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ナムジャイブログ

2024年06月03日

シルバーパスを手に入れた

 5月31日の夜に帰国した。意図して月末に帰国したわけではないが、頭のなかには、翌日の朝にすることはわかっていた。
 自宅から歩いて2分ほどのところに、関東バスの車庫がある。そこにある事務所に出向いた。
「あのー、シルバーパスをつくりたいんですが」
「はじめてですか?」
「はい」
 僕は6月に誕生日を迎える。うれしいことはなにもないが70歳になる。東京に在住していると、誕生日になる月から東京都シルバーパスをつくることができる。
 東京都シルバーパスというのは、一定の金額を払うと、都内を走るバスや都営地下鉄などが乗り放題になるパスだ。いま風にいえば路線バスのサブスクリプションである。
 都内のバスというのは、都バスだけではない。僕が住んでいるエリアを走っているのは関東バスが多いが、西武バスとか東急バスなど私鉄のバスであっても都内を走っているバスが対象になる。
 料金は一般的な収入がある場合は、年額2万510円である。更新は毎年、9月末日。
 僕は4ヵ月で更新になってしまう。こういう場合ははじめだけ、半額の1万255円になる。
 必要なのは身分証明書だけだった。申込書に書き込み、料金を添えて渡すと、簡単に東京都シルバーパスは発行された。
 6月1日はひとつの境界にも映った。
 シルバーパスを財布に入れ、中野駅に自転車で向かった。自宅からバス1本で仕事場でもある事務所には行けない。中野駅から関東バスの新宿西口駅行きに乗る。宿08という番号が振られたバスだ。小滝橋でおりる。そこが都バスの小滝橋車庫。そこを始発にしているバスが上野公園行きの上69と九段下行きの飯64。どちらも事務所の最寄りのバス停である江戸川橋を通る。
 中野駅前にはすでに新宿駅西口行きのバスが停車していた。
 財布からシルバーパスを抜きとり、運転手に見せる。運転手は軽く頷き、僕は席に座った。緊張した。やることはいたって簡単なのだが、このパス1枚で乗車できてしまうことに慣れていない。その要領で、小滝橋車庫から九段下行きに乗った。
 その日の運賃は関東バスが230円、都バスが210円で片道440円。往復で乗ったとしたら880円になる。毎日、事務所に行くわけではないが、仮に月に20日、この路線で行くとして8800円。1ヵ月と少しで元がとれてしまう。
 勝手な皮算用だが、かなり得をする。シルバーパスに対して、若い人から批判がないわけではない。安すぎるというのだ。日本はいま厳しい高齢化社会を迎えている。東京も同じだ。やがてシルバーパスも条件が変わっていくと思うが、いまのところは使わせてもらう。
 しかしパスには顔写真がついているわけではない。乗車口で提示するだけだ。どこか性善説に支配されたカードにも映る。
 しかし僕のように旅の因子を抱えもってしまったタイプにはバスの世界が広がる。都バスの最長路線である王78、新宿西口から王子駅前までのバスにきっとまもなく乗る。

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Posted by 下川裕治 at 15:49│Comments(0)
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