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ナムジャイブログ

2024年01月08日

憧れのメール

 今日は1月7日。三連休の中日である。昨年の暮れから、春に出る本のゲラと格闘している。考えてみればここ10年、いや20年、年末年始は本の原稿を書いたり、ゲラのチェックに没頭したりと、部屋にこもるような日々をずっとつづけている気がする。理由は簡単だ。年末年始の休みが終わる日に、原稿やゲラのチェックの締め切りが設定されることが多いのだ。つまりそれは、担当編集者というか、出版社の事情である。
 1年のうちで長い休みといえば、一般的にはゴールデンウイークとお盆、そして年末年始だろうか。ゴールデンウイークは年によって日程が変わり、お盆は日程をずらす人も多く、統一感がなくなってきている。確実な長い休みとなると年末年始になる。そして僕の年末年始はいつも締め切りというプレッシャーに晒されている。
 昨年末、大学時代の仲間との集まりがあった。マスコミ関係が多く、若いときは土曜や日曜、長い休みなど縁がない日々を送っていた。しかし最近は様子が違うらしい。ひとりがこんなことをいった。
「日曜日に部下にメールを送ったんだよ。そうしたら、『休みの日に仕事のメールを送らないでください』っていうメールが返ってきた。新聞記者が……だよ」
「それ、パワハラですよ。休みの日に連絡をいれるのは」
 その会話を聞きながら、正直なところ、軽くイラついた。それは会社や勤め人の発想だからだ。
 僕は原稿を書いて生きてきた。いってみればフリーランスである。その締め切りは、短いエッセイや本も、休み明けに設定されることが多い。長い休みをのぞけば、月曜締め切りが多くなるのだ。つまり世間の人が休む日曜日に原稿を書く。そんな業界たから、年を通して休みの日というものがなくなってしまった。
 こういう仕事を選んでしまった以上、甘んじて受けなければいけない環境なのかもしれないが、そういう僕の耳に、
「休みの日に仕事のメールを送らないでください」
 という返事は不協和音になって届く。彼らがその休んでいる間に、フリーランスは原稿を書いているのだと……。連絡を送る、送らないといった問題ではない。
 フリーランスといっても、会社社会の枠組みから離れて生きることはできない。しかし会社は勤め人の流儀を声高に語られると、僕は「なんなんだ」と思ってしまう。
 そういう話をすると、会社に勤める人からはこういわれるのかもしれない。
「会社社会の人間関係のストレスはかなりのもんなんですよ。休みを入れないともたないんです。その点、フリーランスは……」
 年明けから愚痴っぽい話になってしまって申し訳ない。そういう原稿を日曜日の夜に書いている僕はなんなのか。
「休みの日に仕事のメールを送らないでください」
 これはフリーランスにとってけっして送れない憧れのメールである。


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Posted by 下川裕治 at 12:46│Comments(0)
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