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ナムジャイブログ

2025年01月21日

海も見えない江ノ電

 週末、タイ人3人組が東京にやってきた。その案内役ということになった。希望は鎌倉の大仏と箱根。それを聞き、1日でまわれるような気がした。
 朝の9時に彼らが泊まっているホテルで待ち合わせた。まず鎌倉の大仏を見て、江ノ電で藤沢に出、そこから小田原。箱根登山鉄道から箱根登山ケーブルカーと乗り継いで大涌谷まで行くつもりだった。
 朝は晴れていたが、天気予報では午後に雨マークが出ていた。
 箱根といえば富士山の眺めである。「早く大涌谷まで行ったほうがいいかもしれない」
と予定を変え、先に箱根に向かった。
 それほど混んではいなかった。登山鉄道やケーブルカーをさくさくと乗り継いで早雲山まで着いた。しかし最後の大涌谷までのロープーウエイが定期点検でバスの代行輸送になっていた。このバスが渋滞。大涌谷に着いたときは昼をまわってしまった。
 あいにくの曇り空。富士山は見えない。これは早めにくだったほうが……と思ったが、タイ人たちは大涌谷が妙に気に入って、噴煙をバックにポーズをとる。寿命がのびるという黒たまごもはずせない。……そうこうしているうちに2時間がすぎてしまった。
 鎌倉の大仏がある高徳院の拝観時間を見ると、午後4時45分までだった。
「ひょっとしたら大仏は間に合わないかもしれない」
 彼らに伝えると、あっさりと「大丈夫」という声が返ってきた。はじめて見る火山というものに、皆、ちょっと興奮していた。
 急いで向かったが、藤沢に着いたのは午後5時。もう、暗くなりかけている。彼らは現金で切符を買うから時間もかかる。江ノ電に乗ったときはすっかり日も暮れてしまった。海も見えない江ノ電。もちろん鎌倉の大仏の拝観時間も終わっている。
 日の短さを実感した。「申し訳ない」と思いながら、鎌倉に向かう江ノ電に揺られた。
 もし鎌倉と箱根を1日でこなそうと思ったら、朝の7時には東京のホテルを出発しないといけない。しかし1月の東京はかなり寒いのだ。タイ人には少しつらい寒さのように思う。夏ならなんの問題もない。朝早く出ることも大変ではないし、日が長いから江ノ電から海を見ることもできただろう。
 以前、松尾芭蕉の「おくのほそ道」を辿る旅を本にまとめたことがあった。事前にさまざまな芭蕉や「おくのほそ道」に関する本を読んだ。歩く速さにも舌を巻いたが、1日に歩いた距離も長かった。江戸時代だから街灯もない。「今日はペースが遅かったら、夜も歩こう」などといった記述もないし、持ち物を見ても、夜に歩くことは想定していない。当時の東北の道はオオカミもいたようで、治安もいいわけではない。日が暮れる前に宿に着く日程を組んでいる。
 しかし季節は選んでいる。5月中旬に江戸を出発し、9月の末に大垣に着いている。日が長い時期を選んでいた。
 なぜこの時期にしたのか、といった記述はないが、当時、長い旅に出るのは日が長い時期といった常識があったのかもしれない。
 旅の効率といった視点で眺めると、日が長い時期は距離を稼ぐことができる。冬だから箱根と鎌倉は一気にまわれないが、夏なら可能なのだ。しかしそのあたりは旅行業界も織り込みずみで、タイ人がきたのも、航空券が安かったからだ。しかし冬の日本旅は効率が悪い。暗くなってからの観光……冬の日本旅の案内役の課題ということか。

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Posted by 下川裕治 at 11:28│Comments(0)
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