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ナムジャイブログ

2016年07月18日

バックパッカーの知恵

 7月1日にバングラデシュのダッカでテロが起きた。外国人が多く集まるレストランが狙われ、7人の日本人が犠牲になった。皆、JICAのスタッフとして派遣された人たちだった。
 14年ほど前のアフガニスタンを思いだしていた。当時のアフガニスタンの治安もけっしてよくなかった。欧米からの援助組織のスタッフがしばしば襲われた。襲撃するのは、タリバンという、イスラム教徒の原理主義系のグループだった。
 そのなかで旅をした。パキスタン側からジャララバードに入った。翌朝、市内の相乗りタクシー乗り場に向かった。目的地はカブール。当時のアフガニスタンにはバスがなく、タクシーの相乗りが移動手段だった。
 危険を避けるために作戦を練ったわけではなかった。いつものように運転手と運賃を交渉し、客が集まるまで待つスタイルだった。
「それがいちばん安全」
 カブールで会った人たちにいわれた。襲われる援助団体のスタッフは、事前に車をチャーターしていた。運転手が信用できるかどうかもチェックしていた。しかし、この種の情報は洩れることがあった。襲撃グループにしたら、またとない情報だった。
 しかし、僕とカメラマンの行動は気まぐれだった。朝、いったいどの車に乗るのかも、その場で決まるのだから、事前に伝わりようがなかったのだ。
 僕は日本政府や団体から派遣されたわけではなかった。勝手に出向いただけだ。だからいつものように旅を続けた。アフガニスタンを一周し、パキスタンに戻った。僕はアメーバ赤痢を患い、つらい思いをしたが、襲われるようなことはなかった。
 外国人が狙われやすい場所で、どう身を守るか。いちばんの方法は、現地の人たちと一緒に行動することだ。
「現地の人が入る食堂を使い、移動は現地の人たちに紛れることがいちばん安全」
 スタッフを派遣する日本の団体に、こんな提案をしたところで、一蹴されてしまうだろう。安全対策をなにもしていないことと同じなのだ。それでは困るのだ。しかし安全対策をすることで、その情報が洩れ、より危険に晒される面はたしかにある。外国人が集まる店は安全ではない。
 ダッカのテロを機に、危機管理を見直す組織も多いだろう。しかし厳重にすればするほど目立つことも避けられない。
 危険なエリアに派遣される人々に、バックパッカースタイルで任務に就くべき……などといったら嘲笑されることはわかっている。しかし現地の人に紛れるように続ける旅から学ぶこともあるはずだ。治安の悪い国での組織的な安全対策というものの理論矛盾。そこに気づいてほしいのだ。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=ユーラシア大陸最南端から北極圏の最北端駅への列車旅。最終回です。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまはタイ南部をうろうろしてます。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 14:55│Comments(2)
この記事へのコメント
私もイエメンでは「乗り合いタクシー作戦」使いました。2008年秋の話ですが……。
Posted by 浅井潤水 at 2016年07月19日 17:50
最近はあちこちでテロが起きていて、日本もいつ標的になってもおかしくないのかと、臆病な私はただ不安になるばかりです。
危機を回避するための策が逆に危険を招いてしまうというのは残念すぎますが、本当に自分の身を守ろうと思ったらそこまで考えて行動すべきなのでしょうね。
Posted by たぬきまるようこ at 2016年07月22日 17:54
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