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ナムジャイブログ

2012年05月21日

39度が示唆するもの

 寒気を感じたのは、タイのナコンラーチャシーマーの宿に泊まった朝だった。
 その日は、ノンカーイ行きの鈍行に乗ることになっていた。「なんとかなるだろう」と列車に揺られたが、体調は思わしくない。風邪の熱が体を漂っている。
 この時期のタイは暑い。とくに東北タイは、日中、気温がぐんぐん上がる。鈍行列車には、もちろん冷房などないから、そう、たぶん車内の気温は40度を超えていたのかもしれない。窓から吹き込む風で、なんとかしのぐ状態だった。
 気が遠くなるような感覚に襲われた。体は熱っぽいが、その体温より車内のほうが暑い。なんといったらいいのだろうか。暑さのなかに熱がある、としかいえない感覚……。
 忙しい旅を続けていた。
 6日前の夕方、日本を発った。暑いバンコクに2泊した。その翌朝の早い便で台北に向かった。梅雨に入った台北は重い雨が降り続いていた。1泊して用事をしませ、香港へ。重い雲に覆われた街は肌寒いほどだった。
 香港に1泊してバンコクに。そこに1泊してから、ナコンラーチャシーマー行きの鈍行列車に乗った。
「ちょっと日程に無理があったかなぁ」
 濃い緑が目に痛い東北タイの風景を眺めながら、ぼんやりと考えていた。僕は来月の初旬に58歳になる。無意識のうちに、基礎体力がなくなってきているのかもしれない。
 今回、台北での用事が終わったとき、どっと疲れが出た記憶がある。あのとき、風邪をひいたのだろうか。
 以前、ロングステイビザをとってバンコクに滞在している旅好きの老人がこんな話をしてくれた。彼はバンコクを基点に、中国やネパールによくでかけていた。
「年をとるとね、やはり思うようにいかなくなるんですよ。だから私は、現地では最低2泊の日程は守っています。体調を壊しても、なかの1日で休むことができる日程ね」
 そんなことはわかっている……と舌打ちしていた。若くて資金もなく、臆病な旅行者だった頃、僕もそういう日程を組んでいた。現地には明るいうちに到着する飛行機やバスを選んでいた。
 そんな旅行者が、ずいぶん生意気な旅をするようになった。アジアに限られたことだが、バンコク、台北、香港、ソウル、上海といった街は年に数回訪れる。空港からのアクセスも慣れている。泊まる宿もだいたい決まっている。
 しかし体力が落ちてきたとき、それは過信に変わるのだろう。
 東南アジアの気候は、ときに厳しい。我が物顔で旅を続けると、牙を向ける。
 ノンカーイからラオスに入り、バンコクに戻った。知人から体温計を借りた。
 39度という表示は示唆でもあった。
 その夜、熱にうなされながら、ひとつの転機を感じとっていた。



Posted by 下川裕治 at 12:23│Comments(1)
この記事へのコメント
転機の訪れ、、、以後?
Posted by こころ at 2012年05月22日 21:49
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