インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2011年11月07日

成金資本家に見初められた新疆料理店

 上海に滞在すると、必ずといっていいほど訪ねる新疆料理屋がある。中国の西域、新疆ウイグル自治区を中心に住むイスラム系料理の店である。そこで飲むことができる新疆の黒ビールが好きなのだ。
 このビールは新疆ウイグル自治区のウルムチなどでは飲むことができない。なぜか上海だけで流通しているビールである。
 とくに黒ビールが好きというわけではないのだが、この黒ビールはさっぱりとした味わいで、飲みやすい。日本の黒ビールは、苦味や甘味が強く、どこか重い。それに比べると、新疆黒ビールは、古いいい方でいうと、ライト感覚なのである。
 このビールにケバブが合う。新疆のケバブは、羊肉が小さく、香辛料をふりかけてある。その味に黒ビールが合うのだ。
 この料理店はかつて、富民路にあるこ汚い小さな店だった。天井も低かった。ところがある日、唐突に静安寺近くに移転してしまった。新しい店を、僕は戸惑いがちに見上げることになる。地上3階建ての立派なビルになっていた。
 1階と2階が店舗で、調理場とトイレが3階にあるという妙な構造だったが、建物は見上げるばかりに立派だった。
 以前の店はそれなりに流行っていた。しかし3階建てのビルをど~んと建てるほど儲かっているとはとても思えなかった。
 その謎がやっと解けた。
 2日ほど前、上海にいた。日本人が多い一帯で打ち合わせがあり、その後、近くで食事ということになった。
「近くにファミレスのような新疆料理屋がありますけど」
 案内されて入った店も立派だった。
「少し前まで近くにあった小さな店だったんです。それが突然、こんなに立派になってしまって。投資家に目をつけられたようなんですよ」
「投資家?」
「上海では流行っている店をみつけて、資金を出すから移転して、新しい店をつくらないかってもちかける成金資本家がいるんです。そういう人に見初められると、店が一気に立派になるんです」
 そういうことだったのだ。
 日本では小さな店が、突然、大きな店舗に変身していくことは稀である。小さな店は、客を大切にしながら、それなりの商売をしていくところが多い。大きな店は、だいたいがチェーン店である。日本は資本が個人ではなく会社に集まっているからだろう。
 そこが中国だった。街なかに新しい店が次々にできていくが、その資本は中国の高度成長の波に乗った個人のものなのだ。なんでも儲けに結びつけようとする中国式発想と好景気が重なると、こういうことが起きる。
 店の味? あまり変わらない気がする。しかし料金は確実に高くなった。店ではそういう金の流れとは無縁そうなウイグル人の男が毎日、ケバブを焼いている。



Posted by 下川裕治 at 12:58│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。