2018年07月23日
ゲストハウスブームに終焉
名古屋でゲストハウスを経営している知人と会った。日本は民泊新法が施行され、宿泊施設が一気に減った。多くが認可をとれなかったからだ。彼の宿のようなきちんとした施設は問題ないのだが、どうも沈んでいる。
「宿を人に譲ろうと思いましてね。新法になって急に忙しくなったってこともあるんですけど。なにか疲れちゃって。もう、いいって感じなんです」
彼は元、バックパッカーだった。30歳をすぎ、生きていくために実家を建て直してゲストハウスをはじめた。それが15年前。ひとりが生きていくぐらいの収益はあげてきたのだが……。
きっかけはここ数年、急増したアジアの若者たちだという。彼がつくろうとしたゲストハウスは、バックパッカー時代に海外で泊まったゲストハウスだった。大きなテーブルが置かれた共有スペースには、昼となく夜となく旅行者が集まる。情報交換の場では、ときに飲み会が開かれる。もちろん出会いも生まれる。
ところが最近のアジアからの若者は、共有スペースに現れない。自分のベッドでスマホをいじっているばかりで、ほかの旅行者と接しようとしないのだという。選んだ理由は値段だけというタイプだ。
そこに拍車をかけたのが、日本人の若者だった。仕事やアパートを探す間、ゲストハウスに泊まる日本人は多いのだが、クレームを口にするのが彼らだった。うるさくて眠れな……。ものがなくなった……。その対応にオーナーの彼は疲弊した。
「予約が入るでしょ。外国人だとホッとします。言葉の問題もあるけど、外国人客はクレームが少ないですから」
しかしその外国人の多くは、ただおとなしい。人と接しようとしない。ゲストハウスのすごし方を知らないわけではない。どうして旅先で、人と接しなくてはいけないの? といったオーラが体を包んでいる。
国際交流──。海外から日本にやってくる外国人が増え、しばしば美しい交流の姿が報じられる。しかしその裏というか、内実はどこか寒い風が吹きはじめた世界のようにも思う。民泊という新しい形の宿泊スタイルのピークはすぎたということだろうか。残ったものは、ただ安いという料金だけ……。
バンコクでも同じような話を聞いた。ゲストハウスが増え、競争が激しくなるなかで、オーナーや管理人のモチベーションがさがってきている、と。淘汰の時代に入っているようだ。そのなかでどこに活路を見出すか。最近は宿の食堂を充実させ、宿泊客以外の収益を増やそうとしているところも多いらしい。
民泊やゲストハウスブームは、それほど薄っぺらなものだったのか。オーナーたちは悩みはじめている。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまは中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
「宿を人に譲ろうと思いましてね。新法になって急に忙しくなったってこともあるんですけど。なにか疲れちゃって。もう、いいって感じなんです」
彼は元、バックパッカーだった。30歳をすぎ、生きていくために実家を建て直してゲストハウスをはじめた。それが15年前。ひとりが生きていくぐらいの収益はあげてきたのだが……。
きっかけはここ数年、急増したアジアの若者たちだという。彼がつくろうとしたゲストハウスは、バックパッカー時代に海外で泊まったゲストハウスだった。大きなテーブルが置かれた共有スペースには、昼となく夜となく旅行者が集まる。情報交換の場では、ときに飲み会が開かれる。もちろん出会いも生まれる。
ところが最近のアジアからの若者は、共有スペースに現れない。自分のベッドでスマホをいじっているばかりで、ほかの旅行者と接しようとしないのだという。選んだ理由は値段だけというタイプだ。
そこに拍車をかけたのが、日本人の若者だった。仕事やアパートを探す間、ゲストハウスに泊まる日本人は多いのだが、クレームを口にするのが彼らだった。うるさくて眠れな……。ものがなくなった……。その対応にオーナーの彼は疲弊した。
「予約が入るでしょ。外国人だとホッとします。言葉の問題もあるけど、外国人客はクレームが少ないですから」
しかしその外国人の多くは、ただおとなしい。人と接しようとしない。ゲストハウスのすごし方を知らないわけではない。どうして旅先で、人と接しなくてはいけないの? といったオーラが体を包んでいる。
国際交流──。海外から日本にやってくる外国人が増え、しばしば美しい交流の姿が報じられる。しかしその裏というか、内実はどこか寒い風が吹きはじめた世界のようにも思う。民泊という新しい形の宿泊スタイルのピークはすぎたということだろうか。残ったものは、ただ安いという料金だけ……。
バンコクでも同じような話を聞いた。ゲストハウスが増え、競争が激しくなるなかで、オーナーや管理人のモチベーションがさがってきている、と。淘汰の時代に入っているようだ。そのなかでどこに活路を見出すか。最近は宿の食堂を充実させ、宿泊客以外の収益を増やそうとしているところも多いらしい。
民泊やゲストハウスブームは、それほど薄っぺらなものだったのか。オーナーたちは悩みはじめている。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまは中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(4)
この記事へのコメント
日本人はサービスを受ける事が下手だと思う。「転ばぬ先の杖」の杖を、誰かが持ってきてくれるものだと勘違いしている。
外国人は持参した杖の置き場が無いと文句を言う。
世界中で評判の悪い大陸の旅行者の方が、
まだマシだと思うこと少なく無い。
日本人は、旅人としてまだまだ未成年だと感じる。甘やかして育てられた結果か?
外国人は持参した杖の置き場が無いと文句を言う。
世界中で評判の悪い大陸の旅行者の方が、
まだマシだと思うこと少なく無い。
日本人は、旅人としてまだまだ未成年だと感じる。甘やかして育てられた結果か?
Posted by hinai at 2018年07月23日 18:55
先日の西荻窪のイベントに参加した者です。3度目でしたが、今回も楽しめました。
サインをして頂いた「歩くバンコク」を持って、沖縄に続きタイに一人旅いってきまーす。
サインをして頂いた「歩くバンコク」を持って、沖縄に続きタイに一人旅いってきまーす。
Posted by maru at 2018年07月26日 20:25
スマホ世代にとって、コミュニケーションから情報を得る習慣が余り無いのでしょうか。
そう言う僕も今、スマホでこのコメントを入力しています。
沖縄のとあるゲストハウスではコミュニケーションが盛んでした。
理由は若いスタッフ達が率先して話しかけてくれるから自然と会話が生まれます。
そうこうしているうちに自然と客同士でも話が盛り上がってしまうのです。
そこまでしないとコミュニケーションが始まらないのかも知れませんね。
そう言う僕も今、スマホでこのコメントを入力しています。
沖縄のとあるゲストハウスではコミュニケーションが盛んでした。
理由は若いスタッフ達が率先して話しかけてくれるから自然と会話が生まれます。
そうこうしているうちに自然と客同士でも話が盛り上がってしまうのです。
そこまでしないとコミュニケーションが始まらないのかも知れませんね。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2018年07月30日 18:22
同感です。
本当にココロある一部の人しか
継続してマネイジメント出来ないでしょう。
儲かること、利益だけを考えて
ゲストハウスを始めたのでしたら
行き詰まります。
人との繋がりや、役立ちたいという
ココロが一番の魅力で、また来たいと
思わせるんでしょう。
ビジネスでない、非日常の世界を
求めて行くわけだから! 旅の醍醐味ですね〜
ココロある経営者がいるゲストハウス。
日本にも、何件も有ります。
もちろん世界にも。
本当にココロある一部の人しか
継続してマネイジメント出来ないでしょう。
儲かること、利益だけを考えて
ゲストハウスを始めたのでしたら
行き詰まります。
人との繋がりや、役立ちたいという
ココロが一番の魅力で、また来たいと
思わせるんでしょう。
ビジネスでない、非日常の世界を
求めて行くわけだから! 旅の醍醐味ですね〜
ココロある経営者がいるゲストハウス。
日本にも、何件も有ります。
もちろん世界にも。
Posted by さよさわ at 2018年08月03日 14:16
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