インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2014年02月03日

ハノイのビアホイから漂う賄賂のにおい

【通常のブログはしばらく休載。『裏国境を越えて東南アジア大周遊編』を連載します】
【前号まで】
 裏国境を越えてアジアを大周遊。スタートはバンコク。タイのスリンからカンボジアに入国し、シュムリアップ、プノンペンを経てホーチミンシティ。バンメトートからバスを乗り継いでハノイに到着した。
     ※       ※
 ハノイの街を歩きはじめて、いつも呟きたくなる思いがある。ここはベトナムなのだろうか……と。僕らにとってベトナムのイメージは、ホーチミンシティのそれが刷り込まれているような気がする。ハノイに流れる空気からは中国のにおいがする。
 とくに12月という寒い時期にハノイにやってくると、その感触は一層、強まる。
 天候が中国に似てくる。空は鈍く曇り、太陽の光はぼんやりと街を照らす。そして防寒具がほしくなる寒さ。いちばんはっきりと中国を喚起させるのは、空気のなかに漂っている石炭のにおいだろうか。
 ハノイでは燃料に練炭をよく使う。そのなかに石炭が含まれているらしい。そのにおいが流れ、意識は上海あたりに飛んでいってしまうのだ。冬の中国の街を包むにおいは、石炭である。そのにおいは、僕のなかに刷り込まれている。
 街を歩きながら、一軒のカフェに入ってみた。ホーチミンシティのカフェといったらコーヒーなのだが、ハノイにやってくると、その存在感が薄れる。飲んでいるものを観察してみると、圧倒的にお茶が多い。僕も頼んでみた。急須と猪口のような小さな器がでてきた。お茶を注ぎ、ひと口、啜ってみる。
 それは濃く淹れた緑茶だった。かなり苦味もある。人によっては、それに白湯を混ぜて飲んでいる人もいる。中国は緑茶より、発酵を進めたお茶が優勢だが、ハノイは圧倒的な緑茶文化圏だった。もこもこと防寒具を着込んだおばちゃんを眺めながら、お茶を飲んでいると……やはり中国である。
 昼食を食べようと店の前に並んだ料理を眺めると、揚げた豆腐の料理が多いことに気づく。厚揚げ豆腐の料理は、ハノイを代表するメニューといってもいい。昼食の定番料理にブンダウマムトムがある。これはブンという発酵麺を固めてはさみで切ったもの。それをマムトムというたれにつけて食べる。おかずは揚げたての豆腐と野菜だ。これだけ豆腐に責められると、やはり胃のなかも中国に近づいていってしまうのだ。
 ハノイはビアホイの街でもある。ビアホイというビールは、各ビール会社が売り出している安い生ビールだ。日本でいえば発泡酒に感覚だろうか。
 ビアホイの店は、午後になるとオープンする。男たちは昼間からビールである。そのテーブルを支配する空気も中国に似ていた。共産党や公安、地元を幹部たちのご機嫌をとる場なのだ。テーブルを囲み、ビールを飲みかわす男たちの表情は穏やかだが、その瞳の奥に、したたかな計算が潜んでいる。そのあたりは、しばらく観察しているとわかってきてしまう。
 収賄がらみの話は、どこの社会にもあるものだが、社会主義国では常識化し、ときに露わになる悪弊が昼酒にはついてまわる。
 やはりハノイは中国に似ている。
(以下次号)

(写真やルートはこちら)
この旅の写真やルート地図は、以下をクリック。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html
「裏国境を越えて東南アジア大周遊」を。こちらは2週間に1度の更新です。



Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。