダウンで投降するミャンマー国軍の兵士の動画を紹介している。
https://www.youtube.com/watch?v=TSf39_qK57c
 ブティダウンでは、国軍とラカイン州の軍隊であるAA(アラカン軍)の間で、激しい攻防がつづいた。州都のシットウェとバングラデシュ国境のマウンドーの中間にある街。AAがここから国軍を撤退させると、ラカイン州の西部の大半の土地はAAの支配下になる。
 戦闘は2ヵ月近くつづき、最終的にはAAが勝利した。ブティダウン内にあった国軍の基地から、兵士は投降することになる。投降兵の列は浮浪者の集団のようだった。衣類は汚れ、負傷兵をかばいながら列は進む。
 今週(11日)には、シットウェの近郊の村の動画が公開される。国軍はこの村の人々の大半を拉致した。その後53人を殺害。生き残った人を村に送り返してきた。村は焼かれ、村民は行くところもない。彼らが村の広場に集まってきた動画である。
 来週は国軍の国境警備隊の兵士やその家族の映像。バングラデシュ国境の街、マウンドーの海岸。AAの攻撃を受け、海軍将校、そして国境警備隊が2隻の船に乗って撤退。ところが海軍将校を乗せた船から国境警備隊が乗る船が攻撃を受けて転覆。海岸に辿り着いた国境警備隊やその家族の姿だ。国軍は船がトラブルで転覆したとしているが、「国境警備隊は残ってAAと戦え」という意図があったという分析もある。この一件で4人が死亡している。
 どちらの動画も人々の視線に精気がない。死との境界線上で、ただすることもなく座る人々。ミャンマーの状況は末期的だ。
YouTubeで公開するときは神経を使う。戦闘シーンや残虐な映像や「撃て」とか、「殺せ」といった会話には配慮が必要になる。
 ミャンマーからの映像の大半はフェイスブックで送られてくる。そこには、路上に転がる死体や斬首の動画が当たり前のように送られてくる。
 それらをチェックして公開してきた。戦場の野戦病院、破壊された橋、転覆した船に乗っていた兵士を救出する様子……。
 それは戦争の断片だが、AAなり、国軍の兵士は統率がとれていた。村民の表情や声からも、戦争のなかでも生き抜こうとするエネルギーがあった。
 しかし最近、送られてくる映像からは生きようとするパワーが伝わってこない。命を運命に託し、ただぼんやりと宙を眺める。そんなミャンマー人の表情に変わりつつある。
 末期である。
 ミャンマーの惨状は報道されることが少ない。多くがパレスチナ、そしてウクライナである。ミャンマーでは報道の制限が厳しく、たしかな情報を発信できないという事情があるにせよ、この偏りに、日本にいるミャンマー人は苛立ちを覚えている。
 ガザ地区でイスラエルの攻撃を非難するパレスチナ人の映像を目にする。ガザも悲惨なのだが、抗議するエネルギーをパレスチナ人は失っていない。
 しかしミャンマーはその状況を超えてしまった感すらある。戦闘に巻き込まれたミャンマー人は抗議するエネルギーも消え、死との境界の上で、命を運命と諦めはじめている。末期だと思う。しかし休戦の道筋はまったくない。残忍な戦闘だけが繰り返されている。

■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
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Posted by 下川裕治 at 10:23│Comments(0)
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