2023年08月14日
暑さに抗わないという麺?
8月初旬、ソウルにいた。この時期の韓国は日本並みに暑い。気温は35度近くになる。スマホのアラームが何回も鳴った。内容は韓国語でわからない。ソウル在住の日本人に見てもらうと、「気温が高いので注意してください」という内容だった。日本同様、熱中症で緊急搬送される人も多いらしい。
夏の韓国でいつも食べる麺がある。チョゲククス。鶏がらのスープの冷たい麺だ。どこの店にもある麺ではなく、夏場だけしかない限定麺でもある。多くの店がスープを凍らせて器に入れてくれる。
日本でいったら冷やし中華といった所だろうが、僕はチョゲククスのほうが好きだが。
韓国の夏の麺といえば冷麺でしょ……という人は少なくない。韓国の人もそういう。しかし冷麺は、昼に食べると、なにか物足りない。焼肉の後で〆として食べると、その味に唸るが、舌にまつわりついた焼肉の脂が隠し味になっているのかもしれない。調べると、冷麺というのは、もともと冬に食べる麺だという。暑い夏の昼食という想定の麺ではないのだ。
韓国の冷麺、チョゲククス、日本の冷やし中華と考えたとき、ふとタイを思った。タイは1年中暑い。冷たい麺料理があってもいいような気がするが、いまだに出合ってはいない。タイ料理は中国の影響を強く受けているから、食べ物の陰と陽の世界かとも思っているが、タイ人の食生活を見ていると、それほど陰と陽にこだわっているようでもない。しかしいくら暑くても、冷たい麺料理というものが食堂にお目見えしない。
沖縄もそうだ。本土よりかなり暑い。しかし麺といえば沖縄そばで、その冷やし版……となるとあまり聞かない。旅を生業にしているから、食べたことのない料理に出合うと、つい頼んでしまう。那覇空港がいまのように立派になる前、空港の食堂で冷やし沖縄そばに出合った。シークワーサーを使った麺で、酸味がさわやかだった。沖縄で広まっていくような気がしたが、その後、1回も冷やし沖縄そばを目にはしていない。いつの間にか消えていってしまったようだ。
寒い冬と暑い夏があるエリアでは、夏になると冷たい麺を食べる。しかしのべつ暑いエリアには冷たい麺がない……。これはどういうことだろうか。
沖縄で生まれ育った知人がこんなことをいっていた。
「東京のラーメンはおいしいけど、スープが熱すぎる。暑い時期にあれを食べるのは難儀さー」
熱いスープは疲れるというのだ。そう考えてみると、沖縄で食べる沖縄そばのスープはややぬるい。本土からの観光客のなかにはしっくりこない人もいるらしい。
タイのクイッティオという麺もそのスープは、日本のラーメンほど熱くない。ぬるいというほどではないが、熱々ではない。
熱い地方の人はややぬるいスープの麺を好み、冷たい麺は食べない。寒暖差が激しいエリアの人は熱いスープを好み、暑い夏は冷たい麺に食指が動く。
暑い地方の人は、その熱と一体になって生きているということだろうか。暑さに抗うようなことはしない。暑さを体にとり込む。ぬるいスープはその延長線上にある。
日本は猛暑がつづく。皆、暑さに対抗しようとする。地球の温暖化のなかで、そろそろ発想を変える時期なのかもしれない
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
夏の韓国でいつも食べる麺がある。チョゲククス。鶏がらのスープの冷たい麺だ。どこの店にもある麺ではなく、夏場だけしかない限定麺でもある。多くの店がスープを凍らせて器に入れてくれる。
日本でいったら冷やし中華といった所だろうが、僕はチョゲククスのほうが好きだが。
韓国の夏の麺といえば冷麺でしょ……という人は少なくない。韓国の人もそういう。しかし冷麺は、昼に食べると、なにか物足りない。焼肉の後で〆として食べると、その味に唸るが、舌にまつわりついた焼肉の脂が隠し味になっているのかもしれない。調べると、冷麺というのは、もともと冬に食べる麺だという。暑い夏の昼食という想定の麺ではないのだ。
韓国の冷麺、チョゲククス、日本の冷やし中華と考えたとき、ふとタイを思った。タイは1年中暑い。冷たい麺料理があってもいいような気がするが、いまだに出合ってはいない。タイ料理は中国の影響を強く受けているから、食べ物の陰と陽の世界かとも思っているが、タイ人の食生活を見ていると、それほど陰と陽にこだわっているようでもない。しかしいくら暑くても、冷たい麺料理というものが食堂にお目見えしない。
沖縄もそうだ。本土よりかなり暑い。しかし麺といえば沖縄そばで、その冷やし版……となるとあまり聞かない。旅を生業にしているから、食べたことのない料理に出合うと、つい頼んでしまう。那覇空港がいまのように立派になる前、空港の食堂で冷やし沖縄そばに出合った。シークワーサーを使った麺で、酸味がさわやかだった。沖縄で広まっていくような気がしたが、その後、1回も冷やし沖縄そばを目にはしていない。いつの間にか消えていってしまったようだ。
寒い冬と暑い夏があるエリアでは、夏になると冷たい麺を食べる。しかしのべつ暑いエリアには冷たい麺がない……。これはどういうことだろうか。
沖縄で生まれ育った知人がこんなことをいっていた。
「東京のラーメンはおいしいけど、スープが熱すぎる。暑い時期にあれを食べるのは難儀さー」
熱いスープは疲れるというのだ。そう考えてみると、沖縄で食べる沖縄そばのスープはややぬるい。本土からの観光客のなかにはしっくりこない人もいるらしい。
タイのクイッティオという麺もそのスープは、日本のラーメンほど熱くない。ぬるいというほどではないが、熱々ではない。
熱い地方の人はややぬるいスープの麺を好み、冷たい麺は食べない。寒暖差が激しいエリアの人は熱いスープを好み、暑い夏は冷たい麺に食指が動く。
暑い地方の人は、その熱と一体になって生きているということだろうか。暑さに抗うようなことはしない。暑さを体にとり込む。ぬるいスープはその延長線上にある。
日本は猛暑がつづく。皆、暑さに対抗しようとする。地球の温暖化のなかで、そろそろ発想を変える時期なのかもしれない
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
Posted by 下川裕治 at 13:47│Comments(1)
この記事へのコメント
しばらく拝見できていませんでした、
コレも旅行離れの症状だったのか!?
しかし、今はとてもいきたい衝動に駆られることになり、下川さんのを読書を仕出すようになりました。
内地のラーメン屋では、麺を湯がく前から、
どんぶりのみ、湯煎したりお湯を一度張りしばらく仮の保温効果を高めでいくのが、あるのではないでしょうか?真冬と同様に年中、こういう心配りのようなことをしています。
コレも旅行離れの症状だったのか!?
しかし、今はとてもいきたい衝動に駆られることになり、下川さんのを読書を仕出すようになりました。
内地のラーメン屋では、麺を湯がく前から、
どんぶりのみ、湯煎したりお湯を一度張りしばらく仮の保温効果を高めでいくのが、あるのではないでしょうか?真冬と同様に年中、こういう心配りのようなことをしています。
Posted by たかしま at 2023年08月23日 06:14
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