2020年04月27日
テレワークの盲点
先週の日曜日にこのブログを書いた。それから1週間、基本的に家で仕事をしている。これまでもよく、僕は出版社の缶詰部屋にこもって仕事をしていた。その状態と大差はない。
違いがあるといえば、インターネットだろうか。出版社の缶詰部屋は、原則、ネットがつながらない。いまはスマホがあるので、ネットにつながらないというわけではないのだが、缶詰というものは、ある本の原稿に集中して書き進めるわけだから、ネットは不要でもある。かえって集中力を奪ってしまう。僕自身、缶詰になるときは、できるだけネットを切るようにしている。
もうひとつの違いは、他社の仕事ができないということだ。ある1社の缶詰部屋にいるわけだから、他社の仕事はまずい。ときおり、編集者が、「進んでますか」などと顔を出すのは、そのチェックもある。
外出自粛のなか、家にこもって原稿を書いているから、ネットは切ることができても、他社の短い原稿などはこなさなくてはならない。それ以外は、まあ缶詰である。
缶詰が長くなってくると、ある種の不安が芽生えてくる。電車にも乗らず、社会と隔絶して暮らしている。基本的な情報は新聞でわかるが、世間の空気感のようなものがわからない。1週間程度ならいいが、2週間、1ヵ月と長引くと、どこか社会からとり残されたような感覚に陥る。
それは言葉で表現できない感覚だ。社会に出るとなんとなく伝わってくるものといってもいい。
電車に乗る。車内の吊り広告を見る。シートに座っている人の顔。歩道を歩く。向かってくる人の歩き方や服装……。そこから醸し出されるなにか……。会話を交わして得る情報ではない。僕にとっては、皆がサイレントマジョリティである。
それは見られているという視線からも伝わってくる。ふっと見知らぬ人と目が合ったときに感じるものもある。役者やタレントが魅力的な顔や姿になっていくのも、そのためだといわれる。周囲の視線が、タレントを育てていくわけだ。
それは仕事にもよるだろう。僕のように原稿を書く人間は、その言葉にならない情報に敏感になる。書いているものが、人々の感性とずれていないだろうか。長期の缶詰は、そんな不安に苛まれてしまう。
テレワークには、そんな盲点があることを認識したほうがいい。ネットはこちらが意図したものを提供してくれるが、空気はなかなか伝えてくれない。それは旅と同じ原理である。ネットで目にする風景と、実際に目にする風景はやはり違う。
外出自粛とはそんな味気のない環境をつくることだ。新型コロナウイルスを封じ込めるには致し方ない。しかしその生活は、文化を一時的に止めているということを認識したほうがいい。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
違いがあるといえば、インターネットだろうか。出版社の缶詰部屋は、原則、ネットがつながらない。いまはスマホがあるので、ネットにつながらないというわけではないのだが、缶詰というものは、ある本の原稿に集中して書き進めるわけだから、ネットは不要でもある。かえって集中力を奪ってしまう。僕自身、缶詰になるときは、できるだけネットを切るようにしている。
もうひとつの違いは、他社の仕事ができないということだ。ある1社の缶詰部屋にいるわけだから、他社の仕事はまずい。ときおり、編集者が、「進んでますか」などと顔を出すのは、そのチェックもある。
外出自粛のなか、家にこもって原稿を書いているから、ネットは切ることができても、他社の短い原稿などはこなさなくてはならない。それ以外は、まあ缶詰である。
缶詰が長くなってくると、ある種の不安が芽生えてくる。電車にも乗らず、社会と隔絶して暮らしている。基本的な情報は新聞でわかるが、世間の空気感のようなものがわからない。1週間程度ならいいが、2週間、1ヵ月と長引くと、どこか社会からとり残されたような感覚に陥る。
それは言葉で表現できない感覚だ。社会に出るとなんとなく伝わってくるものといってもいい。
電車に乗る。車内の吊り広告を見る。シートに座っている人の顔。歩道を歩く。向かってくる人の歩き方や服装……。そこから醸し出されるなにか……。会話を交わして得る情報ではない。僕にとっては、皆がサイレントマジョリティである。
それは見られているという視線からも伝わってくる。ふっと見知らぬ人と目が合ったときに感じるものもある。役者やタレントが魅力的な顔や姿になっていくのも、そのためだといわれる。周囲の視線が、タレントを育てていくわけだ。
それは仕事にもよるだろう。僕のように原稿を書く人間は、その言葉にならない情報に敏感になる。書いているものが、人々の感性とずれていないだろうか。長期の缶詰は、そんな不安に苛まれてしまう。
テレワークには、そんな盲点があることを認識したほうがいい。ネットはこちらが意図したものを提供してくれるが、空気はなかなか伝えてくれない。それは旅と同じ原理である。ネットで目にする風景と、実際に目にする風景はやはり違う。
外出自粛とはそんな味気のない環境をつくることだ。新型コロナウイルスを封じ込めるには致し方ない。しかしその生活は、文化を一時的に止めているということを認識したほうがいい。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
Posted by 下川裕治 at
16:01
│Comments(0)
2020年04月20日
自宅仕事の極意
日本はテレワークやリモートワークが進みつつある。我が家にはふたりの娘がいるが、ともに自宅で仕事になった。昼間、彼女たちの部屋から、パソコンを通した耳障りな音が漏れてくる。会議や打ち合わせなのだろう。
ふたりとも、体がなまる、気分転換が難しい……などという。僕はずっと昔から、テレワークというか、自宅で原稿を書くことが多いから、そういう面では先輩でもある。
ネットでは海外に滞在しているときの旅を発信することが多いから、ほとんど日本にいないような印象を受ける人もいるかもしれないが、1年の半分以上は日本にいる。その間はほとんど、自宅にこもっている。原稿を書かなければならないからだ。
自宅缶詰がはじめると、まず睡眠時間が減る。原稿は簡単に進まないから、どうしても深夜まで机に向かうことになる。しかしこれでは進まない……と4日目ぐらいに悟る。毎回のことだ。そして規則正しい生活を心がけるようになる。そうしないと2週間、3週間といった長丁場はもたない。
しかしはじめから規則正しい生活に入るのは難しい。いったん苦しみ、諦めて、これしかないというところに追い詰めないとすんなりと移行しない。
規則正しい生活といっても、その時間、さくさくと原稿が進むわけではない。そこは個人差があると思うが、僕は目を覚まし、朝食をとってから2時間、そして夕暮れどきの2時間が稼ぎどきである。
夕方から説明する。その日の午後も机に向かっているのだが、さして進まない。そのうちに日が傾いていく。
「今日の午後はほとんど進んでいない」
と焦りはじめる。こう追い詰められるのが夕方なのだ。
夕食のあとも机に向かう。しかし思うようにはいかない。頭のなかはぐるぐるまわるだけで先に進まないのだ。それでもなんとか頑張る。しかし進まない。そうこうしているうちに午前2時ぐらいになる。これ以上起きていると生活が乱れる。眠くもなる。寝ることになるのだが、そのとき、まとまりのつかない内容をメモのように紙に書いておく。眠っている間に少しは整理される気がして目を閉じるわけだ。
つまり目が覚めてから2時間というのは、前夜、進まない原稿を前に苦しんでいたご褒美のようなものに映る。
規則正しい缶詰生活というのは、一見、だらだらしている時間をいかに耐えるかということのように思う。1日のなかで、その時間と筆が進む時間の組み合わせだと思う。こうしてなんとか1日に400字詰め原稿用紙で10枚以上をなんとか埋める。もちろんその分量に達しない日もある。そして最後には、本当に追い込まれていく。
自宅での仕事の助けにと思ったが、これではなんの参考にもならないか。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
ふたりとも、体がなまる、気分転換が難しい……などという。僕はずっと昔から、テレワークというか、自宅で原稿を書くことが多いから、そういう面では先輩でもある。
ネットでは海外に滞在しているときの旅を発信することが多いから、ほとんど日本にいないような印象を受ける人もいるかもしれないが、1年の半分以上は日本にいる。その間はほとんど、自宅にこもっている。原稿を書かなければならないからだ。
自宅缶詰がはじめると、まず睡眠時間が減る。原稿は簡単に進まないから、どうしても深夜まで机に向かうことになる。しかしこれでは進まない……と4日目ぐらいに悟る。毎回のことだ。そして規則正しい生活を心がけるようになる。そうしないと2週間、3週間といった長丁場はもたない。
しかしはじめから規則正しい生活に入るのは難しい。いったん苦しみ、諦めて、これしかないというところに追い詰めないとすんなりと移行しない。
規則正しい生活といっても、その時間、さくさくと原稿が進むわけではない。そこは個人差があると思うが、僕は目を覚まし、朝食をとってから2時間、そして夕暮れどきの2時間が稼ぎどきである。
夕方から説明する。その日の午後も机に向かっているのだが、さして進まない。そのうちに日が傾いていく。
「今日の午後はほとんど進んでいない」
と焦りはじめる。こう追い詰められるのが夕方なのだ。
夕食のあとも机に向かう。しかし思うようにはいかない。頭のなかはぐるぐるまわるだけで先に進まないのだ。それでもなんとか頑張る。しかし進まない。そうこうしているうちに午前2時ぐらいになる。これ以上起きていると生活が乱れる。眠くもなる。寝ることになるのだが、そのとき、まとまりのつかない内容をメモのように紙に書いておく。眠っている間に少しは整理される気がして目を閉じるわけだ。
つまり目が覚めてから2時間というのは、前夜、進まない原稿を前に苦しんでいたご褒美のようなものに映る。
規則正しい缶詰生活というのは、一見、だらだらしている時間をいかに耐えるかということのように思う。1日のなかで、その時間と筆が進む時間の組み合わせだと思う。こうしてなんとか1日に400字詰め原稿用紙で10枚以上をなんとか埋める。もちろんその分量に達しない日もある。そして最後には、本当に追い込まれていく。
自宅での仕事の助けにと思ったが、これではなんの参考にもならないか。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
Posted by 下川裕治 at
12:38
│Comments(2)
2020年04月13日
コロナダイエットとコロナ進化
周囲からコロナダイエットという言葉が伝わってくる。東京はいま、非常事態宣言が出ている。外出は控えるとなると……思いつくのはダイエット。この1ヵ月間で痩せる目標を定め、というわけだ。
出勤していた人も、テレワークになってきている。最初はちょっとした解放感があったが、しだいに体がなまってくる。通勤というものは、そこそこ運動になっていたことを思い知らされる。
そこで少しジョギングでも……。家の近くを走っていると、何人ものジョギング組とすれ違う。皆、同じ境遇に置かれているんだなぁと呟きながら走る。
東京は居酒屋も夜の8時には店を閉める要請が出ている。酒類の販売は7時まで。知り合いを誘って飲みにいくことも憚られるし、夜の8時まででは……という気分になる。
酒も飲まず、家で食事をするから夜も早く寝る。そしてジョギング。体が強制的にどんどん健康体になっていく。
企業の業績は一気に後退した。テレワークに切り替えることができるのも、仕事が減ってきているからと見る向きもいる。商店の経営者は、10分の1にもなった売りあげに頭を抱える。
新型コロナウイルス禍。いいことはなにもない。しかしそうもいっていられない。その間に、体を整えようか……。
コロナダイエットの裏には、そんな溜め息が渦巻いている。
おそらくこんな心境を、世界の多くの人々が抱えもってしまった気がする。もっとも海外のなかには、外出を厳しく制限しているところもある。そんな人たちの溜め息はもっと深い。
他人ごとではない。3月末に帰国し、すぐに沖縄に行く予定だったのだが、石垣市の市長が、「沖縄には来ないで」という本土への要請。依頼された新聞社と話し、沖縄行きは中止になった。
締め切り原稿を、日々、粛々と進めるしかない。東京にいるときは、原稿に追われ、部屋にこもっていることが多かったから、同じような日々である。
しかしなぜか原稿が進まない。意識が少し変わってきたのだろうか。散歩に出ると、生け垣に咲いた小さな白い花が気になる。生物学者の福岡伸一氏のウイルスの話は面白かった。人間の体は積極的にウイルスをとり込もうとする話だ。ウイルスは高等生物が出現してから現れた。そしてその遺伝子の一部が外に飛び出したものだという。ウイルスはもともと人間の体にあったものなのだ。いったん外に出たものを再び体にとり込むシステムで人間は進化してきたのだという。つまり、新型コロナウイルスの蔓延は、人間の進化のひとつともとらえられる。
新型コロナウイルスは、人間が生きるシステムへの発想を刺激してくれる。
そんなストーリーと原稿の世界との折り合いがつかない。原稿が進まない理由だろうか。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
出勤していた人も、テレワークになってきている。最初はちょっとした解放感があったが、しだいに体がなまってくる。通勤というものは、そこそこ運動になっていたことを思い知らされる。
そこで少しジョギングでも……。家の近くを走っていると、何人ものジョギング組とすれ違う。皆、同じ境遇に置かれているんだなぁと呟きながら走る。
東京は居酒屋も夜の8時には店を閉める要請が出ている。酒類の販売は7時まで。知り合いを誘って飲みにいくことも憚られるし、夜の8時まででは……という気分になる。
酒も飲まず、家で食事をするから夜も早く寝る。そしてジョギング。体が強制的にどんどん健康体になっていく。
企業の業績は一気に後退した。テレワークに切り替えることができるのも、仕事が減ってきているからと見る向きもいる。商店の経営者は、10分の1にもなった売りあげに頭を抱える。
新型コロナウイルス禍。いいことはなにもない。しかしそうもいっていられない。その間に、体を整えようか……。
コロナダイエットの裏には、そんな溜め息が渦巻いている。
おそらくこんな心境を、世界の多くの人々が抱えもってしまった気がする。もっとも海外のなかには、外出を厳しく制限しているところもある。そんな人たちの溜め息はもっと深い。
他人ごとではない。3月末に帰国し、すぐに沖縄に行く予定だったのだが、石垣市の市長が、「沖縄には来ないで」という本土への要請。依頼された新聞社と話し、沖縄行きは中止になった。
締め切り原稿を、日々、粛々と進めるしかない。東京にいるときは、原稿に追われ、部屋にこもっていることが多かったから、同じような日々である。
しかしなぜか原稿が進まない。意識が少し変わってきたのだろうか。散歩に出ると、生け垣に咲いた小さな白い花が気になる。生物学者の福岡伸一氏のウイルスの話は面白かった。人間の体は積極的にウイルスをとり込もうとする話だ。ウイルスは高等生物が出現してから現れた。そしてその遺伝子の一部が外に飛び出したものだという。ウイルスはもともと人間の体にあったものなのだ。いったん外に出たものを再び体にとり込むシステムで人間は進化してきたのだという。つまり、新型コロナウイルスの蔓延は、人間の進化のひとつともとらえられる。
新型コロナウイルスは、人間が生きるシステムへの発想を刺激してくれる。
そんなストーリーと原稿の世界との折り合いがつかない。原稿が進まない理由だろうか。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
Posted by 下川裕治 at
12:38
│Comments(0)
2020年04月06日
封じ込めに傾いた世界のその先
ようやく専門家も口にするようになってきた。新型コロナウイルスの集団免疫の話だ。おそらく都市封鎖やロックダウン、日本での自粛など、封じ込め方策が招く経済の停滞、重く暗い空気がその背景にあるように映る。
集団免疫というのは、そのエリアの60~70%の人がウイルスに感染し、免疫をつくると感染が止まっていくというものだ。ひとりの感染者の周りに何人かの人がいる。そのなかの60~70%の人が免疫をもっていることになる。そうなると、感染は広まらない。ウイルスに寄り添う防止策だ。このブログでもお話ししてきた。
一長一短がある。封じ込め策は、免疫をもたせようとしないわけだから、第二波、第三波の感染拡大が起きやすい。経済の停滞という犠牲を払わなくてはならない。集団免疫は高齢者などの免疫弱者の犠牲が増える可能性がある。新型コロナウイルスは感染力が強いため、集団免疫には向かないという専門家もいる。
中国は封じ込めに走った。混乱していたのかもしれないが、中国の社会構造から考えれば、当然の帰結だった気がする。しかしイギリスやドイツ、オランダなどの国々は集団免疫の方策をとろうとした。しかし、新型コロナウイルスの感染力は強く、一気に感染が広まってしまう。医療体制がひっ迫する危惧のなかで、封じ込めに転じざるをえなかった。
集団免疫作戦は、医療施設とのバランスが難しい。感染者はゆっくり増えていくことが望ましい。そしてワクチンを待つ。ワクチンもまた集団免疫をつくる手段ともとれる。
世界の大勢は封じ込めである。その結果、国境は閉じ、人の行き来は制限されている。グローバル化に進んだ世界は、ウイルスによって梯子をはずされた感がある。人々の表情は暗い。耐えなくてはならない。ウイルスを避けるストレス。仕事がなくなる不安……。
日本は強いロックダウンをとっていない。自粛なのだが、そこには、周囲の動きに敏感な日本人特有の感性がある。週末は繁華街ではシャッターが目立ち、通りを歩く人も少ない。これが日本という国でもある。
世界は封じ込めに傾いてしまったから、もう後の祭りなのだが、集団免疫に本格的にとり組んでいれば、世界はもう少し明るかった気がする。行動制限はそれほど厳しくはないだろう。時間はかかるかもしれないが、収束までの道筋が見通せる。免疫をもった人が60~70%という目標値が設定できる。その前にワクチンが開発されるかもしれないが。感染者が増えていくことに、それほど不安を抱かずにすむ。感染者への差別も薄れていく気がする。社会はもう少し明るくなるように思うのだ。
それは国家の体制にもかかわる。封じ込めは、強い権力体制でなければ成功しないというコンセンサスが定着していくと、これまで欧米や日本が標榜してきた政治体制の足許が危うくなってきてしまう。
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリの論調が話題だという。世界の人々はいま、頼れる明るさを探しはじめている。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
集団免疫というのは、そのエリアの60~70%の人がウイルスに感染し、免疫をつくると感染が止まっていくというものだ。ひとりの感染者の周りに何人かの人がいる。そのなかの60~70%の人が免疫をもっていることになる。そうなると、感染は広まらない。ウイルスに寄り添う防止策だ。このブログでもお話ししてきた。
一長一短がある。封じ込め策は、免疫をもたせようとしないわけだから、第二波、第三波の感染拡大が起きやすい。経済の停滞という犠牲を払わなくてはならない。集団免疫は高齢者などの免疫弱者の犠牲が増える可能性がある。新型コロナウイルスは感染力が強いため、集団免疫には向かないという専門家もいる。
中国は封じ込めに走った。混乱していたのかもしれないが、中国の社会構造から考えれば、当然の帰結だった気がする。しかしイギリスやドイツ、オランダなどの国々は集団免疫の方策をとろうとした。しかし、新型コロナウイルスの感染力は強く、一気に感染が広まってしまう。医療体制がひっ迫する危惧のなかで、封じ込めに転じざるをえなかった。
集団免疫作戦は、医療施設とのバランスが難しい。感染者はゆっくり増えていくことが望ましい。そしてワクチンを待つ。ワクチンもまた集団免疫をつくる手段ともとれる。
世界の大勢は封じ込めである。その結果、国境は閉じ、人の行き来は制限されている。グローバル化に進んだ世界は、ウイルスによって梯子をはずされた感がある。人々の表情は暗い。耐えなくてはならない。ウイルスを避けるストレス。仕事がなくなる不安……。
日本は強いロックダウンをとっていない。自粛なのだが、そこには、周囲の動きに敏感な日本人特有の感性がある。週末は繁華街ではシャッターが目立ち、通りを歩く人も少ない。これが日本という国でもある。
世界は封じ込めに傾いてしまったから、もう後の祭りなのだが、集団免疫に本格的にとり組んでいれば、世界はもう少し明るかった気がする。行動制限はそれほど厳しくはないだろう。時間はかかるかもしれないが、収束までの道筋が見通せる。免疫をもった人が60~70%という目標値が設定できる。その前にワクチンが開発されるかもしれないが。感染者が増えていくことに、それほど不安を抱かずにすむ。感染者への差別も薄れていく気がする。社会はもう少し明るくなるように思うのだ。
それは国家の体制にもかかわる。封じ込めは、強い権力体制でなければ成功しないというコンセンサスが定着していくと、これまで欧米や日本が標榜してきた政治体制の足許が危うくなってきてしまう。
イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリの論調が話題だという。世界の人々はいま、頼れる明るさを探しはじめている。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
Posted by 下川裕治 at
13:31
│Comments(0)