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ナムジャイブログ

2013年10月14日

トランジットスタンプと金木犀

 13日の日曜日、午前1時発の飛行機でバンコクを発った。北京経由の中国国際航空である。雨季の終わりの、湿った暑い空気をまとった飛行機は、気温13度の北京空港に着陸した。Tシャツ1枚姿の乗客は、タラップを降りながら、その寒さに震えた。
 北京空港は単純な乗り換え、つまりトランジットである。しかし、中国という国は空港から出ない、トランジット客でもパスポートを審査する。イミグレーションのようなブースの前にできた、長い列につかなくてはならない。
 トランジット客にとっては、無駄な審査に映る。世界の多くの空港は、パスポート審査などなしに乗り換えることができるからだ。こういうことをする国は、僕が知っている限りでは、中国とアメリカである。つまりは大国ということなのだろうか。世界の警察、中華思想……。そんな言葉が脳裡をかすめてしまう。
 パスポートの残りページが少なくなってきているから、よけいに無駄に思える。この審査を通ったことを示すスタンプがパスポートに捺される。それもパスポートの後ろのページに。その後には、居丈高なセキュリティーチェックが待っている。街に出れば、それほどではないのだが、空港のなかだけは、中国の嫌な面が浮き立ってしまうのだ。
 東京は穏やかな秋晴れだった。連休の中日でもあった。休日と思うと、少し気が楽になる。電車のなかに漂う、日本という国がもつ息苦しさが和らぐような気がするからだ。平日の早朝に成田空港に着き、混み合う通勤電車に乗ろうものなら、気分はずんずんと落ち込んでいく。この国で生きてきたことがことすら幻ではなかったのだろうか……と思えてくる。
 空席が目につく電車に乗って、東京の秋空を見あげていた。
 金木犀が満開だった。そのにおいに包まれながら、少しずつ、少しずつ、この国の日々を確かめるように思い出していく。たかだか10日ほど、この国を離れたにすぎない。しかしその間に、金木犀は茜色の花をつけ、芳香を放っていた。季節を追いかけるこの国の自然は忙しいが、密やかだ。
 バンコクと東京には、ずっしりと仕事が詰まっている。その間をつなぐ飛行機に乗る。
 その8時間ほどに間に、さまざまなことを考える。これも旅なのだろう。秋空を眺めながら、そんなことを考えていた。

(お知らせ)
朝日新聞のサイト「どらく」連載のクリックディープ旅が移転しました。「アジアの日本人町歩きの旅」。アクセスは以下。
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Posted by 下川裕治 at 12:41│Comments(0)
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