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ナムジャイブログ

2023年02月06日

ネット社会が利用される?

 タイで話題になっている台湾人の女優の告発は、タイ社会というか、袖の下というものへの反応を含めて考えさせられる。
 2月1日、台湾人女優、シャーリーン・アンさんらが乗るタクシーが、警官の検問を受けた。そこで電子タバコ3本をもっていたことが発覚。パスポートももっていなかった。警官から留置所2泊といわれ、2万7000バーツ、約10万8000円を払った。その後、シャーリーン・アンさんは、この件を、「もう2度とタイに行かない」という一文を添えてSNSで告発した。
 僕はいま、バンコクでこの原稿を書いている。台湾人女優の告発をどう考える? 何人かのタイ人の知人が電話をかけてくる。ひとりはこういった。
「政治に利用されてるってことだよ。この話題を操っているのはチュウィットだろ。次の選挙がらみだよ」
 チュウィットは元下院議員。タイの裏社会を知る人物ともいわれ、中国に絡んだ汚職の告発など、なにかと話題を振りまいている。
 この告発に対して、タイの警察は思わぬ反応に出た。シャリーン・アンさんが払った金額は警官が強要したものとし、かかわった警官6人を収賄としたのだ。
 この警察の対応に、60歳になったタイ人の知人は首を傾げる。タイには電子タバコを禁ずる法律があり、懲役10年か罰金50万バーツ、約200万円と決められている。
「警官はちゃんと捕まえることもできた。ただそうすると、裁判など大変だから、その場で処理する。これはタイではよくあること。たしかに賄賂だが、賄賂は社会の潤滑油みたいな役割もある。いまの若い人は、そういう社会のからくりのようなものがわからずに、インターネットで拡散させてしまう」
 たしかにタイではそういう面がある。そこには法律の整備、警察官の給与やモラルといった問題もあるが、賄賂でことが穏便に終わることは少なくない。
 シャリーン・アンさんは台湾人。検問を受けたなかにはシンガポール人もいた。アジア人だから、そのあたりは理解していたと思うが、タイ警察への不快感はそれを超えていたということか。
 シャリーン・アンさんの告発に最も反応したのは、タイのネットユーザーたちだった。タイの警察は叩けばいくらでも埃が出る存在だから、同調しやすい。匿名性のなかで反応していけば自分に火の粉はかからない。タイ人たちの不満やストレスを集めて、この一件はバズっていく。この構造はどこか、日本の自粛警察を思い出してしまう。その状況を、タイの政治家が巧みに利用したという構図も見えてくる。
「タイの警察も、この一件を利用しようとしてると思うな。タイの警察は、こういう案件にもしっかり反応するっていう印象への演出っていうのかな。ポストコロナでなんとか観光客を戻したいタイ政府の指示があるのかもしれないね」
 そう読むタイ人もいる。
 広がるネット社会が利用される……。バンコクの路上で悩んでしまう。

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Posted by 下川裕治 at 12:07│Comments(0)
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