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ナムジャイブログ

2019年10月14日

月明かりの怖さ

 台風19号が東京を襲った。静岡の南の海にその中心があったとき、気圧は915ヘクトパスカルだった。
「これは強いな」
 と思った。僕の台風判断は沖縄流である。いや宮古島流といったらいいだろうか。
 僕は沖縄の宮古島でずいぶん、台風に鍛えられた。彼らの判断基準は、930ヘクトパスカルだった。これを下まわると強い台風、上まわると並みの台風ということになった。
 気象庁がどんな判断基準をつくっても、彼らは動じなかった。経験則といえばそれまでだが、彼らの予測はみごとに当たった。
 最近の日本は、大じかけの台風対策が発表される。電車は前日に計画運休を公表する。コンビニチェーンは、本部の指示が行き渡って休業。そういう空気のなかでは休業が当然のことになり、ほとんどの店がシャッターをおろした。
 災害を防ぐという観点からみれば当然のことなのかもしれないが、一斉にシャッター通りになっていく様に悩んでしまった。
 まだ台風が襲来する前、妻に頼まれて近くのスーパーに出かけた。すごい混雑だった。皆、数日分の食料を買いだめするかのような勢いだった。
「台風って半日ぐらいで通りすぎるんだけどなぁ」
 レジにできた長い列に並びながら呟いてしまう。こういう反応は不謹慎なのかもしれない。災害に見舞われたとき、苦労するタイプなのだろう。しかし目の色を変えて、カップ麺を買い漁る姿を見ると、やはり悩んでしまうのだ。
 夜、東京は大荒れになった。上陸したときは、945ヘクトパスカルまで弱まっていたと思うが、雨と風は、最近、あまり経験しない強さだった。
 しかし夜の11時になると、突然、風雨が止まった。弱まったのではない。台風一過のような静寂が訪れた。30分ほど待った。風雨はもうやってこなかった。不思議な台風だと思った。夜の街を歩いてみた。道は掃き清められたかのようだった。見あげると、満月に近い月がくっきりと浮かんでいた。月の光は静謐だった。家から歩いて5分ほどのところにある妙正寺川を眺める。水位は低く、流れる水が月あかりを反射していた。
 この頃、日本各地で増水した川が氾濫していた。
 怖いと思った。人々は台風に備え、食料を買い込み、家に引きこもっている。店はシャッターを固く閉じ、街に人はいない。そのなかで川の水が住宅街に流れ込んでいく。
 災害の予防とはこういう状態をつくりだすことなのだろうか。
 月明かりのなかで、また悩んでしまうのだった。

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Posted by 下川裕治 at 16:03│Comments(1)
この記事へのコメント
わたしも妙しょう寺川見に行きました。誰もいなくて不思議なかんじでした。
Posted by にし at 2019年10月18日 12:53
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